書籍を「裁断→スキャン」してデジタルデータ化する行為を、俗に「自炊」と呼ぶ。この自炊ノウハウや細かいTipsを紹介する短期連載。第3回となる今回は、裁断した本をドキュメントスキャナで取り込む工程を、動画と写真を交えて説明しよう。
前回は、裁断機を用いて本を裁断し、ドキュメントスキャナで取り込めるよう加工する工程を紹介した。今回は実際にドキュメントスキャナを用いてスキャンし、デジタルデータ化する工程をご紹介しよう。
前回も触れたが、本の取り込みには、フラットベッドスキャナではなくドキュメントスキャナを用いる。「ScanSnap」シリーズのようなドキュメントスキャナを初めて使うとまず驚くのが、表面と裏面を同時に読み取ってくれることだ。ハードウェアレビューでは当然の機能として説明が省かれていることも多いが、フラットベッドスキャナの感覚しかないと、カルチャーショックすら受ける場面である。また、原稿をまとめてセットできるので何枚もの原稿を手で交換することなく連続して取り込めるのも、ドキュメントスキャナならではの特徴だ。
市販しているドキュメントスキャナでは、普及サイズの製品と、持ち運びを前提にしたコンパクトサイズの製品、大きく分けて2つのシリーズをラインアップしていることが多い。例えばPFUのドキュメントスキャナ「ScanSnap」シリーズであれば、スタンダードサイズの「S1500」と、コンパクトサイズの「S1300」をラインアップしている。効率は別にして、紙を取り込んでデジタルデータ化するという点においては、どちらの製品もまったく問題なく利用できる。
だが、今回のように大量の紙をなるべく短時間でスピーディに取り込むのであれば、機種は事実上S1500一択と言ってしまっていいだろう。というのも、フィーダにセットできる枚数が、S1300の10枚に対してS1500は50枚と、極端に違うのだ。
ちなみにこれはメーカーの公称値であり、今回の連載でサンプルとして使用している本のページの厚みであれば、S1500は約50枚を同時にセットできるのに対し、S1300は約16枚しかセットできない。つまり1冊の本をまるごとスキャンするのに、本が200ページ(=100枚)として、S1500であれば2回に分けてスキャンすれば完了するのに対し、S1300だと7回に分けなくてはいけないのだ。
本をスキャンする時は、つきっきりでいる必要はなく、いったんセットしてスイッチを押したら別の作業をしていて構わない。つまるところ、1枚あたりの読み取りスピードはそれほど重要ではなく、1回にセットできる枚数の方が重要性が高い。その点からも、50枚をセットできるS1500のほうが、本の自炊に向いた製品であると言える。
しかも読み取り速度はS1500が毎分20枚であるのに対し、S1300は毎分4枚と、S1500のほうが5倍も速いのだ(スーパーファインモードでの値)。また、S1300にはない超音波センサーを搭載しており、紙の二重送りを検知しやすいのもメリットだ。筐体がコンパクトなS1300は持ち運びには便利ではあるものの、書籍化にあたっての効率を最優先に考えるのであれば、同時にセットできる枚数が多いS1500をおすすめする。
さて、実際のスキャンについてだが、手順そのものは詳細に解説すべきことはない。すなわち
という4ステップで済むからだ。難しいことは何一つない。せいぜい紙をセットする段階で何分割するか悩むくらいだ。200ページの本を100ページ(50枚)ずつセットするのか、それとも余裕を見て70ページ、70ページ、60ページの3回に分けてセットするのかといった程度である。
もっとも、短い作業時間でなるべく美しく取り込むためには、それなりの段取りが必要になる。また、どのカラーモードで取り込むのが妥当かといった問題もあるし、カバーと本文を別々に取り込んだあとに1つのファイルに結合させる方法も知っておく必要がある。順に説明しよう。なお、以下の説明では上で登場したPFUの「ScanSnap S1500」を基準とすることをお断りしておく。
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