本の裁断やデータ化などについては前回までで触れた。今回以降はKindleやiPadといった電子書籍を読む側の端末における特性やTipsに言及する。
前回までの連載で、本の裁断からスキャン〜後処理といった「自炊」のひととおりの流れを見てきた。今回はやや趣向を変え、これら自炊データを読むためのデバイスについて、細かい特性やTipsについて見ていこう。
今回取り上げるのはAmazon Kindleの国際版、俗に言う「Kindle 2」と、その大型版に当たる「Kindle DX」だ。一般的にKindleとは「Kindle for PC」や「Kindle for iPhone」などのソフトウェアを含めたソリューション全般を指すが、ここで扱うのはE Ink製電子ペーパーを採用したハードウェアとしての「Kindle」である。
iPad以来、市販の書籍を「自炊」したデータを閲覧する端末としてはKindleよりもiPadに注目が集まっているが、日本における今日の自炊ブームを作り出したきっかけの一端は、間違いなくKindleにあるといっていいだろう。2010年8月下旬には日本語表示に対応した新モデルが登場することもあり、国内でも今後ますます存在感を増していくはずだ。
まずはざっとKindleの特徴をおさらいしておこう。なお2010年8月上旬現在の最新ファームウェア「2.5.3」を適用していることを前提に説明する。ファームに手を加えるなどして日本語を表示させる方法もあるが、今回はファームに手を加えず、デフォルトの状態で使用する。
さて、Kindleの特徴を個条書きにすると、以下の5つということになるだろう。
現在英語圏でKindleが支持されている最大の要因は、上記の(1)だろう。3G回線を経由してKindle Storeに直接接続し、六十数万冊と言われる取り扱い書籍の中から好きな本を選んで購入ボタンを押せば、どこにいてもすぐに書籍をダウンロードして読み始めることができる。しかも購入後に3G回線のセットアップをしなくても、最初からつながっているというおまけつきだ。こうした利便性や豊富なタイトル数に加え、紙の本に比べて価格も安いとなれば、これはもう支持されないほうがおかしい。
ところが残念ながら、Kindleは日本語の表示に対応しておらず、Kindle Storeで取り扱われている書籍にも日本語コンテンツがほとんどないため、この(1)のメリットを国内でフルに享受することは難しい。8月下旬に発売になる新型Kindleは日本語表示に対応することを予告しているが、Kindle Storeのインタフェースやコンテンツがどうなるかは、いまのところ不明だ。青空文庫のテキストをKindle で読めるPDFに変換してくれる「青空キンドル」といったサービスもあるが、日本語の新刊書籍をオンラインで購入し、即ダウンロードして読むというのは、現状のKindleでは不可能だ。
というわけで日本国内では実力の半分も出せない(?)Kindleではあるが、PDFビュワーとしては非常に魅力的な存在だ。なにせ重さは289グラムとiPad(680グラム)の半分以下で、充電なしで1週間駆動する。特にドキュメントスキャナで取り込んだPDFデータであれば、フォントが画像になっているため、日本語フォントへの対応とは関係なく表示できるわけだ。持ち歩いて外出先でPDFデータを閲覧するにはぴったりである。
また、液晶ではなくE Ink製の電子ペーパーを採用していることも大きなポイントである。いわばプラスチックの板にプリントされた文字を眺めているようなもので、長時間見ていても液晶にありがちな目の疲れがない点は、読書用途としては最適であると言える。
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