趣味・思考・嗜好――運命は切り拓けるのか、運は有限なのか、無限なのか夫婦で始める“エクストリームコミュニケーション”

たかが好き嫌い、モノの考え方と侮るなかれ。ほんのわずかな差が夫婦の関係を強くもし、ときにもろくもさせるのです。

» 2011年02月04日 19時45分 公開
[シックス・アパート 中山順司,Business Media 誠]

 夫婦間のコミュニケーションは難しいもの。付き合いも長いと、話題もなくなります。年中一緒に暮らしていれば、会話のネタも尽きてきますよね。そこで、ごくごく普通の夫である私が試行錯誤の上に発見した、ちょっと変わった夫婦間の「エクストリームコミュニケーション」をご紹介して今す。今回のエクストリームコミュニケーションは「趣味・思考・嗜好」です。

  1. 金銭感覚
  2. 教育/育児
  3. 住居/財産/資産
  4. 仕事/キャリア
  5. 習慣/くせ/生い立ち
  6. 趣味/嗜好/思考←イマココ
  7. 健康/病気
  8. 家事/食生活/日常生活
  9. 夫婦/人間関係
  10. 社会問題/政治
  11. 親/家族/親戚
  12. 道徳/倫理
  13. 老後/ライフワーク

 たかが好き嫌い、モノの考え方と侮るなかれ。ほんのわずかな差が夫婦の関係を強くもし、ときにもろくもさせるのです。ちなみにテーマの数字は連載記事共通の通し番号。これまでのエクストリームコミュニケーションも参考にしてみてください。

テーマ49:非科学的なモノへの依存度

 占い、風水、オカルト、都市伝説、ジンクス、オバケ、迷信、縁起かつぎなどなど、非科学的ではあるけれど、古くから信じられていることがあります。こういった非科学的な事象をどれくらい重視するかは、かなりの個人差があるでしょう。ほぼどれにも興味がない私は、あまりこうした内容を話すことはありませんでした。そこで、占いに興味を持つ妻に「なぜ気にするのか」「効果があると信じているのか」を問い詰めてみました。

 ずっと疑問だったけど、どうしてキミは占いを気にするの? まさか内容を信じているとか?

 興味がなくはないってレベルだよ。非科学的だとは分かっているけど、つい知りたくなるんだよね。

 非科学的だと分かっているのに、それでも見るんだ。

 うん、女性ってそういうとこあるよ。

 例えば血液型って4タイプしかないじゃない?じゃあ人間はざっくり4種類に分類しちゃうの?それ乱暴すぎない?

 いや、血液型だけだと信憑性が低いの。そこに星座をかけると48パターンになるでしょ。さらに年齢をからめるともっとパターンが増えるじゃない? そこまでクロスして初めて納得感のある内容になるってわけ。

 非科学的なものをいくらかけ合わせても、意味ないんじゃない?

 当然、心の底では信じてないよ。占い業界ってあるのかしら、その業界が作ったデタラメと切り捨てることもできるけど、それは別に大切なことじゃない。いいことが書いてあればその日ハッピーに過ごせるし、そうでない場合は無視すればいい。自分に都合のいいとこだけ利用しているのよ。

 どう転んでもマイナスにはならないってことね。それで前向きになれるなら、まあいいのか……。

 自分のだけでなく、家族全員のもチェックしてるのよ。

 マジで?

 あなたが占いに興味ないのは知ってるから、いちいち伝えはしないけど、家族全員のを確認するとなんだか安心するんだよね。

 いや、その、うーん、、ありがとう……(なのか?)

 占いは個人的にまったく興味はないですが、まさか妻が家族全員分をチェックしていたとは知りませんでした。ひとまず感謝はしておきました。

 占い程度なら笑って済みますが、片方が風水に異常に凝るタイプでもう片方がそうでない場合、住宅購入や引っ越しのたびに修羅場になるかもしれないですね。我が家はどちらも無頓着な性格でよかったですが。


テーマ50:ギャンブルについて

 自分のお金を何に使おうとその人の自由です。が、夫婦になった瞬間にお金はすべて「二人のもの」になります。遊びに費やす対象と収入に対する割合は夫婦納得ずくで確認しておくべきで、ギャンブルはその最たるものでしょう。

 結婚前から互いにギャンブル嫌いを確認済みだったので、このテーマはスムースに終了。唯一のギャンブル歴はサッカーくじのtotoで、累計2000円ほど投じたことはありますですが、それっきり。個人的には『闇金ウシジマくん』『ナニワ金融道』をときどき読み返し、ゆめゆめ濡れ手に粟なお金を求めないよう、気を引き締めることも。今後もギャンブルは手を出さないでしょう。そして子供たちにもさせないよう教育しようと合意しました。

