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Googleの「Native Client」とは?――エンジニアに聞いてみた

» 2008年12月12日 16時55分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 調査会社Net Applicationsが先週記者団に、「Googleはカリフォルニア州マウンテンビューの本社から流している一部トラフィックの出どころを隠している」と語ったことを覚えているだろうか。

 Googleがこれに反論する形で今週リリースした「Native Client」は、オープンソースのランタイムエンジン、ブラウザ用プラグイン、コンパイルツールをセットにし、コンピューティングデバイス上のWebアプリケーションパフォーマンス向上を目指す。Native ClientをGoogleのChromeブラウザおよびGearsと組み合わせれば、MicrosoftのWindowsキラーとなるWeb OSができるとの見方もある。

 わたしはNative Clientに携わったGoogleのエンジニアリングディレクター、ライナス・アプソン氏と、Native Clientのエンジニアリングマネジャー、ブラッド・チェン氏、Native Clientのプロダクトマネジャー、ヘンリー・ブリッジ氏にインタビューした。

 質疑応答の全文はこちら(英文)に掲載しているが、手っ取り早く読みたいという読者のために主要部分を抜き出した。興味がある方は是非全文を読んで欲しい。セキュリティについて多くが語られている。

 アプソン氏は、Net ApplicationsがなぜGoogleの一部トラフィックの出どころを突き止められなかったのかまったく分からないと話した。GoogleがWeb OSを開発中なのかどうかについては明言を避けた。

アプソン われわれはうわさについてはコメントしない。突拍子もないことを聞かれた時と同じだ。

―― Chromeを発表する以前、Chromeの存在を否定していたのと同じですか。

アプソン(冗談めかして) Chromeのような、宇宙エレベーターや飛行船のようなものだ。それについては言えない。

 わたしの深読みなのかもしれないが、相手が知らないことを自分が知っている時のあの調子、誰かに話したくてたまらないが話せないというあの雰囲気が、アプソン氏にはあった。

 明らかに、GoogleはいわゆるWeb OSの複数のレイヤーを構築している。それが何で構成されるのかは不明だが、それによってWebアプリは(将来的により一層)Webアプリよりも高速かつ安定したものになる。

 優れたWeb OSスタックを構成するためChrome、Android、Gears、Native Clientに加えるとしたら何かという質問をアプソン氏は受け流し、こう指摘した。「Microsoftの独禁法訴訟以来、OSとは何なのか、わたしには分からなくなった。非常に幅広い線引きがされ、基本的にわれわれがWindowsと呼んでいるものがそれだということになった。コンピュータ科学の基本的な教科書では、OSとは何かの定義はもっと狭いものだった。わたしにはどうやっても、筋の通る理屈でOSを定義することはできない」

 以下アプソン氏の発言だ。

 しかしChrome、Native Client、Gearsでわれわれが何をやろうとしているのかは話せる。われわれは、デスクトップアプリケーションと同じくらいリッチで反応が良く、パワフルなWebアプリを人々が構築できるようにしたいと心から思っている。Webとデスクトップの間の溝を埋めたいのだ。それをオープンソースとオープン標準でやることに非常に力を入れている。

 アプソン氏がこれほど夢中になれる理由は何か。もしうまくやれば、現在画策しているよりも一層、検索でMicrosoftを追い込める現実味が高まるからだ。検索とWebアプリを頂くGoogle OSなら、進化を続けるハングリーなWebユーザーの世界を決定的に覆す存在になるかもしれない。

 ではGoogleはどうやってこれを流通させるのか。アナリストのロブ・エンダール氏などは、Microsoftの弱点はNetbookにあると指摘する。

 (Googleの)戦略の中核にあるのはMicrosoftの追い落としだ。第1段階は主に、Windowsの価値の多くを取り去ってそれをクラウドに置くことだった。第2段階としてAndroid、Android用アプリケーションストア、Gearsを使って追い落としに掛かり、第3段階で現在Googleが地ならしを行っているエンタープライズにそのすべてを持ち込む。Windowsに真正面から向かっていくというよりは、スマートフォン、そしていずれはNetbookという側面から攻める。Windows Mobile 7のリリースが遅れ、NetbookでWindowsが問題になる中、もしもGoogleがシュートできれば、これまでのMicrosoftのどのライバルよりもいいシュートを決められる。Microsoftのこれまでの繁栄は、シュートできなかったライバルたちのおかげなのだ。

 あなたはどう思うだろうか。Googleは携帯電話に加えてNetbookでもMicrosoftに勝てるだろうか。

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