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レコメンデーションの虚実(11)〜ソーシャルとライフログの交差点を目指すソーシャルメディア セカンドステージ(2/2 ページ)

» 2007年11月26日 12時30分 公開
[佐々木俊尚,ITmedia]
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マイ・ライフ・アシストサービスの目標

 ここに書かれている行動連鎖型検索サービスというのが、要するにライフログを使ったレコメンデーションのことである。ケータイはさまざまな方法で、利用者のライフログを収集することができる。例えばサイフケータイは、読み取り機側に電子マネーのコードを渡し、決済を行うだけではなく、「トルカ」という機能を使って、読み取り機側から情報を得ることもできる。店舗や地域の情報などをケータイのメモリの中の「トルカフォルダ」に書き込むことができるのだ。例えばアパホテルでは、チェックアウトを正午まで延長できるクーポンをトルカ経由でゲットすることができる。またチェッカータクシーは、おサイフケータイを使って運賃を支払った客に対して、支払いと同時にトルカでメールを配信し、配車受付センターを案内するというサービスを行っている。

 トルカには、端末ごとにトルカIDというユニークな番号が割り当てられている。このトルカIDを読み取り機側に自動送信させることも可能で、つまりはCookieと同じような使い方ができるというわけだ。そうなると端末ごとに蓄積されたライフログデータを常に自動送信させるような仕組みも可能になってくる。これらの情報をどんどん蓄積し、それらデータをマイニングすれば、その人に的確なレコメンデーションを行えるようになる。それがNTTドコモの考えている新しいサービスの目標だ。ドコモのWebサイトには、こんな未来のシーンが紹介されている

――取引先からの帰り道。今日のプレゼンは大成功だった。

パァッと飲みにでも行こうか……そう考えていると、「最近、ちょっと疲れてい ませんか?」と携帯電話が語りかけてきた。この日のために、夜遅くまで仕事をしていた事を携帯電話は知っていたのだ。

「○○チームの試合があります。野球観戦でストレス発散してみては?」

「△△というマッサージ屋がサービス期間中です!」

携帯電話は、体調の事も考えた魅力的な提案を次々にしてくれる。野球場で歓声をあげながら飲むビールも、たまにはいいな……。よし、野球好きな同僚を誘ってみよう!

 携帯端末を使ったこうしたレコメンデーションサービスは、過去にいくつも登場している。例えば比較的成功した例としては、小田急電鉄のグーパスが有名だ。これは事前に会員登録した定期券の利用者が駅の改札を通ると、即座にメールが携帯電話に配信される仕組みだ。メールの内容は沿線のイベントやグルメ情報など、利用者が事前に選ぶようになっている。駅の自動改札機に定期券を入れると、その利用者がどの駅を通過したのかという情報が自動改札機からサーバーに送られ、そこから電子メールが携帯電話に配信される仕組みになっている。しかしこのグーパスは、利用者個人の行動や属性を考慮していない。メールの内容とマッチングしているのは自動改札機で得られる位置情報だけであり、今となってはWeb1.0的なレコメンデーションでしかない。NTTドコモのトライアルは、この地理情報に基づいたレコメンデーションに利用者の行動や属性をマイニングすることによって、高度化していこうという試みである。

ライフログを出すことへの心理的抵抗をどう乗り越えるか

 自分のライフログデータを、誰かに渡すというのはきわめて心理的抵抗が高い。しかしケータイというきわめてパーソナルなデバイスを使えば、そのパーソナルな性質によって、ライフログに対する心理的障壁はかなり低くなる可能性がある――というのが、NTTドコモのアプローチだ。

 さて、ここでFacebookに話を戻そう。Facebookのアプローチは、この心理的抵抗を乗り越えるために、「仲間意識」を持ち込むというものだ。つまりは自分の友人や知人に対してであれば、「今日映画を見に行った」「今日、○○駅で乗り換えた」「昨日、こんなものを買った」という情報を流すことに対する抵抗が少ないのではないかということである。

 このFacebookのアプローチで重要なキーワードは、データフィードとFacebook beaconだ。これについては次回で取り上げよう。

次回ソーシャルメディア セカンドステージ【第12回】は12月3日掲載予定です。

佐々木俊尚氏のプロフィール

ジャーナリスト。主な著書に『フラット革命』(講談社)『グーグルGoogle 既存のビジネスを破壊する』(文春新書)『次世代ウェブ グーグルの次のモデル』(光文社新書)など。インターネットビジネスの将来可能性を検討した『ネット未来地図 ポスト・グーグル次代 20の論点』(文春新書)を10月に上梓した。連絡先はhttp://www.pressa.jp/


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