現代の日本語文章において、すべて手書きで行っている人は今となっては少数派だろう。ほとんどの人は何らかの日本語入力システムを使い、日本語を紡いでいる。日本語入力システムは日本で発売されるOSには標準で搭載されているところだが、皆さんはその変換効率に満足しているだろうか。
2024年5月に、『そろそろ「日本語入力」にもAIパワーを注入してみないか?』という記事を書いた。その中で、現在のAIの進化スピードの割には、日本語入力システムにおいてAIが十分に活用されていないのではないかと問題提起した。
そんな中、AI技術を全面的に活用した日本語入力システムが開発されている。今回紹介するのは、ニューラルかな漢字変換エンジンを搭載したオープンソースの日本語入力システム、「azooKey on macOS」である。
実はこれを知ったのは上記の記事を書いた頃だったが、当時のα版では動作速度が遅く、学習機能もなかったため、紹介を見送っていた。だがその後、昨年6月に独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の「未踏IT人材発掘・育成事業」の2024年度のプロジェクトに採択され、開発が加速した。
開発しているのは、iOS/iPadOS向け日本語入力キーボードアプリを開発している三輪敬太氏を中心とした有志たちだ。動作の高速化についての技術には新規性が高く、三輪氏は日本の自然言語処理研究者の集まる「言語処理学会」にて、若手奨励賞を受賞している。
特徴は、ローカルで動く学習済みAIが、入力されている直前の文章の文脈を読み取って予測変換していくというアプローチをとっていることである。このため、入力内容がクラウドに勝手に上げられてしまうといったことがない。
執筆時点での最新バージョンは「v0.1.0-alpha.19」で、変換精度もかなり向上し、すでに実用レベルにあると判断して現在はこれを使って執筆している。azooKey on macOSとはどんなシステムなのか、改めて紹介したい。
azooKey on macOS自体はインストーラーがついているので、上記のGitHubのリンクからpkgファイルをダウンロードしてダブルクリックすれば、インストールは可能だ。
インストールしたのち一旦ログアウトしてログインすると、日本語変換エンジンの候補に「小豆」のマークが出てくる。これがazookeyである。設定項目に「Zenzai」や「ライブ変換」といった項目が見えるが、これは詳細設定項目のショートカットなので、まずは詳細設定を見ていく。
設定項目についてはヘルプを参照するしかないのだが、「Zenzai」というのがニューラル言語モデルを使ったかな漢字変換システムで、MacのGPUを使って高度な推測を行う。ローカルで動作するので、ネットワークに繋がっていなくても動作できる。
「変換プロフィール」はまだ実験的な機能で、職業や趣味などを入力しておくと、それに合わせた変換が自動で推奨されるという。
「推論上限」はAIの推論レベルを決めているようだが、あまり大きくすると変換が遅くなるといったデメリットがあるようだ。現在はいろいろな数値を入れて変化があるか、試しているところである。
「ライブ変換」はmacOS純正変換エンジンでも採用されている機能で、入力している端からどんどん自動変換していく機能である。変換が正しければEnterキーを押すだけなので、わざわざ変換キーを押して逐次変換する必要がない。
「ユーザー辞書を編集する」のボタンから、単語登録ができる。頻繁に使用する固有名詞を入力しておくと、変換候補の2番目ぐらいに出てくる。
「OpenAI APIキーの利用」のところにチェックをつけ、azooKey用に設定したAIのキーを入力すると、ctrl+sでAPIを呼び出し、「いい感じ変換」という機能を呼び出すことができる。これはあとで紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR