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なぜ、人型ロボットで中国が急成長しているのか? 識者に聞いた“3つの理由”(2/3 ページ)

» 2025年12月22日 12時00分 公開
[島田拓ITmedia]

 1つ目は、政策による支援だ。中国では、5年ごとの国の目標を示す5カ年計画を立てる。中国は21年、同計画内で「ロボット産業発展計画」を策定し、25年までにロボットの総合性能を国際的にトップクラスにする目標を掲げた。また、23年には人型ロボットに限定した開発指針を定めた。

政策による支援の概要

 これらの指針をもとに、広東省や江蘇省、上海市などの地方政府は24年以降、それぞれの産業基盤や立地などを生かしたロボット産業の発展プランを発表。各地方に位置するロボット開発企業を支援し、目標の達成に注力してきた。

 投資も盛んで、24年の中国のロボット産業では、投資件数の約50%を人型ロボットが占める。中国の研究機関「高工ロボット産業研究所」は、同年の中国の人型ロボット分野の資金調達件数は23年の3.7倍で71件、調達金額は3.3倍の84億5000万元(1690億円、1元20円換算、以下同)に達したと報告している。

 2つ目は、豊富な人材だ。24年時点で、ロボット関連の学問を専攻する学生のうち、中国の大学に在籍する学生は58万人を超えており、世界全体の42%を占めている。また、20年から24年にかけ、中国の大学41校がAIやロボットに関するコースを新設した。

人材育成の概要

 李氏は「これまでは米国のシリコンバレーに留学し、卒業後、現地のトップ企業で働いた後、中国に戻って起業することが多かった」と指摘する。一方、人型ロボットに関しては、ロボット開発企業である中国AgiBotやUnitree Roboticsの創業者をはじめ、中国国内だけで育成された人物が登場しているという。

 3つ目は、サプライチェーンの発達だ。米Morgan Stanleyの調査によると、人型ロボットのサプライチェーンに関する上場企業トップ100社のうち、3割超が中国企業という。また李氏は「(上場していない企業を含めれば)実質、中国企業の割合がもう少し高い」との見立てを示す。

人型ロボットのサプライチェーンに関する上場企業トップ100社のマッピング(1/2)
人型ロボットのサプライチェーンに関する上場企業トップ100社のマッピング(2/2)

 重要なのは、人型ロボットのサプライチェーンが、既存のEVのサプライチェーンと多くの共通点を持っていることだ。李氏は、バッテリーやセンサー類、駆動装置といった例を挙げ、「中国にはEV産業の基盤があるため、人型ロボット産業への転用・再開発がしやすい」と説明した。

 また、ロボット向けAIの学習データに関する企業が、サプライチェーンに組み込まれている点も見逃せない。学習には主に、人間がロボットをコントローラーで操作して収集したリアルデータを使う手法と、シミュレーションソフトで作成した合成データを使う手法がある。中国には、2種類のデータそれぞれに対応する企業が存在する。

 例えば、AgiBotは23年9月、広さ約4000平方メートルの工場を上海市に設立。人間が約100台のロボットを操作し、1日に3万から5万件のリアルデータを収集できる環境を整備した。一方、AI企業の中国Manycoreは、空間認識向けのAI「SpatialLM」を25年3月に公開した。動画から空間のレイアウトを把握して3Dマップを生成するもので、合成データに活用できる。

AgiBotの事例
Manycoreの事例

 加えて「ロボット産業の集積エリア」も影響していると李氏。同エリアとして指定される北京市の亦荘には、ロボット本体と関連する部品などを生産する企業が約300社集まっている。そのため「部品を改善する際、朝に要望を出せば、午後に部品が届く」(李氏)といったスピード感で開発できるという。

「ここ2、3年が山場」――中国人型ロボットの課題

 一方、李氏は「人型ロボットはまだ黎明期」とも指摘する。AIが物理法則を理解する性能の未熟さや、高品質な学習用データの不足といった課題があるという。開発基盤についても、米NVIDIAや一部の中国企業が手掛けているものの「業界全体が共通して使えるものには至っていない」(李氏)とする。

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