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「秘密」×「文書」×「自動車産業」International Feel

» 2004年03月08日 16時34分 公開
[松尾公也,ITmedia]

 今回もSCO関連記事総まくり、行ってみよう! と気勢を上げたくなるほどの充実ぶり。いちおう、海外ニュースネタを1週間分拾う、というのがテーマのはずのこのコラム、前回のInternational Feelは、「では、ターゲットになった企業の名前は?」というところで“To be continued”になってしまった。で、その結果は?

訴えられました

 当該記事が最初に登場したのが深夜ということで、老体にむち打ち、速報を公開したのが3月4日の午前2時近く。SCOのLinuxユーザー訴訟、最初の標的は自動車部品チェーンのAutoZoneという記事だった。日本ではあまり知られていない小売りチェーン、AutoZoneの名前が出たその1時間後、SCOに訴えられたもう一社(こちらはかなりの大物)が明らかになった。DaimlerChryslerである。これは速報なので、記事としては、「SCOの標的となったユーザー企業は、DaimlerChryslerとAutoZone」のほうが詳しい。

 ライセンシーの名前として、大手ホスティング企業の名前が公表されたことで、大量のLinuxサーバを扱うホスティング企業、しかも日本の資本が入っているところが怪しい、などと予想していたのだが、あっさり外れた。大基幹産業たる自動車産業の、しかもビッグスリーであるところの大DaimlerChryslerがターゲットである。過去記事を掘り返すと、自動車業界で最大規模のLinuxクラスターをAthlon MPで構築という記事が見つかったくらいだから、Linuxを使っているのは確かだ。この訴訟関連記事にも、同社がLinuxに積極的だとの記述がある。SCOが昨年12月に自社のUNIX技術をLinuxに流用していないことなどを証明するようUNIXライセンシー各社に求めたのに対し、DaimlerChryslerがこれに応じなかったため、とSCOでは理由を説明している

 現時点では、DaimlerChrysler側の反応に関する記事は掲載されていない。上記の記事によれば、同社がどう対応するかは、日本の自動車メーカーも要注目だろう。対岸の火事、というわけにはいかないはずだ。

 訴えられたもう一社、AutoZoneは、全米で3000店舗以上を抱える巨大自動車小売りチェーンなのだが、現在はIBMユーザー。その前はRed Hat Linuxを使い、さらにそれ以前にはSCOユーザーだったという、一連のSCO関連訴訟の原告・被告が軒並み登場する華麗な(!)小売りマネジメントシステムを構築している。リプレースされた怨念、というわけではなかろうに。

 このユーザー訴訟は、第1会計四半期の業績を報告するカンファレンスコールの席上で発表された。肝心のSCOの業績は、というと、225万ドルの純損失。前年同期の72万4000ドルからさらに拡大している。SCOがLinuxユーザーにライセンスする「SCOsource」プロジェクトで得た収入、2万ドルに対し、そのコストは340万ドルに上るという。同社によれば、コストは今後も同程度で推移するということだが、資金的には大丈夫なのだろうか? そんな疑問に応えてくれたのが、次の記事である。

漏れました

 「MSからSCOへの資金の流れを示唆する文書流出――SCOは否定」という記事。投資会社、BayStar CapitalRoyal Bank of Canadaからの合計5000万ドルがSCOの軍資金となっているのは既報のとおりだが、この記事では、MicrosoftがSCOのために少なくとも8600万ドル用意した、と示唆している。オープンソース擁護者のエリック・レイモンド氏は、これはMicrosoftがSCOに資金を提供していることの動かぬ証拠だと主張している。SCOは、この文書(電子メールメッセージ)の存在自体は認めているが、「誤解」だと述べている。

 真偽はいまだ闇の中、であるが、既にSCOのライセンシーであるMicrosoftと、アンチオープンソースの盟友SCOとの関係から、新たなトリビアが生まれている。

 「Microsoft Wordでは、消したはずの文章を読むことができる」

 削除したはずのテキストが読み取り可能だなんて、普通のユーザーは知らないだろうが、Microsoft Wordには、確かにこういう機能が存在する。そのおかげで、

  • 2月18日午前11時10分、被告「Bank of America, a National Banking Association」を削除し、代わりに「DaimlerChrysler Corp.」を挿入
  • その3分後、「NA銀行の場合、特別な司法管轄区もしくは裁判地の条件があるか?」というコメントを削除
  • 訴状の最後の部分の提訴日が、日付なしの「2月」となっていた(SCOは以前、Linuxユーザー相手の訴訟を2月半ばに起こす予定だと語っていた)

