小林啓倫のエマージング・テクノロジー論考
生成AIのセキュリティ演習は“それっぽく見えるだけ”? 「AIレッドチーミング」を考える(1/4 ページ)
ますます注目が高まっている生成AIだが、その普及が進めば進むほど、サイバーセキュリティに対する懸念も高まっている。特に企業にとっては、導入した生成AIが犯す間違いやその不具合が、大きな経営上のインパクトとなって現れかねない。
それを防ぐためにさまざまな手段が検討されており、前回取り上げた「ガードレール」もその一つだが、今回は「レッドチーミング」について考えてみよう。
攻撃者視点で脆弱性を探す「レッドチーミング」
先日、情報処理推進機構(IPA)が国などと協力して設立した「AIセーフティ・インスティテュート」(AISI)が「AIセーフティに関するレッドチーミング手法ガイド」という文書を発表した。これは大規模言語モデル(LLM)を構成要素とするAIシステムを対象として「レッドチーミング」を行うための手順やアドバイスをまとめたものである。
レッドチーミングとは、仮想の攻撃者チーム(レッドチーム)を立ち上げ、彼らに特定のシステムに対する模擬的な攻撃を行わせることで、当該システムの不具合や脆弱性を洗い出すという手法だ。攻撃者の視点に基づいて実施されるため、従来のテスト手法に比べ、より現実的な脅威を把握できるとされている。
レッドチーミングという名前は、冷戦期にコンピュータ上で模擬演習を行う際、ソ連に見立てたチームを「レッドチーム」(赤はソ連の国旗を連想させる色であるため)と呼んだことから付いたとされている。
つまりレッドチーミング自体は新しい概念ではなく、サイバーセキュリティの世界では以前から取り組まれていて、幅広い情報システムに対して実施されている。それがAIや生成AIシステムに対しても有効ではないかということで、さまざまな組織による理論構築が進んでおり、AISIのガイドもそうした流れに加わるものといえる。
AISIのレッドチーミング手法ガイドは、企画から立ち上げ、実行、結果の分析と報告に至るまで、一連の手順を網羅的にまとめた資料となっている。また巻末には、その作成にあたって参照した既存の論文やガイドライン類、さらには関連ツールの一覧がまとめられており、より理解を深めたいという人にとって最適な出発点となるだろう。
米Microsoftや米GoogleのAIレッドチーミングへの取り組み
実はAIや生成AIにおけるレッドチーミングについては、こうした理論構築だけでなく、実際の企業内における実践も進んでいる。例えば、米Microsoftは、社内で2018年から「AIレッドチーム」が活動していると発表している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
小林啓倫のエマージング・テクノロジー論考
生成AIやメタバース、新たなサイバー攻撃など、テクノロジーの進化が止まらない。少しずつ生活の中に浸透し、その恩恵を預かれることもある一方、思いもよらない問題を生み出すこともある。このコーナーでは、さまざまな分野の新興技術「エマージング・テクノロジー」について、小林啓倫氏が解説する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia AI+に関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
よく見られているカテゴリー
アクセスランキング
-
1
JASRAC、「AI作曲・人間作詞」の曲は管理します――「人間の創作的寄与の有無」で線引き
-
2
公式がワンコーラス公開→AIで無断フルコーラス化、拡散 大原ゆい子氏「無職転生III」OPが被害
-
3
「ChatGPTのコネクタでつながるし、M365 Copilotいらなくない?」→有識者3人に聞いてみた 知らないと損するコンテキスト管理「Work IQ」の仕組み
-
4
ChatGPTで広告表示へ 無料・Goプランが対象 6月22日にポリシー更新
-
5
「日本がいないと成り立たない」世界へ、フィジカルAIが導く独自の交渉力
-
6
データセンター建設に足りないのは「発電」ではなく「送電」 AI需要で電力消費26%増、Gartner予想
-
7
「もはや宗教」のClaudeに焦るOpenAI 流出メモが暴いた覇権交代のリアル
-
8
“AIが電力使いすぎ問題” 「電力不足」懸念で、発電能力より深いボトルネックとは
-
9
「Siri AI」の進化に「Geminiそのまま」の誤解――現地取材で見えた“新生Apple Intelligence”の全貌
-
10
サッカーW杯、偽ライブ配信サイトに注意 生成AIで詐欺が巧妙化 Acronisが警告
SpecialPR
ITmedia AI+ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmedia AI+をフォロー
あなたにおすすめの記事PR