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コラム
» 2004年07月16日 12時01分 UPDATE

モバイル受信――その鍵を握る「地上系システム」 (1/2)

地上波デジタル放送によるワンセグモバイルはもちろんのこと、衛星放送の移動受信についても、安定的な受信を実現するためには、確固たる地上系の仕組みの構築が不可欠だ。“ビル陰難視”などの解消の場合、有線系による対策が採れないところに難しさがある。

[西正,ITmedia]

テレビ放送のモバイル受信化の流れ

 携帯電話の急速な普及が背景になって、今では明らかに「モバイル化」がIT革命のキーワードとなった。

 テレビ放送の受信スタイルも、従来は各家庭に固定的に置かれたテレビでの視聴が当たり前であり、自動車内での受信はあくまで例外的な形だった。それがここ一、二年の傾向として、携帯電話機などを使った“モバイル受信”に注目が集まっている。

 地上波放送デジタル化のメリットも、放送事業者に与えられた13セグメントの帯域のうちの1セグメントを使って展開されるモバイル受信が目玉であるかのようにすら言われている(視界不良に陥った「ワンセグ・モバイル」)。

 また、モバイル受信とは縁遠いはずであった衛星放送についても、独自衛星によるSバンド帯を使った「モバイル放送」がサービス開始に向けて最終準備の段階に入っている。さらには多チャンネル放送を行ってきたスカパーの放送が携帯電話端末でも受けられることになるという。

 テレビ放送のモバイル受信というスタイルは、これまでの日本にはなかっただけに、どれだけのニーズがあるのかは明らかではない。いわば、どれだけの市場規模があるのかも見えていない段階なのだが、供給サイドからは次から次へと新たなサービスが打ち出されるという格好になっている。

 それだけに、アナログ放送時のように、「モバイル受信は“あくまでも例外的なスタイル”であり、映像や音声の質まで保証されない」という言い訳は通用しなくなっている。固定テレビ向けの放送と同様、ビル陰対策などの難視聴の防止が欠かせなくなっているのだ。

 ところが、現実を見ると、東京都では7割、日本全国でも5割を超える世帯がCATV経由でテレビ放送を視聴している。電波で受けることが絶対条件となるモバイル受信といっても、その実現には、実は、中継から中継を重ねるという“重厚な”地上系システムの構築が不可欠になるのである。

 モバイル受信については、携帯用機器のような小さな画面で何を見るのか、そもそも、どういった利用シーンが想定されるのかなど、今後の課題として指摘されることは数多い。だがそれ以前の問題として、安定的に受信できなくてはモバイル視聴について云々してみたところで始まらないのだ(モバイル放送の安定受信についての取り組みについては、この記事を参照)。

ギャップフィラーの必要性

 地上系システムの代表的な存在が、ギャップフィラーと呼ばれる中継機器である。ギャップフィラーとは、ビル陰やトンネル内、地下街など、通常の方法では電波の届かないエリアに対して放送波を中継し再送信する設備のことである。命名の所縁は、電波が届きにくい地域“すき間”(gap)に向かって電波を再送信して補うことによって、“すき間”を埋める役割を果たすところから来ている。

 モバイル放送の場合には、独自の衛星を打ち上げて、なおかつSバンドと呼ばれる降雨減衰に強い帯域を使って、全国一波で移動体向けの放送を行うことになるため、都市部などを中心にギャップフィラーを設置することは欠かせない(モバイル放送のギャップフィラーの仕組みはこちらの記事参照)。

 ギャップフィラーにも色々な種類があることから、ひとくくりで決め付けることは難しいが、平均的なコストの試算をしてみると、例えばビルの屋上などに設置する広域的なもので言えば、ハードの単価が100万円程度、さらに設置工費として100万円程度かかると考えられる。もちろん、それ以外に、ビルオーナー等との交渉経費も必要だ。

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