現時点でアップデートされているのはWindows版のみだが、Arm版Windows11にもネイティブ対応した。日本語変換に懸念があったARM版ユーザーには朗報だろう。
ATOKのプレミアム版では、1つのライセンスでWindows、macOS、iOS、Androidの4つのOSをサポートするが、今回のWindows以外のOSのアップデートは6月以降の対応となる。現時点で予定されているアップデートとしては、同期ツールが新しくなることがアナウンスされている。
これまでスマートフォン用OSに対しては、WindowsやmacOSで行った変換辞書や確定履歴が同期できなかったが、今後はこれが可能になる。人名などはせっかくPCで確定したのにスマホになったとたんまた選び直しになっていたが、今後はこうしたOSをまたぐ苦労がなくなるのは朗報である。
他の日本語入力システムと比べてATOKの強みは、メジャーな4OSを1ライセンスでサポートするというところであり、スマホとPCを行ったり来たりしながら、あるいはWindowsとMac両方で仕事するタイプの人には喜ばれている。それゆえに、今後はプレミアム版のみに開発リソースを集中させるということだろう。
またATOKのアプローチとして、変換効率を上げるという意味において、入力の手数を減らすという方向性にある。例えば筆者のような文章を書く上では、英語日本語の混在が頻出する。
以前であれば、キーボードショートカットで逐一日本語入力システムを切り、英語入力に切り替えて入力する必要があった。だが昨今は、日本語入力システム上で英語入力を処理するという流れになっている。
他の日本語入力では、こうした入力を「日本語の読みを英単語登録する」ことで解決しようという方向性にある。これは英単語の綴りを知っている人間からすると、英単語から日本語の読みを連想して入力し、選択肢の中から正しい英語の綴りを確認して選択するという、日英の行ってこいが連発することになり、効率が悪い。例えばWindowsと入力したい場合は、いったん「うぃんどうず」と日本語読みを入力したのち、正しい「Windows」の綴りを探して確定するわけだ。
一方ATOKは、最初の文字をShift押しで入力するとそれ以降は英単語として入力されるという機能がある。Windowsと入力したければ、最初のWをShift押しで入力すればいい。日本語の中に英単語を入れる場合、大抵は先頭が大文字であるという特性を利用したものだ。必要な単語が入力された時点で確定してしまえば、また日本語入力に戻るので、そこから先は助詞からの細切れ入力となる。だがそうした細切れ変換に強いのも、ATOKの特徴である。
加えて、予測変換の強さも特徴的である。特に意識的に学習させなくても、「よろ」と入力した時点で「よろしくお願いいたします。」が候補に上がってくる。それで良ければTabキーで選択するかShift+Enterを押して確定するだけだ。つまりATOKを使うと、文章を全部自力で最後まで打ち切る必要がなくなる。
こうした入力の省力化という方向性は、今回のアップデートで始まったことではないが、未だ他の入力システムには見られない特徴である。
一方でMacユーザーからすると、現時点でのATOKには旧式に感じられる弱点がある。macOS標準の日本語入力で採用された、「ライブ変換」に対応しないことだ。
ライブ変換とは、入力中のインライン内で「変換キー」の押下なしにどんどん漢字変換していく機能だ。短文の細切れ入力では変換精度は上がらないが、長文を一気に入力することで前後の文字列から正しい変換を選び直すので、最終的には正しい日本語になっている。
この変換方式は、ATOKをはじめ「Google日本語入力」でも実装されなかったので、長年OS標準システムでしかできないものだと思われていた。だがazooKey on macOSが実装したことで、サードパーティーの変換システムでも可能であることが示された。
Windowsにはライブ変換に対応する日本語入力システムは存在しないので、その利便性はあまり世間には伝わっていないが、入力キー数を減らすという方向性からすれば、ATOKが対応してもおかしくない機能である。先行してアップデートされたWindows版Ver.36で実装されなかったのは、OS側がライブ変換を受け入れる構造になっていないということかもしれない。
だがMac版ではすでにazooKey on macOSという先行例があるので、実装することは可能なはずである。もし6月のアップデートでも実装されていないというのであれば、「変換体験をWindowsと合わせた」という理屈も通るが、Macユーザーの落胆は大きいだろう。
ATOKはスタンダードプランの廃止という事実上の値上げによって、ユーザー離れが進んだものと見られる。昨今はAIを活用しながら無料で利用できるazooKey on macOSやCopilot Keyboardが登場したことで、スタンダードプランを契約していたライトユーザーは、ATOKを使い続ける意義が見いだせなくなったということだろう。
筆者も久しぶりにATOKで原稿を書いてみたが、相変わらず日本語英語混在の文章は書きやすい。また多少打ち間違えても正しく補正して変換できるので、打ち直しが少ない。
一方で新機能であるATOK MiRAは、それほど使い道がないように感じた。モノカキが本業の人間からすれば、用途に応じて適切に文言を書き分けるのは苦ではないので、AIに考えてもらうまでもない。また英訳などは他にもいいサービスがある。
個人的には、ATOK MiRAの一度に300文字という制限が足かせになるように感じた。5000〜6000字ぐらいの文章を食わせて見出しをつけたり、いっぺんに校正できたりといった機能の方がありがたい。
ATOKは4大OSに同じ日本語環境を提供するという意味では貴重な存在だが、ここ数年のアップデート状況を見ていると、進化の袋小路に捕まっているという印象は拭えない。
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