「どうしても自信が持てない」「課題だらけですぐパニック」――情けない自分にさよならするには?なぜ陥る? 「うつ」のメカニズム(3/3 ページ)

» 2008年09月04日 11時20分 公開
[平本あきお(構成:房野麻子),ITmedia]
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親になる誰もがスキル不足、だから――

 この典型的なケースは子育てです。

 子育てで悩むことに関しては、ほとんど皆、スキル不足が要因です。昔だったら、おばあちゃんや近所の人が助言してくれました。ところが今は核家族化が進み、おばあちゃんは田舎にいるし、隣の人との付き合いはないし、自分も働いていている。そうすると、どんな風に子供を育てていいか分からない。子育てのスキル不足です。

 このままだったらどうしようと過敏になったり、こうしたら子供がこうなったという過去の事例に影響されたり、そもそも別の自分は子供が欲しかったのか、生んだのは間違いだったんじゃないかと混乱したりと、派生する場合があります。

 こういう人の場合は、子育てセミナーや相談に行ったほうがいいです。そこで子供は夜泣くものですよとか、こんな湿疹が出ても大丈夫ですよ、と言われるだけで、「あ、そうなんだ」とラクになることがあります。

時に目下の人に頭を下げ、時に専門分野の学習をし、スキル習得の努力を

 スキルがない場合は、必要なスキルを身につけるための具体的な方法を取ってみてください。

 先ほどの男性は、女性と気楽に会話を続けられるようなスキルを実際に身に付けました。経験のない分野だったら、時には下の人に頭を下げて教えてもらうことが必要かもしれません。それを学ぼうという姿勢でもって具体的な行動を取り始めた地点で、スキルはまだ身に付いていないにしても精神的に落ち着いて、余裕がある状態で対応できるようになります。

 例えば、今まで内勤だったのに、いきなり現場の人たちを指導しなくてはならなくなったら、おそらくどうやって指導していいか分かりませんね。すると、だんだん憂うつになります。その時は覚悟を決めて、現場の人たちに教えてもらおうという姿勢も必要になります。それだけで落ち着いてくることがあります。

 特殊な能力を必要とさせるものに関しては、その分野に関する学習に早速取り掛かってみてください。

 例えば、カンボジアに転勤だと言われて不安になった時。カンボジア自体が不安な要素になっている時は、カンボジアという国がどういう国なのかを調べて、思ったよりも大丈夫だとか、いや、想像以上に大変そうな国だと確認してみる。大変そうな国だと思ったら、3年間どうやって過ごすかを計画すると、1段クリアでラクになるはずです。

症状は内なる声の代弁者、しっかり「声」を聞けば原因が分かる

 場合によっては、精神症状を出すことで、「カンボジアに行きたくない」という気持ちを表しているのかもしれません。あるいは、かつて別の国に行ってつらい思いをしたというトラウマを背負っているのかもしれません。トラウマを背負っているけれど、その時とは違うと思えると、「癖」ではなくなります。

 また、自分の家族や周りの人に与える影響を整理することで「混乱」を回避できます。単に、カンボジアで暮らす際の言語に対して不安があるのであれば、公用語がなんなのか、英語で通用するのか、通用しないとしたら、最低限必要な言葉を学び始めるだけで、完璧にマスターできないにしても、少しラクになるかもしれません。

最後に――解決できない時は、速やかに専門家に相談を

 うつ・不安のいかなる人も、以上の5パターンのどれかに完全に分類されるわけではありません。それぞれの混合だったりします。ただ、特に顕著になるものがあると思いますので、まずパターンを特定してみてください。気付くだけでずいぶんラクになるはずです。

 そして、それぞれの対処法をやってみてください。それで解決できない場合は、やはり専門家に相談する必要があります。


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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本あきお(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は、『すぐやる! すぐやめる!技術 ― 「先延ばし」と「プチ挫折」を100%撃退するメンタルトレーニング』。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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