「娘は絶対、嫁にやらん!」悲しすぎる男親の遠吠え――夫婦関係、人間関係夫婦で始める“エクストリームコミュニケーション”

夫婦として一つ屋根の下で生活を始めると、一事が万事「夫婦関係」に影響してきます。夫婦関係に泣くか、笑うか。人生の悲喜劇は、この4文字の充実度が大きく左右することになります。

» 2011年03月08日 17時20分 公開
[シックス・アパート 中山順司,Business Media 誠]

 夫婦間のコミュニケーションは難しいもの。付き合いも長いと、話題もなくなります。年中一緒に暮らしていれば、会話のネタも尽きてきますよね。そこで、ごくごく普通の夫である私が試行錯誤の上に発見した、ちょっと変わった夫婦間の「エクストリームコミュニケーション」をご紹介しています。今回のエクストリームコミュニケーションは「夫婦関係・人間関係」です。

  1. 金銭感覚
  2. 教育/育児
  3. 住居/財産/資産
  4. 仕事/キャリア
  5. 習慣/くせ/生い立ち
  6. 趣味/嗜好/思考
  7. 健康/病気
  8. 家事/食生活/日常生活
  9. 夫婦/人間関係←イマココ
  10. 社会問題/政治
  11. 親/家族/親戚
  12. 道徳/倫理
  13. 老後/ライフワーク

 独身時代は自分の健康にさえ気を遣えばよかったのが、家族を持ったとたんに意識を人数分に分散させねばならなくなります。1人の不健康が家族全体に悪影響を及ぼしますので、独身時代よりもはるかに体調管理や予防活動を心がけるようになりました。

 ちなみに各テーマの数字は連載記事共通の通し番号。これまでのエクストリームコミュニケーションも参考にしてみてください。

テーマ77:子供の数、性別、順番、歳の差

 どんな人でも、その人なりの「理想の家族構成」があるはず。子供の数、性別、歳の差など、色んな要素があって、それらが複雑に組み合わさって個々人の理想像を形成するのでしょう。すでに2人の子を持つわれわれでさえ話し合ったことはなかったので、順序が逆ではありますが改めて話してみました。

 一姫二太郎がいいとか、いろいろ言い伝えっぽいのはあるじゃない? 今はずいぶん変わっているんだろうけど、キミは理想の人数や男女の希望はあったの?

 私はね、子供3人が理想だったんだ。順番は女、男、男ね。

 ほほー、そりゃ初耳だ。

 で、年齢は2〜3歳離れているのがいいな。年子(としご)だと育児が大変だからね。

 最初は女の子がいいの? 男、女、男はまずいの?

 いや、構わないよ。ただ、最初の子は自分と同性がなんとなくいい。

 じゃあ、女3人だったら「もっといい」ってことにならない?

 いや、それはヤダ。自分のことは棚に上げて言うんだけど、女3人は扱いづらいんだよ。同一の性しか選べないとしたら、全員男でいいくらい。

 そういうものなんだ。複雑な心理だね……。

 あなたはどうなの?

 3人いればにぎやかでそれも悪くないとは思うけど、オレは2人でいいかな。

 性別や年齢差は?

 年齢差は気にならないけど、バランスよく、男女1人ずつが希望。どっちが先でも構わないけど、選べるとしたら女の子が先かな。お姉ちゃんは弟の面倒をみるだろうけど、逆パターンは機能しなさそうな気がするから。

 なるほど、それは分かる気がする。男女ミックスでのケンカなら、男同士よりは穏やかになりそうな気がするしね。

 実は、オレにとっては順番とか性別より、もっと深刻な問題があるんだ。

 なに?

 娘の将来のコトなんだけど、その、なんつうか、つまり、娘がさ……年頃になれば同年代の男に告白したりされたりするよね? で、われわれの目の届かない場所でデートして……いいムードになっちゃって……手とか握って、でもって暗闇でいろいろしでかすわけなんだよ……。それを考えると、居ても立ってもいられない気分だ。

 言い方がいやらしいよ。いつかお嫁に行くってハナシでいいじゃない。

 でもさ、これは時間の問題だよ? 確実にやってくるこの未来が俺は恐ろしい。娘は、ぜったいに嫁にやらんぞ! 汚れた男どもの手から守るんだ。

 はいはい。でも、私も娘の彼氏には絶対難癖つけるような気がするなあ。

 理想とする子供の数や順序の話をしていたのが、娘の将来、しかもまだ存在もしない彼氏(もしくはフィアンセ)に怒りをぶつけ始める始末。滑稽(こっけい)だと笑うことはカンタンですが、娘を持つ親御さんならきっと共感してもらえるのではないでしょうか。

 いくら「娘を他人の男に渡したくない」と願ったところで、いつかは親から離れていくのです。まだ遠い先のことなので、現実感は薄いですが……。娘を失う辛さはたぶん男親のほうが強いでしょう。夫の動揺っぷりをみてそう確信しました


