AIスタートアップのオルツは4月27日、売上金額の不正が疑われたため調査を行うと発表しました。同社は2024年10月に東証グロース市場に株式上場したばかりで、わずか6カ月で問題が発覚したことになります。
そこでこの記事では問題発覚“前”に注目し、疑惑が生じる予兆があったのか検証します。オルツにおけるWebサイト、プレスリリース、有価証券報告書、決算短信、決算発表資料を調べたところ、多数の「フラグ」を確認できました。
「フラグ」とは条件判定という意味で、ドラマ・映画において展開を引き出す伏線を意味します。また、アニメや漫画では特定の行動を起こすと死んでしまう「死亡フラグ」という表現もあるほどです。それではオルツにおけるフラグについて解説していきます。
まずはオルツが提供する製品・サービスについて紹介します。
次はプレスリリースを見てみましょう。過去半年から抜粋しました。
よく見ると他社との協業や提携、研究開発の着手、構築の開始という内容が多く、売上に直接つながる発表ではありません。そこで14年11月の設立から25年5月までに発表された全てのプレスリリースを確認しました。結果、「業務提携を発表」「研究を開始」「設立を準備」「◯◯氏が顧問(または役職)に就任」という発表止まりばかりでした。
製品発表のリリースはあるものの、デジタルクローンはα版の発表から2年間経過しても進展がありません。「AI通訳」は20年12月からβ版のままです。空間投影型デジタルクローンの「HOLONOID」、通訳をVR空間で実行する「AI通訳VR」、マッチングシステム「CloneHR」、コンサルティングサービス「EagleAI」、ソーシングエージェントツール「AlphaPath」は、発表されたものの実際のサービスとして提供されていません。
想定問答を生成する「smartQA」は、発表後も提供されないだけでなく、協業先のイー・アソシエイツ(東京都千代田区)から該当情報が削除されています。
オルツにおいて問題になったのは売上の不正計上です。24年度の通期決算(24年1月1日〜12月31日)のオルツの売上は60億5700万円です。そのうち議事録ソフトの「AI GIJIROKU」が40億円を占めています。この「AI GIJIROKU」において、有料契約者数が過大に計上されていた疑いがあり、調査がなされています。
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