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国民玉木氏も乗り気、安野たかひろ氏「デジタル民主主義2030」の真価は──超速インタビュー(2/3 ページ)

» 2025年01月21日 18時24分 公開

――テクノロジーへの取り組みが不可欠と考える理由は

安野氏:経済学的に見て、国や都市が経済成長する方法は大きく3つしかありません。1つ目が人口を増やすこと。これは自然増でも移民受け入れでもいい。2つ目が天然資源を活用すること。3つ目がテクノロジーを活用することです。

 1つ目と2つ目はそもそも無理なんです。人口も増えないし、天然資源もない。だとすると基本的には一つしかなくて、技術立国、テクノロジーを活用した国やコミュニティー、都市にしていくしかありません。それを全力でやっていこうというのが私の訴えていたビジョンです。

――デジタル庁の設置など、政府も取り組みを進めていますが、マイナンバーカードなどテクノロジー活用への懸念の声も聞かれます。この点についてはどう考えていますか

安野氏:国としてあるいはコミュニティーとしては、選択肢として「このまま経済成長ができないまま衰退していくのか」、あるいは「テクノロジーをガンガン使って足りない労働人口を埋めて、今の生活を維持ないし向上させていくのか」のほぼ二択になっていると思っています。

 後者をみんなでしっかり選ぼうという議論をしていった方がいいですね。マイナンバーカードで適切に運用されるのかといった個別の問題はもちろんありますが、テクノロジーを使う方向に向かうことによってはるかに大きいベネフィットが得られると思っているので、そこをしっかりと社会として議論していかないといけないと思います。

――現在の政治とテクノロジーの関係についてはどうお考えですか

安野氏:今の世界ほど、技術をどう使うかによって社会や世界の形が大きく変わる時代はなかったと思います。しかし、今の政治家の方でテクノロジーのバックグラウンドがある方はほとんどいらっしゃらず、本当に大事なことと議論されていることの間の乖離(かいり)は、これはものすごいものがあると感じています。

「政治資金の透明化」は受け入れられる? 疑問をぶつけた

――テクノロジーを活用した合意形成についてお聞きします。例えばブロードリスニングなどで市民の声を集めても、最終的な意思決定は政治家が行うべきだという意見がありますが、テクノロジーを活用した合意形成の仕組みについて、具体的にはどのようにお考えですか

安野氏:テクノロジーを活用したからといって、みんなが合意できるプランが絶対できるわけではありません。人間同士が膝詰めで話そうが、オンライン上で会話をしようが、結局受け入れられない意見、却下される意見が存在しているので、別に何かがオンラインだから何かが変わったわけではないと思っています。

 意思決定をできるのは政治家だというのも同意です。政治家は専門家の意見を聞き、また単純な多数決だけでなく、さまざまな要素を考慮しながら判断を下します。

 ある課題一つを見ても、単体では一つの結論になるかもしれませんが、他の課題A、B、Cなども含めた全体像で見ると、違う選択をしなければいけない場合もある。このようにさまざまな要素を総合的に見て全体像を設計する、という今の政治家の意思決定の仕組み自体を変えようという提案はしていません。

 ブロードリスニングで聞いた意見は、あくまで政治家が決定を下す際の参考材料とするべきです。「ブロードリスニングでこういう結果が出たから、必ずこの通りにしなければならない」という使い方は適切ではありません。

 しかし、このシステムには大きな価値があります。これまでよりはるかに多くの情報を集められる上に、その情報がどのように統合され、まとめられていったのかというプロセスを可視化できるからです。さらに、そうした作業自体が効率化されるということは、政策決定にすさまじいインパクトをもたらすと考えています。

――政治資金の透明化について、さまざまな施策が提案されています。政治資金収支のキャッシュレス化を推進し、取引をデジタルで可視化すべきという意見もありますが

安野氏:できるだけキャッシュレスに寄せるべきだと思います。政治とカネの問題は本題ではなく、ここで躓(つまず)いていることが非常にもったいない。それをうまく解決できている国があって、例えばスウェーデンのような国は結構うまくやっています。

 今の時代、現金をできるだけ減らすことはできると思います。減らした方がいい。キャッシュレスにすると、政治家も事務コストは減るし、市民も何かあったときに聞くことができる。オープンにすることが市民から評価されるのであれば、議員としても入れるメリットがあります。

――透明化に対する懸念の声もありますが、どのように対応していく考えですか

安野氏:政治資金の透明化に対して「国民に開示できない情報がある」という反論がよく聞かれます。例えば議員外交において、誰とどこで会談したかという情報は、国家の利益のために非公開とすべき場合があるという主張です。

 私は議員外交の現場を直接知らないので、その必要性については今後さまざまな方からヒアリングを進めていく予定です。ただし、自民党の幹事長経験者も「最終的には透明化は可能」と述べているように、これは乗り越えられない壁ではないのではないかと考えています。

 また、技術的な解決策もあります。例えば「秘密計算」という技術では、元データを開示せずに、その判定結果だけを保証することができます。これを応用すれば、具体的な情報は非公開としながら、「安全保障上の問題の有無」だけを判定し開示するといったことが可能です。このようにコンピュータサイエンスの技術を使えば、情報の透明性と機密性という相反するニーズを両立できる可能性があります。

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