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» 2011年04月18日 17時10分 公開

余命3カ月、あなたは何をどんな優先順位で実行しますか?夫婦で始める“エクストリームコミュニケーション”(1/3 ページ)

いよいよ最後のテーマである「死」を迎えます。改めて言うまでもないですが、誰も死の運命から逃れることはできません。どうせ死から逃げも隠れもできないのなら、いっそ開き直って真正面から話し合ってみてはいかがでしょうか。

[シックス・アパート 中山順司,Business Media 誠]

 夫婦間のコミュニケーションは難しいもの。付き合いも長いと、話題もなくなります。年中一緒に暮らしていれば、会話のネタも尽きてきますよね。そこで、ごくごく普通の夫である私が試行錯誤の上に発見した、ちょっと変わった夫婦間の「エクストリームコミュニケーション」をご紹介しています。今回のエクストリームコミュニケーションは「死」(前編)です。

 4カ月にわたって続いてきた本連載、いよいよ最後のテーマである「死」になりました。ひとつひとつの設問がこれまでのテーマより遥かに重く、1つ話し終えるのに普段の3倍の時間を要しました。死のテーマは会話のボリュームも多かったので、はしょらずにすべての会話をお届けしようと思います。

 ちなみに各テーマの数字は連載記事共通の通し番号。これまでのエクストリームコミュニケーションも参考にしてみてください。

テーマ122:余命3カ月、何をする?

 以前、余命は互いにオープンに伝えあおうって話をしたけれど、実際に余命が3カ月と宣告されたら、残された時間をどう使う?

 しょっぱなから重すぎるテーマね……。そうだなあ、私は現実的かしら。具体的には、残った家族が私抜きでも支障なく生活できるよう、その準備のために3カ月を使う。

 家事や炊事の方法を伝授するとか?

 そう。わが家を切り盛りするために知っておくべきすべてをね。要は、あなたが子供を抱えて途方にくれないようにしておくってことよ。

 ありがとう。

 子供にはメッセージを残すつもり。「学業」「進学」「仕事」「結婚」「家の購入」の5つの分野ごとに、メッセージやアドバイスを手書きでノートに書き留めるから、必要に応じて読み返してほしい。

 レターじゃなくて、ノートなんだね。紙に直筆だと紛失や劣化の恐れがあるから、スキャンして適当なオンラインストレージにでも保管しておこうか。

 そうね。そのへんは任せます。

 ほかには? 準備だけで3カ月はかからないから、自分のためにも時間を使えば?

 自分のことは、あまり興味ない。

 どうして? 旅行とか、両親への挨拶とか、いろいろあるでしょう?

 両親には会いに行く気はない。時間がもったいないし、旅費だって馬鹿にならないから。旅行も行きたくない。死んでしまう私のためにお金を使うんじゃなく、あなたや子供のために活用してくれればいい。

 いや、ちょっと待ってよ。3カ月以内に確実に死ぬって状況だよ? 友人や知人に連絡したり、最後の思い出作りをしたいって気はないの? 何もしないなんて、座して死を待つみたいで、どう考えても異常に思えるんだけど。

 気持ちだけありがたく受け取っておくよ。ただ、死ぬからって、何か特別なことをしたり、お金を浪費するようなマネはしたくないだけなの。同情もされたくないから、友人や知人に電話して死ぬことを伝えたりもしない。

 そうなんだ……。僕なら、自分の家族・親戚はもとより、キミの両親やあちらの親戚にも挨拶に行くつもり。ただ、湿っぽくなるのイヤだから、明るい行脚にする。「はるばる来たんだから、うまいもん奢ってくださいよ」って散々ごちそうになるよ。

 そのときは、私も行脚につきあうよ。

 余命が診断されると、死亡前に生命保険金がおりるリビングニーズ特約ってあるじゃない? それを使ってどこか行きたくない? 例えば海外旅行とか。

 いや、遠慮するわ。何度も言うけど、教育費や生活資金に回してちょうだい。もし、どうしても連れて行きたいっていうことなら、イタリアに1週間ほどお願いするよ。思い出に大好きなオペラ三昧したいから、つきあって。せっかくだからセリエAを観戦してもいい。インテルの長友とか見るのも悪くない。

 それだけでいいの? ほかには? 国内で行きたい場所はないの?

 うん、大丈夫。あとは普段通りの生活を淡々と過ごせれば、それでいいから。(身体が動くのであれば)エクササイズもするし、ジョギングも続けるよ。死ぬって分かっているのに、健康管理に精を出すのも変な話だけど。もちろん、家事や仕事も死ぬまで続けるよ。

 ……聞いてるこっちが辛くなってきた。あ、そうだ。ビデオレターとか作らないの? ほら、ドラマであるじゃない。ベッドの上のママが、ビデオカメラにむかって子供たちへのメッセージを話すっていうやつ。で、何年か後に成長した子供がそれを見て母に感謝するという……。

 興味ない。

 本当に!? 女性ってそういうの、好むと思ったんだけどな。僕なら、生きている姿を子供に残しておきたいって考える。

 悲しくなるからヤダ。それに、照れくさい。普段の生活をドキュメンタリー風に撮影するなら、なんとか我慢する。

 何だか、意外な発見だらけだったよ。ここぞとばかり、もっと欲望をさらけ出すのかと思っていた。

 私が特別だとは思わないよ。サバサバしたこと話したけど、死ぬのはもちろん怖いし、子供の成長を見届けられないのはものすごく悔いが残る。でも、もし余命診断されてしまったら、人間ってさほどジタバタしないような気がするんだ。なったことないから、本当のところは分からないけれど……。


 妻の達観した死生観にビックリ。覚悟ができているというか、母は強しなのか……。自分だったら、もっと取り乱したり、何かを恨んだり、メソメソしそうです。


 どこに行きたいなど、細かい部分では夫婦で相違がありましたが、最優先事項である「残された家族に迷惑をかけないよう、準備を尽くしてから死ぬ」という点では一致できました。


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