連載
» 2011年04月01日 12時00分 公開

デスノートの正しい使い方――道徳と倫理夫婦で始める“エクストリームコミュニケーション”

少なからず信用している配偶者の道徳意識、倫理意識が、あまりにも自分とかけ離れていると分かったらショック。ですが、であるからこそ、心を鬼にして妻と向かい合ってみたのでした。

[シックス・アパート 中山順司,Business Media 誠]

 夫婦間のコミュニケーションは難しいもの。付き合いも長いと、話題もなくなります。年中一緒に暮らしていれば、会話のネタも尽きてきますよね。そこで、ごくごく普通の夫である私が試行錯誤の上に発見した、ちょっと変わった夫婦間の「エクストリームコミュニケーション」をご紹介しています。今回のエクストリームコミュニケーションは「道徳と倫理」です。


 今回は「道徳と倫理」です。良心やモラルの意識は、法律的に正しい知識があるかどうかといったこととはまったく違った次元の話になります。少なからず信用している配偶者の道徳・倫理意識が、自分とかけ離れていると分かったらショックですが、心を鬼にして妻と向き合ってみることにしました。

 ちなみに各テーマの数字は連載記事共通の通し番号。これまでのエクストリームコミュニケーションも参考にしてみてください。

テーマ104:もしもデスノートを手に入れたら

 人気漫画の『デスノート』。あの漫画を読んだ人なら「自分だったら、あのノートをどう使うだろう?」と妄想したことが一度はあるはず。ただ、殺人ツールの使い道を世間でおおっぴらに話すわけにもいかないので、ほとんどの人は空想にとどめるのではないでしょうか。

 誰にも話を聞かれないのをいいことに、妻と遠慮なく意見をぶつけ合ったのですが、大きな食い違いが発見できました。

 もしもデスノートを入手したらどう使うかって? 物騒なテーマねえ。

 使う人をこれほど選ぶノートもないよね。キミならどう使う?

 ……怖くて使えないよ。ビビって身動きできなくなる。

 触っただけじゃ何も起きないよ。

 それでも怖い。リューク(※『デスノート』の登場キャラクター。死神)が見えてしまうのすらヤダ。たぶん燃やすと思う。

 ええっ、燃やしたら元には戻せないよ? もうちょっと冷静に検討してからでも遅くないと思うけど。

 あのね、人が人を殺していいわけがないの。そんなものが人間界にあってはいけないから、私なら焼却処分するんだよ。

 でもさ、劇薬だって使い方次第で薬になる可能性はあるわけでしょ? 分かりやすい例を出すと、極悪犯罪者とか凶悪テロリストとか、世界を危機に陥れるような超危険人物とかを抹殺する用途のみに限定したら、それは有効活用とはいえないかな?

 気持ちは分かるけど、相手が誰であれ、どんな理由があれ、私は人を殺めたくないの。

 ん? それはもしかして、自分が手を下したくないってこと?

 うん。

 じゃあ、自分以外の人が、デスノートでさっき挙げたような犯罪者を抹殺していくのは抵抗がないという意味?

 いや、それとも違うんだよなあ……。私はもちろんのこと、他の誰にも殺人は犯してほしくない。つまり、誰の手にも渡ってはいけないと思うの。

 僕も当然殺人には反対だけど、だからといってせっかくのデスノートを、あっさり焼却処分してしまうのは稚拙すぎる気もするなあ。

 えー、じゃあアナタは使うの? バンバン人を殺すの?

 いや、そんなつもりはないよ。ただ、すぐに所有権を捨てたりはしないかな。だから、まずは厳重に保管する。鍵のかかる頑丈な箱に入れて、自分以外の誰にも直接触られないようにして、銀行の貸金庫に預けるかな……。使う、使わないの判断は、それからゆっくり考える。

 それって絶対安全なのかなー。銀行の人が触ってしまう可能性はない? 不安だよ。

 直接デスノートに触れないようにして預ければ、大丈夫じゃない。少なくとも、盗まれる危険性はわずかだよ。自宅で金庫っていう手もあるけど、銀行のほうが安心できるよ。

 うーん、じゃあ保管方法はそれでいいとして、具体的にどう使うつもりなのよ?

