作業記録を有効に活用するには?【解決編】シゴトハック研究所

仕事が立て込んでくると、「今この瞬間に何をすればいいのか」という判断が難しくなってきます。タスクリストを作り、さらにときたま作業記録を振り返ることで、何が自分にとっての「現実ワーク」なのか確認するようにしましょう。

» 2007年03月23日 11時43分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

 作業記録を有効に活用するには?

 コツ:自分にとっての「現実ワーク」を知る


 問題編では、「作業記録を振り返る」ことが話題に上がっていましたが、この振り返りから得られることはたくさんあります。特に「自分では意識していなかったこと」あるいは「意識できていなかったこと」が露わになることは、振り返りのメリットの1つです。

 例えば、いつも何となく先送りしてしまいたくなるような、苦手なタスクがあったとします。これについて、作業記録を振り返ることによって、

  • 時間が足りないからなのか
  • やり方がよく分からないからなのか

 といった質問が浮かび、「なぜ苦手なのか」を考えるモードに入ることができます。浮かんだ質問について、その答えを求めることで、「どうすれば苦手を克服できるか?」という新たな質問が生まれ、考えを接いでいくことができるのです。

 何となく「苦手だな……」と思っていても、それを解決するための行動を起こさなければ、いつまでも苦手なままということになってしまいます。

 時間が足りないから、という理由であれば、段取りの段階でそのタスクに必要十分な時間を割り当てるようにすればいいですし、やり方がよく分からないのであれば、詳しそうな人に質問するなど、振り返ることによって具体的な行動を導き出すことができるわけです。

 記憶を頼りに思い出しながらでも振り返ることはできますが、記録に沿って自問しながらの方がより集中できるでしょう。

タスクリストに書かれているから、やる

 1日にすべき仕事が1つだけしかなければ、タスクリストは不要でしょう。タスクリストが必要になるのは、覚えていられないくらいの大量のタスクを忘れないようにするためだと言えます。さらに、タスクリストがあれば、そこに書かれていることさえやり終えることができれば、その日の仕事が終わったと判断することができます。「まだほかにもやることがあったような気がする」というのでは、スッキリとその日を終えることができません。

 また、タスクリストは仕事の段取りを具現化したものですから、どのように仕事を進めるかを記した「地図」としての役割を担います。慣れ親しんだルートであれば、地図は不要かも知れませんが、仕事の場合は道なき道を進む場合がほとんどですから、地図がなければ、すぐに自分がどこにいるかもわからなくなってしまいます。

 例えば、以下のようなシチュエーションを想像してみてください。

 あなたは朝出社するとすぐにメールチェックをし始め、届いたメールに自分の仕事に役立ちそうなWebサイトが紹介されているのを見つます。そのサイトには、動画による説明や数ページにわたる詳細な説明があり、すべてを読んで理解し、さらには実際に自分の仕事に採り入れる、というところまで終えるのに少なくとも1時間はかかりそうです。それでも、「仕事に役立つのだから」ということで、この作業に取りかかり、気がついたら昼休み。そこでふと、実は朝一番に仕上げなければならない仕事があったことに気づき、昼休み返上で慌てて取りかかる……。


 これほど極端なことは実際にはほとんどないとは思いますが、仕事が立て込んでくると、「今この瞬間に何をすればいいのか」という判断が難しくなる場合があります。どれも今すぐやらなければならないように思えてきて、一刻の猶予もないという状況です。それにも関わらず、メールが届けば真っ先にチェックして、さらには返信を書き始めたりもします。状況はますます悪化して、人によっては気分が悪くなるということもあるかもしれません。

 このように、“仕事砂漠”には道しるべとなるような目印がほとんどなく、代わりに、進むべき方向を惑わす要素に満ちています。そんな中で、正しい道を進むためには、「地図」の役割を持つタスクリストが必要になります。砂漠の真ん中にいても、現在地が把握できていれば、目的地に近づいているのか遠ざかっているのか、そしてあとどれぐらいの時間がかかるのかを知ることができます。言い換えれば、「地図」に書かれているからこそ、自信を持って進むことができるわけです。

 とは言え、「地図」の記述があいまいだったり、間違っていたりすれば、道を誤りかねません。それゆえ、「地図」であるタスクリストには、「できればやりたい」というタスクは排除しておく必要があります。

自分にとっての「現実ワーク」を知る

 「できればやりたい」というタスクは、その性格上あいまいな記述になりがちです。何をどうするかが具体的に分かっていれば、すぐに手をつけることができますが、そうでなければ一度どのように進めるかを改めて考える必要が出てきます。つまり、「非現実ワーク」になってしまうのです

 理想的なタスクリストは、すぐに取りかかることができるタスク、すなわち「現実ワーク」ばかりで構成されているものでしょう(「非現実ワーク」と「現実ワーク」については、2007年2月の記事を参照)。

 とは言え、どんなタスクが「現実ワーク」となるのかは、人によって異なります。例えば、「報告書作成」という名前のタスクが書いてあれば、それで何をすべきかが分かる人もいれば、より具体的なタスクに分けておかなければ「非現実ワーク」になってしまうという人もいるでしょう。

 作業記録を振り返ってわかることは、段取りの段階で「現実ワーク」と思っていたことが実は「非現実ワーク」だった、という「落差」です。これがわかれば、より実現可能なタスクリストが作れるようになります。

 タスクリストをドミノ倒しにたとえるなら、倒れにくいドミノを予め見極めておき、それがうまく倒れるように小さく分割したり、適切な間隔を空けるなどの調整をすることになるでしょう。

 作業記録を振り返ることは、迷わず進むための信頼の置けるタスクリストを作るため、と言えるわけです。

筆者:大橋悦夫

仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『「手帳ブログ」のススメ』がある。


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