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Appleだけがユーザーバリューを本当に理解している?(2/2 ページ)

» 2007年01月16日 18時17分 公開
[David Morgenstern,eWEEK]
eWEEK
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細部が重要

 一番わたしの印象に残ったのは、Appleが「pinch」と呼ぶズーム機能のデモだった。これは、画面上の画像を親指と人差し指でつまんで押し広げるように動かすだけで、画面の一部を拡大できるというもの。ここで重要なのは、この画面は複数の指による入力を受けることができ、それを正しく実行できるという点だ。

 このpinchズーム機能はあるディスプレイ処理技術によって実現したもので、動作が非常に自然なため、ユーザーもすぐに使いこなせるはずだ。もちろん、単にディスプレイをダブルタップするだけでも、画面上の一部を拡大することはできる。Appleは何かを実行するための操作方法を複数用意している場合が多い。

 わたしがさらに感心したのは、iPhoneでは内蔵の小型センサーを使った各種の自動機能が用意されている点だ。Appleはこうしたハードウェアインタフェースの細かな工夫に長けている。例えば、ノート型Mac「MacBook Pro」は環境光センサーを搭載し、暗いところでも作業できるよう、画面の輝度を自動的にコントロールしたり、キーボードのバックライトを点灯させられるようになっている。

 ジョブズ氏によると、iPhoneは加速度計、近接センサー、環境光センサーを搭載し、ユーザーインタフェースが自動機能で強化されている。

 そのため、iPhoneの写真機能のデモによると、iPhoneを横向きにすれば、画面上の画面も横向きに切り替わるようになっている。加速度計が動きを感知し、画面を縦向きから横向き、あるいはその逆に自動的に回転させるのだ。これは、iPhoneのブラウザを使ってWebページを閲覧中などに便利だろう。

 またユーザーが電話機を耳に当てて着信に応じる際には、近接センサーにより、ディスプレイの表示がオフとなるため、電力を節約できるほか、耳が画面に当たって不用意な入力が行われるのも予防できる。

 そしてAppleのノート型Macと同様、内蔵の環境光センサーにより、周囲の明るさに応じて、ディスプレイのバックライトの明るさを加減することで、電力消費を抑えられる。

 ほかの大半のデバイスメーカーはコスト的な理由から、そうした革新的な機能をデバイスに組み込まずにいる。つまり、各社とも、大した違いのない、あまり費用の掛からない小さなインダストリアルデザインを開発しようとしている。

 それに引き換え、Appleは自社製品にこうした詳細を組み込み、それを市場における差別化要因としている。だが、そうした機能は単なる「気の利いた微調整」ではなく、常に実用性を備えており、なおかつ、ユーザー体験にしっかり統合されている。

 もちろん、そうした細かな配慮はソフトウェアでも明らかだ。例えば、電子メールのメッセージでは、電話番号が構文解析され、自動的にリンク形式が取られるようになっている。そして、そのリンクをクリックすれば、その番号にダイヤルされる。番号をアドレス帳などに追加する必要もない。

 Nokiaなど大手電話機メーカーの城下町では今ごろ、悲鳴が上がっているだろう。クパチーノのAppleのチームはiPhoneで市場に一撃を食らわせた。

冗談か本気か?

 ジョブズ氏はiPhoneの発表に際し、iPhoneは「電話を再発明」するものだと語った。そして同氏は、昔の電話のような回転ダイヤル付きのiPodの写真を見せ、聴衆の笑いを誘った。このジョーク画像はなかなか面白かったが、プッシュフォンで育った若い聴衆にはおそらく、この冗談は通じなかったのではないだろうか?

 一方、社名をApple Computerから単なるAppleに変更するという発表を除けば、9日の発表は、Macintoshについてはほとんど触れられずに終わった。

 ただしジョブズ氏は、裁判所文書から最近明らかとなった、Microsoftのプラットフォーム製品&サービス部門の共同社長で近く引退予定のジム・オールチン氏によるものとされる発言への言及は忘れなかった。その発言とは、「もしわたしがMicrosoftの社員でなければ、今日にでもMacを買っていただろう」というもの。

 ジョブズ氏によると、すべてのチャンネルを合わせた場合、Mac購入者全体の50%以上を「切り替え組」、つまりWindowsプラットフォームからの移行ユーザーが占めているという。

計画に従い、実行する

 ジョブズ氏は2001年か2002年に、Macを「コンテンツを作成し、周辺機器に配信するためのデジタルハブ」として位置付ける戦略を概略した。iPhone、および同じく9日に発表された「Apple TV」も、そうした構想に沿った製品となっている。

 帯域幅の限られた携帯電話網でコンテンツをダウンロードする代わりに、高速USB 2.0接続でコンピュータからiPhoneにコンテンツをプッシュできる。そう、これはAppleのデジタル著作権管理(DRM)スキーマの基本的な要素だが、それと同時に、堅牢なユーザー体験を約束するものでもある。そして、これは、電話のバッテリーの確実な充電にもつながる。

 最後にもう1点。AppleはiPhoneでMacソフトウェア開発者とインターネットサービス企業にも好機を与えることになる。開発者については、Dashboardウィジェットのユーザーがいる。Dashboardウィジェットは、各種のプロダクティビティ機能やインターネットコンテンツへのアクセスに使われている人気のMacアプレットだ。

 なおAppleは、iPhoneによって、自社の各種の.Macサービスをユーザーに無理強いしようとはしていない(最近Macコミュニティーで.Macの性能と信頼性が批判を浴びていることを考えても、これはおそらく賢明な選択だ)。同社はその代わりに、メール、検索、地図サービスでGoogleおよびYahoo!と提携している。

 果たしてMicrosoftにも同じようなことができただろうか?

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