本を裁断してスキャナで取り込んでデジタルデータ化する、いわゆる「自炊」。今回はデバイス別のTips紹介第2弾として、iPadの読書ビュワーアプリ編をお届けする。
本を裁断してスキャナで取り込んでデジタルデータ化する、いわゆる「自炊」についてのテクニックをお伝えする短期連載。デバイス別のTips紹介第2弾として、今回はiPad編をお届けする。
本を裁断してスキャナで取り込むという行為そのものは、フラットベッドスキャナがコンシューマレベルで入手できる値段になった15年近く前から存在していた。筆者が当時使っていたスキャナはSCSI接続で、カラー画像を1枚スキャンするのに読み取り部がCMYK分の計4回往復するといったシロモノだったが、それでも手持ちの雑誌の切り抜きなどをコツコツをデジタルデータ化していたものだ。本1冊をまるごとデータ化する発想が当時なかったのは、取り込むスキャナ側の問題よりもむしろ、読書に適したポータブルデバイスが存在しなかったからだろう。
これら本のデジタル化が「自炊」という表現を伴って一般的に語られ始めたのは、2010年春のiPadの登場がきっかけだ。その間、ノートPCやタブレット、さらに松下電器産業(当時)の「Words Gear」に至るまで、自炊したデータを読むためのデバイスはいくつも存在したが、画面のサイズと操作性、そして電池の持ち時間がきちんと実用レベルに達していた単独のデバイスは、iPadが初めてだったと言ってよい。
前回紹介したKindleの場合、画面がモノクロで、かつサイズの制約があり、閲覧に向くのは小説や新書といった小型本に事実上限られていた。大型版のKindle DXにしても、単行本サイズまでは問題なくとも、雑誌サイズの閲覧になると、少々難があると言わざるを得なかった。
iPadは、9.7インチという画面サイズはKindle DXと変わらないものの、ピンチインやピンチアウトといったマルチタッチ操作によって拡大縮小がすばやく行えるため、雑誌サイズのデータであっても比較的ストレスのない閲覧が行える。ズーム機能が実用的でないKindleとの大きな差と言えるだろう。日本語表示もサポートしているので、ファイル名の文字化けも起こらない。
またIPS液晶ということもあり、カラーデータも美しく表示できる。バックライトを装備するので暗い場所での閲覧も問題ない。小説や新書の見開き表示から、雑誌データの閲覧まで、幅広くカバーできる端末であると言えるだろう。ストレージの容量も16〜64Gバイトと(書籍データだけを保存するものではないにせよ)かなり多い。
その一方、デバイスそのものがかなり重く、片手で長時間持つのが事実上不可能であることは、読書のスタイルに大きな影響を及ぼす。またE Ink製電子ペーパーを採用したKindleなどと違い、液晶を使ったiPadは目が疲れやすく、長時間の読書には向かないとの指摘もある。
と、このようなハードウェア依存の制約はあるものの、読書端末としてのiPadの評価を大きく左右するのは、むしろ「どの読書ビュワーアプリを使うか」だろう。そこで今回は、現在入手可能な自炊データ閲覧向けの読書ビュワーアプリを紹介しつつ、どのような点を重視して選べばよいのかを見ていきたい。
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