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レコメンデーションの虚実(17)〜ソーシャルメディアが映画『マトリックス』を生み出す日ソーシャルメディア セカンドステージ(1/2 ページ)

» 2008年02月04日 16時45分 公開
[佐々木俊尚,ITmedia]

ソーシャルメディアの可能性を極大化するzero-Matrix

 ライブドア出身の山崎徳之社長らが率いるゼロスタートコミュニケーションズが先ごろ、ソーシャルグラフソリューション「zero-Matrix」(デモサイト)という新しいサービスをリリースした。まだほとんどの人が気づいていないようだが、このzero-Matrixはこれまで存在していなかった、驚くべき新技術である。このサービスは、ソーシャルメディアの可能性を極限にまで拡大する可能性を秘めているのだ。

 zero-Matrixはソーシャルグラフソリューションと題されている。ソーシャルグラフというのは昨年夏ごろから流行し始めたジャーゴン(ある業界でだけ通用する専門用語)で、別の言い方をすれば人間関係ダイアグラム。つまりはmixiのマイミクのように、人と人のつながりを可視化した相関図のことだ。その正確な意味については、ブログ「antipop」で翻訳されているブラッド・フィッツパトリックのマニフェスト『Thoughts on the Social Graph』に詳しい。2007年8月に書かれたこのマニフェストでフィッツパトリック氏は、これまでSNS運営企業がそれぞれ自社内に囲い込んでいたソーシャルグラフを解放し、ユーザーが自らの友人関係を、どのSNSでも共有できるような新たな枠組みを提唱している。例えばmixiのユーザーがGREEに新規登録すると、「あなたのマイミク183人のうち、126人がGREEにも登録しています。これらの人をすべてGREE上でも友人として扱いますか? それとも友人にする人を選択しますか?」といった表示が出る、というような具合だ。

ソーシャルグラフのデータ共通化を急ぐ大手SNS

イラスト

 実際、昨年11月には非営利団体のDataPortability.org/が設立され、GoogleやFacebook、Microsoft、Plaxo、Yahoo!、MySpaceなどのSNS大手が参加を表明。これらのサービスの利用者をのべ人数で測ればおそらくは10億程度には達しているはずで、このソーシャルグラフのデータ共通化という枠組みは、いまや急速に実現を目指して走り始めている。

 ここまでの一連の流れを再度押さえておけば、最初にOpenIDの普及が始まった。これは簡単に言えばWeb上の各サービスで使う認証システムを共通化しようというものだ。そうして昨年秋にはGoogleがOpenSocialを発表し、SNSアプリケーション開発のためのAPを共通化した。この段階ではまだデータの共通化にまでは進んでいなかったのだが、11月に設立されたDataPortability.orgによって今度はソーシャルグラフのデータ共有へと一気に話は進みつつある。

 ではこの次のステージは、何なのだろうか? 各SNSでソーシャルグラフが共有された先には、何が待ち受けているのだろうか?

実世界の人間関係をバーチャル空間で再構築する

 断言してもかまわないだろう。おそらく次にやってくるのは、ソーシャルグラフのオントロジー(Ontology)化である。

 つまりはセマンティック・ソーシャルグラフだ。ソーシャルグラフ上でヒトとヒトがどのような方向性と距離によってつながっているのかを解析し、その関係性をオントロジー化していく。前回(マルチディレクショナルSNSの描く驚くべき未来)も書いたように、現在のSNSがソーシャルグラフを一元的にしか捉え切れていないのに対し、将来のSNSはベクトルと距離を考慮に入れたマルチディレクショナルなSNSとなっていく。リアルの複雑な人間関係を、バーチャル空間上で再構成するためには、人間関係をマイニングし、オントロジー構造を持たせるしかない。

 さらに言えばこの世界で相互につながっているのは、ヒトとヒトだけではない。最近買った製品、住んでいるマンション、昨日乗った新幹線、好みの映画、今行きたいと思っているレストラン、好きな音楽、感動した小説。面白く感じたニュース、よく利用するショッピングモール。それらが重層的、多方向的につながりあって、この世界は構成されている。それらの関連性を構造化することができれば、ひょっとしたらこのリアルの世界をバーチャルな空間の中で再構築できてしまうかもしれない。

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