テーマ78:死別した場合の再婚について

 夫婦は生き別れるか、死に別れるかの2つに1つ。死に別れた場合、再婚するかどうかをぶっちゃけてみました。

 最も起きてほしくないのは、死んだ方が天国から「再婚してくれればいいのに……」と願っているのに、残った方が再婚することに罪悪感を感じて、そのまま一生独身を貫くパターン。「そもそも再婚できるのか?」という現実問題はさておき、自分が先に逝ってしまったと想像して、天国で何を考えるのかを想像してみました。

 天国で何を想うか。天国から家族に送りたい言葉は何か。死をおとぎ話みたく置き換えることで、サバサバと話し合うことができるものです。結論は、生きていようが、死んでしまおうが、結局考えてしまうのは家族の幸せだけということでした。


テーマ79:自分の命、家族の次に大切なものは?

 真剣に考えるほど、答えが見つかりません。自宅、車、貯金といった財産はもちろん失いたくないものです。しかし、家族や命とは次元が違うというか、天秤にかけること自体が間違っているような気がしてきました。命は「代えのきかない唯一無二なモノ」ですが、それ以外のすべてのモノや資産は「いくらでも代えのきくもの」。そう実感したとたん、モノに執着する気持ちが薄れてきました。

 命と家族があれば幸せだとか、まるで私たちが悟りを開いた聖人君子のような書き方をしていますが、まだまだ煩悩(ぼんのう)にさいなまされる凡人であります。詳しくは書きませんが、欲しいものはいっぱいありますからね(笑)。


テーマ80:自分のとっての幸せって何?

 大きすぎるテーマなので、しばしボケーっと考えました。結局は家族が仲良く過ごせて、楽しく働けることに落ち着きます。ただ、その2つを実現するのはカンタンではないですが。以前「宝くじで1億円当たったら」というテーマでも話しましたが、今回は一生かかっても使いきれないほどの大金(100億円とか)を得た架空の話をしてみました。額が非現実的すぎたせいか、びっくりするほど盛り上がらなかったです。

 「100億円あったら、ユニクロを卒業して、GAPかエディー・バウアーにランクアップしよう。でも、よく考えたら洋服を買いに行くのがメンドーだから、着慣れたユニクロをローテーションで回せばいいや」と夫が言った時の私のトホホ感といったら……。


テーマ81:伴侶の臓器を提供するか

 夫婦の片方が脳死したとして、臓器を提供するかどうかを話しました。まず双方に提供の意思があるのか(ドナーカードを所持しているか)を確認。次いで、残された遺族として提供できるかどうかもざっくばらんに議論しました。

 もし、死んだ方がドナーカードを持っていて(つまり、提供の意思がある)、しかし遺族が提供を拒んだ場合、死体はどういう扱いを受けるのでしょう? 死者と遺族、どちらの意思が尊重されるのか答えが見つかりませんでした。まさか遺族と病院で死体を引っ張り合うことはないと思いまずが、疑問を解消できませんでした。

 赤の他人に提供するケースと、身内(親戚や義理の父母含む)に提供するケースとでは、意思に若干のブレがあることが判明。子供の時は悲しい話し合いになりましたが、夫婦同士の臓器提供は、わりと冷静に話せましたよ。


テーマ82:夫婦ゲンカのNGワードを決めておく

 どんな夫婦ゲンカであっても「それを言っちゃあ、おしまいだ」という、許されないセリフがあります。その一線を越えてしまうと、関係の修復にとてつもないエネルギーや時間を要してしまうので、要注意。ルールは平等に適用し、違反行為があれば指摘しあうと決めておけば、どんな派手なケンカをしても最後の一線は越えずにすみます。

 ちなみにわが家には「2つのルール」があります。

  1. 互いの親兄弟の悪口を言わない(火に油を注ぐとはまさにこのこと)
  2. 関係ないテーマを持ち出さない(無関係の過去の件をかぶせて責めるのは卑怯なので「1ケンカ、1テーマ」を死守)

 たまにルールを破ってしまうのですが、破ったとたんにすかさずイエローカード(警告)。ケンカがやりにくくてしようがありません。ですが、それに助けられている部分もあるので、まあ結果オーライなのでしょう。


テーマ83:心に残っている書籍、映画、アニメ、マンガ

 重いテーマが続いたのでひと休み。マイベストの映画や書籍を挙げあうだけで、よい息抜きになります。なぜ心に残っているかの理由も添えてみましょう。涙腺が緩むスイッチの場所が垣間見えて、なかなかに興味深かったり、妙に恥ずかしかったり。

 男と女で感動するポイントってけっこう異なるみたいで、首をかしげることしきり。攻殻機動隊って面白いけど、泣けるシーンあったっけ……? タチコマが身代わりで死ぬシーンと素子が飛行機に乗り込むタラップで狙撃されたシーンねえ……。


