AdobeとAppleがiPhoneでFlashをサポートするために協力しているという。そんなことがあり得るのだろうか。
Bloombergによると、Adobeのシャンタヌ・ナラヤンCEOはiPhoneでのFlashのサポートについて、次のように語っている。「技術的に難しい課題であり、だからこそ当社とAppleは協力している。今度はわれわれの番だ。提供する責任はわれわれにある」
ITライターのジョン・グルーバー氏が自身のブログで述べているように、「協力」というのはどうとでも取れるあいまいな表現だ。AppleInsiderやTUAW(The Unofficial Apple Weblog)など、Apple関連の情報サイトはこの発言をどうやら額面通りに受け止ったようだ。だが、わたしは違う。iPhoneでFlashをサポートするのは「技術的に難しい課題」などではない。わたしに言わせれば、このサポートを難しくしているのはAppleだ。
昨年9月末から10月初めにかけて、「AdobeがFlashをiPhoneに対応させた」との誤報が多数のブログやニュースサイトに掲載されたが、これは9月末に開催されたFlash on the Beach(FOTB)カンファレンスでの、Adobeのエンジニアリング担当ディレクター、ポール・ベツレム氏の発言を受けてのものだった。Adobeのエバンジェリスト、セルジュ・イエスパー氏の引用によると、その際のベツレム氏の発言は以下のとおり。
AdobeはFlash PlayerをiPhoneに対応させる。既に開発作業もスタートしている。ただし、今はまだそれ以上の詳細は発表できない。いずれにせよ、Flashのフル機能をiPhoneに対応させるためには、SDKやエミュレーション環境や現行のライセンスでできる範囲を超えてAppleと協力する必要がある。iPhoneでFlashを利用できるようになれば、AppleとAdobe合わせて数百万人の顧客に大きなメリットがもたらされるだろう。われわれはそのためにAppleと協力することを望んでいる。
確かに当時のFlashはまだiPhoneに対応できておらず、Appleとの協業なしでは、本当に行き詰っていたのだろう。そして今回、AppleとAdobeが協力しているのだとナラヤン氏は言う。でも、本当に? わたしが同氏の発言から読み取ったのは、そういうことではない。なぜなら、わたしは「Appleは本当はiPhoneでFlashをサポートしたがっていない」と確信しているからだ。
昨年10月の記事でも説明したが、iPhoneでFlashをサポートするとなればAppleにとっては幾つか不都合が生じるのだ。AppleはiPhoneとiPodにより、アプリケーション販売サイトApp Storeを次世代のコンピューティングプラットフォームとすることを目指している。一方、Flashは既にそれ自体が開発プラットフォームであり、App Storeのライバルになりかねない。iPhoneでFlashを自由に動作させられるということは、開発者にとっては新たにアプリケーションの開発プラットフォームを与えられたということだ。そうなれば、AppleはモバイルプラットフォームとしてのiPhoneやiPod touchに対する支配力を失うことになるだろう。
App Storeアプリケーションは今、どのくらいあるのだろう? 1万5000種類以上? それなのに、なぜFlashだけが「技術的に難しい課題」になってしまうのだろう?
以上を踏まえて、最も筋が通る説明は、iPhoneでFlashをサポートするのが「技術的に難しい課題」であるのは、開発者にApp Storeに代わるプラットフォームを提供することをAppleが望んでいないからだ、というものだ。ナラヤン氏によると、「今度はわれわれの番だ。提供する責任はわれわれにある」とのことだ。何を提供する責任? きっと、コンテンツは再生できるが、開発プラットフォームとしてのフル機能は備えていない、iPhone向けのFlash Liteだろう。わたしはそう思う。
もちろん、はっきりとは分からない。AdobeとAppleの交渉の内容を詳しく知っているわけではないのだから。むしろ、皆さんにお聞きしたい。ほかにもっと筋の通る説明があるだろうか? コメント欄かメールでぜひご意見をお聞かせ願いたい。
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