1月16日に、AIなどのデジタル技術を政治に活用する実験プロジェクト「デジタル民主主義2030」を発表した東京都のAIアドバイザー・安野貴博(たかひろ)氏。政治資金の流れを透明化するダッシュボードや、政党・自治体が無料でオープンソースのシステムを活用して実証実験を始められる枠組みの立ち上げなどを掲げる同プロジェクトには、国民民主党の玉木雄一郎代表や日本維新の会吉村洋文代表なども関心を寄せており、早くも世間の注目を浴びている。
2024年の東京都知事選におけるAI活用や、都のアドバイザーとして同年11月に発表したAIによる意見の集約・分析手法「ブロードリスニング」をはじめ、テクノロジーをフル活用した政治への取り組みが目立つ安野氏。一見ばらばらにも見えるそれぞれの施策だが、そこには「われわれの抱えているさまざまな問題を解決するにはテクノロジーに賭けていくしかない」という共通した危機感があるという。
ITmedia AI+はデジタル民主主義2030の発表直後である1月17日に、安野氏へのインタビューを実施。取材からは、一連の施策をつなぐ線と、そこから浮かび上がるデジタル民主主義2030の真価がうかがい知れた。
なお、ブロードリスニングやデジタル民主主義2030の詳細については、過去にITmedia AI+や関連媒体「ITmedia NEWS」で取り上げているため、こちらも参照のこと。
――2023年7月の東京都知事選で15万票超を獲得し、30代の立候補者としては過去最多票を記録しました。また現在は東京都の行政DXを推進する団体・GovTech東京のアドバイザーとして行政のデジタル化にも携わっていますが、政治への関心はいつごろから持っていたのでしょうか
安野氏:実は自分が出馬するとはあまり思っていませんでしたが、システムという観点からの興味は昔からずっとありました。ソフトウェアも、会社や産業、ビジネスも、そして社会全体としての政治も、全て1つのシステムとして捉えていました。
例えば大学生時代には、国会の議事録データを読み込んで解析するソフトを作ったりしていました。振り返ってみると、そういった形で政治システムへの関心は一貫してあったのだと思います。
――出馬のきっかけは
安野氏:東京15区(江東区)の補選があった2024年4月に、妻と散歩をしていた時のことです。選挙や政治って、AIが出てくる前と後で、ネットが出てくる前と後で、かなりラディカルなゲームチェンジがあるはずなのに、そういった気配もないし、なぜできないんだろうねと話していたら「あなたが出なさいよ」と妻から言われました。なんだこれはと思ったのですが、一晩たって考えたらまさにそうだなと。冷静になるとそれしかないなと。
ちょうど「松岡まどか」(小説「松岡まどか、起業します AIスタートアップ戦記」)を書き終わったタイミングで、これからどうするかを考えていたところでした。
――GovTech東京アドバイザーとして携わっている「シン東京2050」と、今回発表されたデジタル民主主義2030の違いについてお聞かせください
安野氏:シン東京2050は未来の東京に向かってどう進めていくかという話なのですが、私はビジョンの中身の策定には携わっていません。その中でどういうふうに都民の声を取り入れていくべきかという、取り入れるパートに関するアドバイザーの役割です。
とはいえ、都知事選のときにしっかりと東京都をこうしていった方がいいんじゃないかということ自体はいろいろ自分なりの考えはありました。ざっくりと一言で言うと、テクノロジーで誰も取り残さない東京を作るという話をさせていただいていました。これは、結局われわれの抱えているさまざまな問題を解決するにはテクノロジーに賭けていくしかないという思いからです。
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