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量子コンピュータって何? その1科学なニュースとニュースの科学

» 2008年07月04日 15時00分 公開
[堺三保,ITmedia]

 5月26日、NTTと大阪大学は、「量子テレポーテーション」を使った量子計算に成功したと発表した。この技術は、量子コンピュータの実現に有望だとされており、実現への突破口が開かれたとされている。

 ……とまあ、大変重大なニュースのような気もするのだが、なにしろモノがモノだけに、何の話をしてるのか、解説しようとすると実に難しい。

 なんといっても、「量子テレポーテーション」とか「量子コンピュータ」がどんなものであるかについて話すには、まずは「量子論って何?」ってところまでさかのぼる必要があるからだ。

 何はともあれ、今回はまず「量子コンピュータとはどんなもので、なぜそれの研究が進められているのか」といったあたりのことについて、大まかなところから解説していきたい。

 量子コンピュータを一言で定義してしまうとすれば、それは「通常のコンピュータが演算に利用している「ビット」を、量子力学的な「重ね合わせ」の状態を持つ「量子ビット」で置き換えたもの」ということになる。

 コンピュータというものを、つきつめて単純化してしまうと、「1」か「0」、もしくは「オン」か「オフ」の2種類の状態しか持たない小さなスイッチの集合体であるといえる。その個々のスイッチのことを「ビット」という単位で数えるわけで、CPU(中央演算装置)などの処理能力を示す指標の1つとして、「何ビット」というような言い方をする(昔のマイコンはたったの8ビットとかだったんだよね、って、それはまた別の話)。

イラスト

 さて、現在主流のコンピュータの場合、1つのビットが一度に表せるのは「0」か「1」のどちらかだけ。まあ、当たり前の話ですわな。

 ところが、「量子ビット」は、同じ確率で同時に「0」と「1」の両方の状態をとることができる。とりあえず、今は「なんで?」ということは脇に置いて、そういうものだと思ってほしい。

 つまり、1ビットで一度にあらわせる状態は1つだけなのに、1量子ビットは一度に2つの状態を表すことができるということになる。

 そして、ビット数を増やしていけば、普通のコンピュータと量子コンピュータの差はどんどん広がっていく。

 例えば、8ビット(CPU)のパソコンの場合、一度に表現できる状態は、やっぱり1つだけ(例えば「00110010」とか)なのに、8量子ビットの量子コンピュータは、「00000000」から「11111111」までのすべての状態を、同じ確率で同時に表現可能なのだ。

 では、それが何の役に立つのか?

 例えば、8ビットの組み合わせの中から、特定の条件に合うものを計算することを考えてみよう。

 通常のコンピュータの場合、「00000000」から「11111111」まで、一度に1つずつ、総当たりで条件と照らし合わせて、解を見つけていく。

 ところが、量子コンピュータの場合、「00000000」から「11111111」までのすべての状態の中から、条件に合う解を一度に見つけ出すことができるというのである。すべての状態を一度に表現しているのだから、一度計算すれば、総当たりしたことになるということだ。

 つまり、量子コンピュータが実現すれば、大量の数を扱うような計算問題を、今までのコンピュータとは比べものにならない高速度で解くことができるというのである。

 なんだか、狐につままれたような気持ちがする人も多いかもしれない。

 次回以降、もう少し根本的なところから、量子コンピュータの謎に迫ってみたい。

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