 夫がギャンブルに手を出さないタチで、家計を預かる身としては好都合です。ただ、テレビで「ロト6億円当選者が出ました!」というニュースを見ると、深いため息が出ます……。


テーマ51:お酒について

 互いの酒量はもちろん、それ以上に知っておきたいのは「酒ぐせ」です。悪い意味でその人の本性が見えてしまいますし、各種トラブルの元になります。やっかいなのは、本人が自分の酒ぐせを自覚できているのか、という点。

 ちなみにギャンブル同様、われわれはお酒もほぼ飲みません。妻は学生時代に声楽を学んでおり、喉のケアにものすごく気を遣っていたことを初めて知りました。お酒以外にも、カレーやキムチ等の辛い刺激物、炭酸ジュースは一切口にせず、寝るときは加湿器を動かして、さらにマスクをして寝る日々だったとのこと。

 私は普段は飲みませんけど、まったく飲めないクチではないので「たまには夫婦で晩酌してもいいかな」と思うのですが、その願いは一度も叶わず。お酒を飲む習慣がないことで、人生の大きな楽しみを失っているかも? と思うこともあります。


テーマ52:たばこについて

 嗜好品を頭ごなしに否定するのはどうかと思いますが、家庭内でルール(必ずベランダで吸う、など)は設けておくべきでしょう。喫煙者と非喫煙者が夫婦になった場合、あいまいにしたら必ずぶつかります。とくに子供への影響(妊娠中含む)は本気でシャレにならないので、きっちり話し合うべきでしょう。

 実家の父(スモーカー)と母(ノンスモーカー)のタバコをめぐるケンカは幼年時代の日常だったことを思い出し、結論の出ないあの不毛な争いを我が子に見せるのはいやだと思いました。まあ、夫婦ともに吸わないので問題ないのですが。

 ギャンブルも酒もタバコも無縁な夫は家計的には大助かりです。が、その事実を逆手にとって「自分はこんなに家計に貢献しているのだから」と、衝動買いの言い訳に使うのは卑怯ですよね!? ゲタ箱はサッカーシューズだらけだし……。


テーマ53:互いの趣味について

 ふつう、趣味については結婚前からじゅうぶん話す機会があるでしょうから、結婚後に衝撃の事実発覚! とはなりにくいと思います(隠しているケースは別として)。

 たいていのカップルは互いに「自分が夢中になっているこの素晴らしき○○○の世界に、妻(夫)を引きずり込んでやろう! 自分のことを好いてくれているのだから、きっと○○○も好きになってくれるはず」と鼻息が荒い時期があるものです。しかし、夫(妻)をいくら好きであっても、その人の趣味も好きになれるかどうかはまったくの別問題。

 なお、われわれの長年の努力は徒労に終わっております。今ではすっかりあきらめ、私は1人でスタジアムにサッカー観戦に行き、妻は1人でクラシック音楽を鑑賞しております。

 相手に「理解」を求めることはできても「興味」を持たせるのは不可能だと悟りました。夫とクラシック・コンサートに行く夢は生涯叶わないと確信しています。同じ趣味をエンジョイしているご夫婦を見ると、本当にうらやましいです。


テーマ54:夫婦で楽しめる趣味について

 「パートナーを無理やり自分の趣味の世界に引っ張り込もうとしても失敗する」ことを、身をもって知ったわれわれは、共通の趣味をゼロから探すことにしました。どちらかの得意分野をからめると、どうしてもそこで上下関係が生まれてしまい、一方が不愉快な思いをしてしまいます。そこで、イーブンになるために完全なゼロからのスタートを考えたのでした。

 オススメしたい条件は、

  1. 生涯続けられる(体力の衰えに左右されない)
  2. マイペースで楽しめる(競争がなくても成立する)
  3. 固定費が低い(用具、メンテナンス、消耗品費用、移動コスト、時間コスト)
  4. 健康に良い

 ――の4つ。これらを満たしつつ、夫婦で興味を持てるものであればベストです。ソバ打ち、料理、ランニング、釣り、温泉めぐり、登山、陶芸、絵画、写真撮影、などなど探せばいくらでも見つかるでしょう。われわれはサイクリングをやっております。

 高校卒業以来、自転車には無縁でしたが、夫に誘われて始めました。夫も初心者だったことで誘い方に無理やり感がなかったのが素直に従えた理由だと思います。先ほどの4つの条件も満たしていて、なかなかよい趣味が見つかりました♪