 それは僕も分からない……。やっぱり、悪人を裁いていくのがいいのかなあ。

 気軽に怖いこと言わないでよ。それやったら犯罪者よ、殺人者よ。

 でも、理論上は絶対捕まらないはず……。エル(同作の登場人物。探偵)もメロ(同じく登場人物。エルの後継者候補の1人)もニア(同じく後継者候補)もいないわけだから。

 そういう問題じゃない。たとえ捕まらなくても、バチが当たるというか、神様が許すわけないでしょ。

 それを言ったら、話が進まないよ。

 悪人を退治するなんて行為は、最初のうちだけだと思うの。いかなる聖人君子であろうと、デスノートを持ってしまったら、人間らしさとか良心を失ってしまうと思うんだ。で、いずれヨツバグループ(同作に登場する巨大企業グループ)のメンバーみたいに私利私欲のために悪用し始めると思う。あなたを含めて。

 えー、僕ってそんな悪用しそうに見える? そういえば、リュークも「デスノートを使った人間が天国に行けると思うな」って言っていたな。それを考えると、使うのをためらってしまうねえ。

 でしょ? やっぱり焼却処分しておくのが最善なのよ。

 なんかもったいない気がするんだよなあ。いい方法はないかなあ。ネットでデスノートの正しい使い方を公募すれば、画期的な活用アイデアが得られるかもしれないけれど、それをするとこっちの命が狙われるからなー。

 ……そうだ! もっと効果の軽いノートをリュークにお願いするってのは? 例えば、名前を書き込むと捻挫してしまう「ツイストノート」や、風邪をひいてしまう「コールドノート」とか、鼻血が出る「ノーズブリードノート」とか? 凶悪犯罪を犯すと、なぜか捻挫になってしまうという風潮が世界中に浸透すれば、犯罪抑止に……。

 あんまりならないだろうね(笑)

 ゴキブリ退治もできないチキンな夫が、デスノートの有効活用をマジメに考えるなんて……。ちょっと人間性を疑いそうになってしまいました。


テーマ105:死刑制度に賛成か否か

 賛否両論という4文字が、これほど当てはまるテーマもないのではないでしょうか。十人十色の考え方があるでしょうが、われわれもお互いのスタンスは知りませんでしたので、確認してみました。

 一般的には賛成(もしくは反対)という意見表明はできても、「身内や本人が直接の加害者(もしくは被害者)」となると、考えが多少揺らぎますね。このテーマを話し合うに先だって、死刑制度をテーマにした漫画『モリのアサガオ』(第1話が無料で読めます)で知識をつけておいたのですが、裁く側と裁かれる側のこと分かりすぎてしまい、結果的にさらに考えがまとまらなくなってしまいました(蛇足ですが、死刑制度を考えるにあたり『モリのアサガオ』はおすすめです。非常に考えさせられました)。

 死刑制度の是非だけでなく、話はいろんな方向に飛びました。死刑の判決と執行になぜ何年もの月日を要するのか、死刑になる、ならないのラインはどこにあるのか、分からないことだらけでした。


テーマ106:少年法の是非

 これも死刑制度と同じく、意見が真っ二つに分かれやすいテーマです。子を持つ親として、死刑制度よりも少年法の方がリアルに感じます。どんな親であっても、いつ何時わが子が加害者(もしくは被害者)になるか、分かったものではありません。

 今回、妻としっかり確認し合えたことは「スタンスは絶対に崩さないでおこう」という点でした(例:少年法撤廃を訴えながら、自分の子供が加害者になったとたんにポリシーを翻して、少年法に守ってもらおうとするような都合のよすぎる行為)。

 まさか自分の子供が人様に危害を加えるなどありえない、と私も思ってしまうので、どこか他人事のような気がしてはいるんですよね……いまでも。


テーマ107:刑事責任が問えるのは○○歳からにすべき?