テーマ84:今も恨んでいる人、許せない人

 話しやすいテーマではないですが、過去の怒りや恨みとその理由を話すことで、どういったことで怒りのスイッチが入るかのパターンが分かります。話してみると。本人すら自覚できていないパターンというかメカニズムの輪郭が現れてきます。

  途中で「わが子が殺人鬼に残酷に殺されたとして、犯人にどう復讐するか」という話に脱線しましたが、あまりにえげつない内容になりかけたので、さすがに中止しました。

 お互い、怒りのエネルギーが持続しないタイプだと分かりました。いつまでも怒りの炎を燃やし続けられる人は、ある意味すごいなあと思いますね……。


テーマ85:死によって失った大切な人

 心の古傷をほじくり返すような行為なので、無理に話す必要はないかと思いますが、長い付き合いで培った信頼関係があれば試してみてもいいかと思います。私たちも声のトーンが下がり、ボソボソとつぶやくような話し方になりました。死そのものにフォーカスするのが辛すぎる場合、生前の思い出話をしたりして、その人がいかに大切だったのかを伝えてみるのでもいいかもしれないです。こういう話の途中に見せる、ふとした表情にその人の素顔が表れて、ハッとさせられたりしました。

 このテーマがなければ、まず思い出すことはなかったであろう記憶を呼び戻してしまいました。今はもう癒えた傷なので、なんとか話せましたが。


テーマ86:好きな言葉や座右の銘

 著名人や偉人の言葉で好きなものを互いに挙げてみると、相手がどんなことに重きを置くタイプなのか、生きるうえでの価値観がストレートに伝わってきます。好きな言葉が見当たらなければ、心に残っているエピソードとか、印象に残ったスピーチの一節でもいいので、範囲を広げてみてはどうでしょう。なにもないことはないと思います。

 私はスティーブ・ジョブズのスタンフォード大学の卒業式でのスピーチが好きなので、それを知らなかった妻にGoogle Videoの動画を見せて翻訳、解説してあげたら感謝してくれました。

 15分もある動画であることを感じさせない、すごく力強いメッセージでした。アップル製品は使ったことはないですが、これを聞くと使ってみたくなりますね……。



No. 今回のテーマ
77 子供の数、性別、順番、歳の差
78 死別した場合の再婚について
79 自分の命、家族の次に大切なものは?
80 自分のとっての幸せって何?
81 伴侶の臓器を提供するか
82 夫婦ゲンカのNGワードを決めておく
83 心に残っている書籍、映画、アニメ、マンガ
84 今も恨んでいる人、許せない人
85 死によって失った大切な人
86 好きな言葉や座右の銘

 以上、夫婦関係・人間関係についてでした。

 今回のテーマがすべて“夫婦関係と人間関係“に当てはまるかどうか、やや微妙なところかとは思うのですが、いかがでしたでしょうか。今回のテーマで面白い発見だったのは、「子供の数、性別、順番、歳の差」でした。男親、女親それぞれで期待することや思うところは少しずつズレがありました。なお、娘に対する執着心は、父である私の方が断然強いようです。

 話しておいて意外によかったのは、「死別した場合の再婚」について。縁起でもない話なのですが、そんなタブーはとっくに気にしないコミュニケーションを重ねてきているので、なんとも思わなくなりました。

 このようにタブーを超えて正直な話し合いができると、今後どんなテーマが来ても平気でいられそうです。


スキナヒト製作所からのお知らせ

 筆者の中山順司さんが運営している「スキナヒト製作所」。フツーの男女のフツーの出会いをプロデュースすることに特化した、世界一マジメな恋愛インキュベーション・プロジェクトです。ただいまβテスト中につき、利用は完全無料。

このたび、スキナヒト製作所おひとり目となる独身男性をご紹介することになりました(パチパチ)。IT系プログラマ(26歳)の痩身な方です。今風に言うなら、草食系男子でしょうか。

 「この人に興味あるかも」と思った方、ぜひご連絡を! 「知り合いのあの娘に教えてあげよう」などなど、ぜひTwitterでつぶやいてみてください。

著者紹介:中山順司(なかやま・じゅんじ)

 シックス・アパート株式会社 / スキナヒト製作所 所長。1971年生まれ。Covenant College(米国)卒業後、携帯電話キャリアでマーケティングと営業に携わり、2000年にネット業界に転身。旅行予約サイト(現楽天トラベル)で観光旅行コンテンツビジネスを立ち上げ、その後始めた個人ブログがキッカケで、ブログソフトウェアベンダーのシックス・アパートに(現職)。

 2010年12月、フツーの男女のフツーの出会いをプロデュースすることに特化した、世界一マジメな恋愛インキュベーション・プロジェクト「スキナヒト製作所(β)」を設立。


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