OpenAIはプレスリリースの中で「このパートナーシップにより、ChatGPTの週3億人のグローバルユーザーは、Guardianの信頼できる報道に直接アクセスし、拡張サマリーを受け取ることができるようになります」とユーザー向けのメリットを説明する。
一方「これはGuardianのリーチを広げ、そのジャーナリズムを世界中の関心のあるオーディエンスにつなげることを目的としています」と、Guardian紙側にもメリットがあるパートナーシップであることを強調している。
またOpen AIからは、ChatGPTの企業向けバージョンである「ChatGPT Enterprise」がGuardianに提供され、同社内での情報分析やコンテンツ制作に役立てられるそうだ。
従来のメディアにおけるニュース消費は、不特定多数の人々に向けた記事を読む、あるいはニュース番組を見るなど、一方通行的なものが多かった。しかし生成AIやAIエージェントを通じたニュース消費は、冒頭で示したように、インタラクティブでカスタマイズされたものになる。
消費者は自分の知りたい情報をコンパクトな形で得て、そこからフォローアップの質問をしたり、詳細や背景に関する追加情報を要求したり、先ほどのように肯定的意見・否定的意見を調べることができる。
あるメディア専門家は、こうしたニュースの未来について「AIを核とし、会話型、音声型、双方向型、応答型、そして深くパーソナルな、有意義なヒューマン・コミュニケーションそのものとなる」と予想。「25年には、私たちはニュースを読むだけでなく、ニュースに話しかけ、ニュースも応答するようになるだろう」との見解を示している。
しかし、そうして得られるニュースの品質が低ければ、いくらそれを運んでくれる媒体の側が魅力的になったとしても、ユーザーへの価値は半減してしまう。そうした中で発表されたのが、今回のOpenAIとGuardian紙のコンテンツ面における提携というわけだ。
24年に行われた調査によると、生成AIチャットbotを通じたニュース消費はまだ初期段階にあるものの、今後の成長が期待できることが判明している。この調査では、米国在住のユーザーによるChatGPTの使用状況を分析しているのだが、その中でニュース関連のクエリは、ユーザーメッセージ全体のわずか1.9%のみだったそうだ。
しかしニュースのためにChatGPTを使用する人は、コンテンツに積極的に関与する傾向が見られ、ニュースの見出しをリクエストするだけでなく、AIにニュース記事の要約、翻訳、分析を依頼し、AIを「単にニュースを読むためだけではなく、個々のニーズを満たす方法でニュースを処理、解釈、パーソナライズする」ツールとして扱っているという。
また「特定のローカルイベントに関する情報や信頼できるソースからの情報を求める」「ニュースソースの信頼性を評価し、メディアの偏りを理解するために大規模言語モデル(LLM)に助けを求める」といった使い方も確認されたそうだ。
そうしたユーザーにとって、Guardian紙から信頼できる情報が直接得られるというのは、歓迎すべき取り組みといえるだろう。さらに前述の通り、25年に入って、情報収集を自律的に行ってくれるエージェント機能もChatGPTに追加された。冒頭で紹介したような、新しいニュース消費の在り方に、さらに大きく近づいたわけだ。
しかしニュース消費がChatGPT上で完結してしまっては、Guardian自体のWebサイトへの流入が減ってしまうのではないか。実際、筆者が冒頭でdeep researchを使ったデモンストレーションを行った際、情報源として参照していたサイトにはほとんどアクセスしなかった。
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