 少年法と同じで、加害者と被害者どちらの立場にたっても、スタンスが変わらぬよう、確認を行いました。当然、納得のできる結論には当然至りません。

 議論を重ねるうちに、ふと「こういう議論は大人が中心にやるものだけど、対象者である未成年の子供たち本人にどれだけ自覚があるのだろう? あるいは、教育現場は子供たちにどんな教育をしているのだろう?」という気がしてきました。

 ○○歳以下は法的責任を問わないというルールを悪意ある子供が悪用して「人を殺すなら、○○歳の誕生日を迎えるまでOKなんだ!」と考えないか、すっごい不安です。考えすぎでしょうか。


テーマ108:わが子の酒とタバコ

 こちらは議論するまでもなく「法の下でどうぞ」という結論になりました。20歳を越えるまでは全力で阻止しようとなりましたが、現実問題として、親の抑止力はある程度の年齢を越えたら無力化するだろうなというあきらめもあります。それに、親であるわれわれがタバコも酒もたしなまないからといって、その価値観を子に強制するのもどうかとも思います。

 ただ、娘がタバコを吸う行為だけは「いくつになろうとも断じて父として許さない」という立場を妻に伝えておきました。理由は「母体を大事にしてほしい」という願いからです。まあ、これも親のわがままなのかもしれませんが。

 娘のことになると、夫はやたらと感情的になります……。可愛がるのはいいけれど、度が過ぎると、後々のショックが大きいような気がしますが。


テーマ109:動物愛護の精神

 われわれは、動物愛護について話し合ったことがありません(正直、あまり考えたことすらない)。付き合っているころも、動物園や水族館にデートしたことはなく、牧場で馬に乗ることもなく、釣りの経験もありません。きっと、動植物に対して人並み以下の興味しかない人間なのでしょう。

 よって、世の動物愛護団体が繰り広げる主張も、あまり真剣に耳を傾けたことがないです。そのせいでしょうか、夫婦そろって狩る方(食べてよし)、守る方(保護せよ)両方のスタンスにニュートラルな見方に落着。正直、あまり盛り上がりませんでした。

 動物愛護のことはよく分からないので、早々に終了。ただ1つ意見が合致したのは、他国が別の国の食文化を頭ごなしに否定するのはいかがなものかと(例:韓国人に向かって犬を食べるのは野蛮だというのは、彼らの食文化を否定することにならない? みたいな)。あと、知能指数が高い動物を殺すのは間違っているとか、可愛らしい動物を食するのは残酷だっていう主張も、価値観の押しつけでしかないような気がしたり、しなかったり。


テーマ110:使ってよい薬物、ダメな薬物

 夫婦そろって薬物に対してはビビり症なので、議論もへったくれもなく「いかなる違法薬物もNG」と結論が出ました。合法と違法の基準もわれわれは分からないですが(なぜタバコは合法で大麻は違法なの? など)、かといって詳しく知りたい気持ちもなく、国が違法と定めているなら、きっとそれは身体によくないに違いない、と思考停止しているようです。妻が「薬物したい!」とか言い出さず、安心しました(笑)。

 たとえコンビニでサプリを買うくらい簡単に手に入る環境になっても、私は逃げ続けます。薬物コワイ。


テーマ111:違法ダウンロード、デジタル万引きの是非

 ネットやガジェットの普及とともに、形のない情報を“盗む”ことが簡単になり、罪の意識が薄れているような気がします。音楽の違法ダウンロード、著作権を侵害した動画の閲覧、雑誌を携帯電話のカメラで撮影するデジタル万引きなどがその例に当たるでしょうか。ネットを滅多に使わないアナログ派の妻にいろいろ説明したら、「そんな違法行為があったんだ! 言いたくないけど、ある意味便利な世の中になってしまっているんだね」と驚いていました。

 自分が直接違法行為をすることは(リテラシーが低いこともあり)、ないと言いきれますが、もしかしたら知らず知らずのうちに違法なデータを入手してしまっていた、みたいなことにならないか、ちょっと不安に思いました。


テーマ112:裁判員に選出されたら?