という変更履歴が明らかになったのである。バンカメは、大急ぎで対策会議を開いていることだろう。SCOの担当者は、「Wordでなく、オープンソースのOpenOfficeを使うんだった」と思ったとか、思ってないとか。

 とにかく、Wordのドキュメントをそのまま公開している人は、もう一度チェックしたほうがいいだろう。

 そんなSCOも、悪いニュースばかりではない。「SCOのライセンス、CAなどさらに3社が購入」とのニュースにより、企業向けソフトウェアの大手、Computer AssociatesがSCOへのライセンス支払いに同意したことが明らかになった。Linux擁護の論客として知られるCAのチーフアーキテクト、サム・グリーンブラット氏は、「CAは、顧客に圧力をかけ脅しをかけようとするSCOの戦術を認めたわけではない。CAによるLinux技術のためのライセンス取得は、より規模の大きなCanopy Groupとの和解の一環であり、SCOの脅迫戦略とは全く無関係である」と説明している。

 「LinuxユーザーはSCOの訴訟に動じない」とリーナス・トーバルズ氏は主張しているが、この記事を詳しく読むと、ユーザーのほうは、必ずしも一枚岩ではないことがわかる。しかし、OSを使っているだけで訴えられる時代が到来するとは……。

CloseBox

 わが家も大量にコンピュータを使っているのだが、先週末にApple Storeの整備済製品セールで、iBookの安いやつを10万円ちょいで購入した。今度の中一になる次男のマシンとなるわけだが、800MHz G4のこのマシンがわが家では最速なのである。うらやましい。

 自分のマシンはといえば、2001年のゴールデンウイークに購入したPowerBook G4(500MHz)がいまだに現役。光学ドライブのスロットイン部分にひびが入っているのを除けば、十分に機能する。長男と三男のマシンはなんと、iBook Tangerine(G3 233MHz)である。これがOS Xではそこそこ速く走るのだから不思議なものだ。製品寿命が長いのも、メーカーにとっては考えものである。

 それでもほころびは見えてくるもの。キーボードのパンタグラフ部分がおかしくなったので、PowerBook G4とiBook Tangerineのキーボードを在宅自己修理で交換したので、あと1、2年は持ちそうである。

 本体は買えないので、周辺機器を、しかも安いのを、というわけで、フォーカルポイントコンピュータから出たiPod用アームバンドキット、roadieを購入した。これを使うと、iPod miniよろしく、腕にiPodをマウントし、持ち歩くことができるのだ。ベルトには既に携帯を装着しているので、iPodのための場所確保が難しいのだ。

 届いたroadieを左腕に装着して試したところ、うまく固定はできるようだ。実際に運動して試してみないとわからない部分はあるが、iPod 40Gバイトだと違和感を感じるくらいに重く感じるようだ。計量してみると、リモコンとイヤフォンを入れて280グラム、なしだと250グラム程度だ。反対の腕に同じくらいの重さのリストウェイト(250グラムというのがある)を着けると違うかもしれない。リストウェイトを上腕に着けても問題ないのかなあ。ともかく、見栄えの問題はありそうだ。着けたらカミサンが笑っていた。


 日曜日には、夫婦で、石神井公園から、埼玉・蕨のラーメン桃太郎まで片道15キロを自転車を飛ばし、トマト味のラーメンを堪能して帰った。そんなサイクリストな道行きを手軽に記録できるメディアとして、ライフスライスというプロジェクトの存在に注目している。まあ、自転車乗りに限ったことではないが、自分の行動を記録するときに、いちいちカメラを取り出して撮影するというのも、なかなか手間である。どうせなら、自動的に撮ってくれたほうがいい。デジカメで一定間隔で撮影し、その画像をブログとしてアップロードできるのが、ライフスライスキットという、カメラとアップロードツールのセットである。さっそく申し込んでみた。

 これを手に入れれば、MicrosoftのR&D部門で研究中というビジュアル日記帳「SenseCam」の先取りができるはずだ。というか、このSenseCamプロジェクトは、ライフスライスのせいぜいが延長にしか過ぎないのでは、という気がする。ライフスライスを企画しているユビキタスマン氏のSenseCamに関するコメントが、日刊デジタルクリエイターズのメールマガジン3月8日号に掲載されているので、興味のある人は、ぜひ読んでほしい。

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