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「攻撃」×「防御」×「攻撃」International Feel

» 2004年02月09日 21時20分 公開
[松尾公也,ITmedia]

 がらにもなく自転車のレビューなどをしていたせいか(?)、ちょっと間隔が空いてしまったが、約1週間分の海外情報をまとめてみるこの連載、第3回目である。前回、前々回ともSCOネタが続いてしまったが、今回もそれなりのトピックを提供している。そうそう。前回は新ウイルス、MyDoomがSCOを狙い撃ちにしている、というところまでだった。その結果は?

「攻撃」×「防御」

 今回は、MyDoomとその亜種による2種類のDoSサイト攻撃が行われた。最初は初期型MyDoomによるSCO攻撃。次は、派生種であるMyDoom.BによるMicrosoft攻撃である。両社はどのように対策をとったのか。

 SCOが受けると見られるDoS攻撃は、2月1日から12日まで続く。同社のブレーク・ストーウェル広報担当は、大量のトラフィックに対応するが、万が一の場合には別のサイトを立ち上げることを1月30日の時点で予告していた。しかし、同社のトラフィック対策は効を奏さず、SCOサイトはダウンし、ストーウェル氏は自宅で声明文を読み上げる羽目になった

 結局、SCOはサイト「www.sco.com」を閉じ、新たなサイト「www.thescogroup.com」を立ち上げざるを得なかった。しかし、サイトの移動で同社のオンライン業務に大きな支障が出ることはなさそうだという。

 業務を再開できたSCOは、本来の仕事、「訴訟」をさらに推し進めた。2件の訴因を追加し、賠償請求金額は20億ドル積み増しされ、50億ドルとなった。修正された訴状では、Linuxの拡散は国家安全保障を脅かすものだとする考えも盛り込まれた。どうやら、連邦議会議員に出した手紙は本気だったようだ。

 一方、亜種からの攻撃にさらされた「Linux攻撃」仲間、Microsoftのほうも同様に代替サイトを用意した。Microsoftへの攻撃は2月3日以降となっており、分散DoS攻撃に耐えた。20%ほど応答速度が低下したが、おおむね攻撃を回避することができたようだ。MyDoom.Bの広がりは初期型よりも小規模だったため、一概にMicrosoft>SCOとは言い切れないものがあるが、代替サイトの告知が後手後手に回ったSCOよりは、Microsoftの対策の方がクレバーだったと考えられる。

 そして、この「史上最悪」MyDoomは、その最悪度を数字で実証した

 では、利用者側の対策は? 前回は、注意事項を紹介したが、それ以前の根本的問題の改善が必要だという意見もある。「根本的な疑問として、Outlookで添付書類を実行できるのは、機能なのか、それともバグなのか。私はバグだと思っている」との意見は、とても常識的だ。

 ウイルス対策はともかく、スパムの対策は、ビル・ゲイツ氏のスパム業者の「財布を攻撃」するアイデアを元に進んでいるもようだ。切手マニアなら思わずニヤリとする名前、「Penny Black」というプロジェクトは、ゲイツ氏のアイデアの一つである、「一通送るごとに計算問題を解かせる」方式。もう一つの、送信に対して料金を課す「元払い方式」については、MSNだけでなく、Yahoo!も乗り出している。AnchorDeskのデビッド・コーシー氏は、スパム撲滅については賛成するが、課金方式の運用面においては、新しいエチケットを考える必要があるのでは、と提案している。

「訴訟」×「訴訟」×「訴訟」

 今回は、SCOがウイルス対策でネタを1本しか用意してくれなかったが、他の企業がどっさりと訴訟案件を発表してくれた。まずはMSがらみから。VoIPにも適用の可能性がある音声デジタル化に関する訴訟で、Microsoftは勝利を収めた。原告のMulti-TechはDell、Compaq、GatewayなどのPCメーカーやNet2Phone、Vocaltec Communicationsなどのインターネットテレフォニー企業も訴えているが、いまだ勝訴は一件もないという。これが認められればVoIP業界は大混乱と言われており、関係者はほっとしたことだろう。

 次に、「あらゆるストリーミング企業にライセンス料を請求できる」というAcaciaの特許問題。既にアダルトサイトを標的とした訴訟で裁判所による仮処分を獲得しているが、2月6日から、その審理が始まった。アダルトサイトがターゲットとはいえ、この裁判の行く末は大きな影響を持つ。Acaciaの権利が認められれば、「理論上、Web上でメディアをストリーム配信する誰もが同社にライセンス料を支払わなければならなくなる」からだ。しかも、この企業は、用意周到に関連特許を獲得しているのだ。

 そして、今度は日本企業もターゲットになっている。自動車などの組み込みプロセッサを開発しているPatriot Scientificは、Pentium搭載のノートPCを販売しているソニー、富士通、松下電器、東芝、NECを提訴した。これは、Pentiumプロセッサに採用されているオンチップクロッキング技術が同社の特許であることを根拠とした訴訟だが、当のIntelは訴えられていない。顧客を訴えられてしまったIntelは差し止め請求を起こした。

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 国内記事だが、2月6日の「アップルから“マック”へ」にはちょっとびっくり。既に行き先は決まっての発表だとは思っていたが、まさか同じマックとは。どちらも銀座が一号店という不思議な符合……。新天地でのご活躍を期待してます。「シェアは低いが質は高い」から「シェアは高いけど味は?」への移籍ということになるわけだが、100円バーガー安売りの後の混乱は、Performa乱売後の混とんに似ている?

 ITmediaには載らなかったけれどもKNN神田さんのセグウェイ「事件」も同じ日の出来事で、二度びっくり。警察発表まるのみの報道が多く、神田さんもへきえきしたことだろう。メールマガジン「日刊デジクリ」の2月9日号のタイトル、「書類送検されちゃいました!」には思わず笑ってしまったが、新聞、テレビメディアからの取材を被取材者側から捉えた貴重なレポートである。

 前回予告したWindows用キーボードドライバ、AppleKについては次回に。今週は切迫した業務が多く、PowerBook G4の出番が多かったので……。

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