 衆議院議員の選挙権を有する人、つまり20歳以上の日本国籍を持つ人なら原則的に誰でも指名を受ける可能性があります。さらに(妊娠とか怪我とか父母の葬式、親族の介護などの理由がない限り)原則として辞退できないそうです。くまなくQ&Aを読みましたが、われわれは夫婦そろって十二分に選出資格があると分かりました(笑)。

 つまり、選出されたらどうしようという話し合いには意味がないし、いつどのタイミングでお呼びがかかるかも分かりません。よって、もし選出されたら、謹んで国民の義務を果たそうということで、話し合いを終えました。

 夫は立派そうなこと言っておりますが、法律の素人が正しい判断ができるのかどうか、間違った判断をしてしまい、それが原因で冤罪の片棒を担いでしまわないか、怖いです。


テーマ113:他人の携帯電話や日記を盗み見る行為

 ある意味、アンタッチャブルで取り扱い危険なテーマなのですが、いちおう夫婦のスタンスを確認しておきました。加えて、子供に与える携帯電話や日記について(そんな状況になったことはないですが)もし見れてしまうチャンスがあったら、親として見るか、見ないかも確認しておきました。

 余談ですが、iPhoneアプリで「妄想電話」というのがありまして、これは異性が電話をかけてくれるエンタメ系アプリです(当然、音声のみで本当にかかってくるわけではないです)。アプリを起動して待っていると、異性から自動的に電話が着信します。

 放っておくと、自動的に「ねー、さみしいよー、今から逢えない?」とかしゃべり始めるのですが、これが意外に萌えます(笑)。

 で、これを使って妻にドッキリをしかけてみました。

  1. アプリを起動して、わざとらしく部屋を離れる
  2. 電話が着信する(妻が「電話鳴ってるよ〜」と呼びつつ、画面に表示された女子の名前に気づく)
  3. 女の子が甘えた声でしゃべり始める
  4. 僕が飛んで戻って慌てて電話を切り、「なんでもないんだ、きっと間違い電話だ」と5分ほど言い訳をして、妻の反応を見る

 という恐ろしいドッキリです。その結果……、

 2日間、口を聞いてくれませんでした。がっくり。

 やっていい冗談と悪い冗談があります。久々に殺意を覚えました。



No. 今回のテーマ
104 もしもデスノートを手に入れたら
105 死刑制度に賛成か否か
106 少年法の是非
107 刑事責任が問えるのは○○歳からにすべき?
108 わが子の酒とタバコ
119 動物愛護の精神
110 使ってよい薬物、ダメな薬物
111 違法ダウンロード、デジタル万引きなどの是非
112 裁判員に選出されたら?
113 他人の携帯電話や日記を盗み見る行為

 以上、「道徳・倫理」についてでした。

 今回一番盛り上がった(意見の食い違いがあった)のは、デスノートの使い方についてでした。その人の本性が見えてしまう部分もあったとはいえ、所詮架空の漫画の話ですので、わりと思い切った意見を出すこともできました。ぶつかったにしても、ダメージは少なかったように思います。


スキナヒト製作所からのお知らせ

 筆者の中山順司さんが運営している「スキナヒト製作所」。フツーの男女のフツーの出会いをプロデュースすることに特化した、世界一マジメな恋愛インキュベーション・プロジェクトです。ただいまβテスト中につき、利用は完全無料。

このたび、スキナヒト製作所おひとり目となる独身男性をご紹介することになりました(パチパチ)。IT系プログラマ(26歳)の痩身な方です。今風に言うなら、草食系男子でしょうか。

 「この人に興味あるかも」と思った方、ぜひご連絡を! 「知り合いのあの娘に教えてあげよう」などなど、ぜひTwitterでつぶやいてみてください。

著者紹介:中山順司(なかやま・じゅんじ)

 シックス・アパート株式会社 / スキナヒト製作所 所長。1971年生まれ。Covenant College(米国)卒業後、携帯電話キャリアでマーケティングと営業に携わり、2000年にネット業界に転身。旅行予約サイト(現楽天トラベル)で観光旅行コンテンツビジネスを立ち上げ、その後始めた個人ブログがキッカケで、ブログソフトウェアベンダーのシックス・アパートに(現職)。

 2010年12月、フツーの男女のフツーの出会いをプロデュースすることに特化した、世界一マジメな恋愛インキュベーション・プロジェクト「スキナヒト製作所(β)」を設立。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