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コラム
» 2007年12月25日 12時00分 公開

レコメンデーションの虚実(15)〜Facebook Beaconはいつかは受け入れられるのか?(1/2 ページ)

ネットジャーナリスト佐々木俊尚氏が次世代ソーシャルメディアのかたちを探る連載「ソーシャルメディア セカンドステージ」。最も“とがった”ソーシャルレコメンデーションサービス「Facebook Beacon」の問題点はプライバシー侵害だけなのか、弱点はないのかを考察します。

[佐々木俊尚,ITmedia]

猛反発を受けたFacebook Beacon

 「Facebook Beacon」は、ユーザーやプライバシー団体から袋だたきにあった。これは前(Facebookの灯台はすべてを明るく照らし出す)にも書いたように、友人たちに通知される“わたし”の行動に広告を加えていこうというソーシャル広告サービスである。例えばコカ・コーラの専用ページの「ファンになる」というボタンを押すと、「わたしはコカ・コーラのファンだ」と宣言できる。そしてこの宣言は、友人たちに「佐々木俊尚はコカ・コーラのファンになりました」とデータフィードによって通知される。これによって友人たちには「へえ、佐々木はコカ・コーラが好きなんだ」という印象を与え、イメージ向上に役立つ。

 Facebookに組み込まれたアプリケーションによって、この行動通知の範囲はさらに広がる。例えばクチコミを投稿するアプリケーションを作れば、「佐々木俊尚は○○というレストランに星3個の評価をしました」という通知がフィードされる。YouTubeの動画を見るアプリケーションからなら、「佐々木俊尚は○○という動画を見ました」と通知される。これらはそれでもまだFacebookのインサイドの行動だが、これをアウトサイドにまで拡大したのがFacebook Beaconだ。外部のサイトと連携し、そのサイトで採った行動がFacebookに通知される仕組みになっている。例えばAmazonと連携すれば、Amazonでどんな書籍やDVD、音楽CDを購入したのかがすべてFacebookの友人たちにフィードされるのである。サービスイン時には実際にはオンライン旅行サービスのTravelocityや映画・演劇発券サービスのFandango、ウェディングサービスのThe Knotなどで提供された。

プライバシー侵害の指摘にFacebook側は設定を変更

イラスト

 そしてこのBeaconは当初、オプトアウトとして提供された。つまりこのBeaconを利用したくない人は、「このプログラムを利用しない」というボタンを明示的にクリックして意思表示しなければならなかったのだ。これには多くのFacebookユーザーが猛反発した。例えば人権団体のムーブオンは「プライバシー侵害だ」と指摘し、署名活動を開始。Beaconがスタートした直後に5000人以上のFacebook会員の署名を集めて抗議した。

 またニューヨークタイムズは、「Facebookのソーシャル広告は違法か?」という記事で、ニューヨーク州には100年の歴史を誇るプライバシー法があり、この中で「市民は誰であろうとも、名前や肖像画、写真、声を広告、商売目的に許可なく利用された場合」には、損害賠償を起こすことができると指摘している。そしてこの法律にFacebookの広告が抵触するという点を自らのブログで解説したウィリアム・マクガラバン・ミネソタ大教授の言葉を引いて、こう書いた。「Facebook利用者がどこに住んでいようと、ニューヨーク州内で広告が表示されれば、この法律は適用される。ニューヨーク州内のパソコンモニターで表示できれば、おそらく間違いない」

 この結果、FacebookはBeaconをオプトインに変更することを余儀なくされた。つまりユーザーはデフォルトではBeaconをフィードする設定にはされず、「Beaconを使う」というボタンをクリックして始めて自分の行動が友人たちにフィードされるようになったわけだ。そしてCEOのマーク・ズッカーバーグ氏は公式ブログで次のように謝罪した。

 この機能の実現に当たって多くの過ちを犯しましたが、その後の対応で、さらに過ちを重ねてしまいました。このバージョンは本当に私たちの失敗であり、みなさんにお詫びいたします。すぐに対処すべきであったにもかかわらず、正しい解に致るまでに時間がかかりすぎました。私たちはこのたびの対応でよかったとは考えていません。もっとよい方法があったはずです。

 はじめにBeaconを思いついたとき、私たちのゴールは、みんなが、サイトを越えた情報を友人と共有できる簡単なサービスを作ることでした。ウェブを見ていて目ざわりにならないよう軽い存在にする一方、どの情報を共有するかがはっきり分かるようにする必要がありました。私たちがBeaconに熱いものを感じたのは、みんなが共有したいもののほとんどが、Facebookにはない情報だろうと考えたからです。そして、うまくバランスを取ることができれば、Beaconを使いみんなが簡単に秩序あるやり方で、友だちともっと情報を共有できるだろうと考えました。

 しかし、バランスを取るのに失敗してしまいました。初めは、メンバーが何もしなくても使えるように存在感のないものにしようとました。このわれわれが最初にとったオプトインではなくオプトアウトする方式の問題は、共有したくない、ということを宣言し忘れると、Beaconによってそれが友人と共有されてしまうことでした。(いずれもTeckCrunch日本語版『Zuckerberg面目を保つ。Beaconで謝罪』より)

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