テーマ55:運命は切り拓けるのか、運は有限か、無限か

 多くの人にとって意識して考えたことはなくても、心の中でハッキリ答えの出ているたぐいの問いだと思います。運命は切り拓けると考える者と、そう考えない者との間には、ものすごい隔たりがあります。ほかにも、ラッキーな出来事が続くと「今年の運を使いきっちゃうからセーブしないと」とかいうセリフがありますが、まるで運は有限であるかのような表現なので、好きではありません。

 どちらが正しいかを追求することに意味はなく、むしろ「なぜそう考えるに至ったか」「過去のトラウマ、幼い頃の体験」を話し合うほうが生産的です。ここの不一致は、関係を続けるうえでの危険要素と言わざるをえないでしょう。

 私たちは「運命は切り拓ける&運は無限である派」で合意できてよかったですが、それ以上によかったのは、辛かった時期(学生時代)にどう考え、行動し、どんな結果を得たかといった部分を知ることができたことです(あまり人に話したがらないであろう、夫の学生時代の苦い体験話など)。


テーマ56:自分の性格で変えたい部分

 自分以外の人間に性格上の欠点を指摘されることは(たとえそれが図星であっても)不快なものです。ただ「変えたいと思っている=欠点を認める(もしくはさらす)」ようで、自分から言うのも気が引けると思います。われわれも「キミが先に言ってよ」「あなたこそ先に言いなさいよ」と大人げない感じに。結局、代わりばんこに言い合うことにして、損得が発生しないようにして決着しましたけど。

 意外にも「そんなこと気にしていたの?」と言ったり、言われたり、夫婦同士でも何で悩んでいるかって分からないものなんだなあとしみじみするやら、拍子抜けするやらでした。

 男の人って、弱みを見せることや悟られることを極端に怖がるものなのでしょうか。ほかの男性はどうなのか気になります。


テーマ57:自分の中の確証バイアス

 「確証バイアス」とは心理学用語でして「個人の先入観に基づいて他者を観察し、自分に都合のいい情報だけを集めて、それにより自己の先入観を補強する現象」を指します。

 分かりやすい例を挙げると「これだからオンナって奴は」とか「最近の若い者ときたら」というつい口から出てしまうアレです。自分のバイアスにはなかなか気づけないので、下記の例を挙げて互いに指摘しあってみました。

  • 男/女(例:まったくオンナって奴は)
  • 理系/文系(例:これだから文系は)
  • 若者/老人(例:最近の若モンときたら)
  • 関西、関東などの出身地(例:やっぱり○○人か)
  • 教師、医者などの職業(例:さすが○○だ)
  • 血液型(例:どうりで○型だと思った)

 ほかにも外見や体型、人種、皮膚の色、政治ポリシーあたりでも身勝手なバイアスをかけてはいないでしょうか。ただ、人間である以上、完全な客観性をもって物事をとらえることは不可能です。その点は割り切ってしまってください。

 自分の思考パターンがつまびらかに明かされることで、自分自身を客観視できてしまいました。ただ、相手が夫とはいえ、恥ずかしい気持ちになります。自分のコンプレックスの裏返しなのかな……。



No. 今回のテーマ
49 非科学的なモノへの依存度
50 ギャンブルについて
51 お酒について
52 たばこについて
53 互いの趣味について
54 夫婦で楽しめる趣味について
55 運命は切り拓けるのか、運は有限か、無限か
56 自分の性格で変えたい部分
57 自分の中の確証バイアス

 以上、趣味・思考・嗜好でした。

 前回の習慣・くせ同様、成人してからの「モノの考え方」や「好き嫌いの判断」を変えるのは、たとえ家族でも極めて至難のワザ。原因追究はほどほどのところでやめておき、(相手を)あるがままに受け入れ、(自分を)受け入れてもらう姿勢が必要でしょう。

 個人的な経験上の話ですが、何か問題を話し合う時「キミが」や「アナタは」と主語に「You」を置くとつい感情的になってしまうもの。二人の問題として「We」で話す癖をつけておくと、協力的なムードが生まれます。


著者紹介:中山順司(なかやま・じゅんじ)

 シックス・アパート株式会社 / スキナヒト製作所 所長。1971年生まれ。Covenant College(米国)卒業後、携帯電話キャリアでマーケティングと営業に携わり、2000年にネット業界に転身。旅行予約サイト(現楽天トラベル)で観光旅行コンテンツビジネスを立ち上げ、その後始めた個人ブログがキッカケで、ブログソフトウェアベンダーのシックス・アパートに(現職)。

 2010年12月、フツーの男女のフツーの出会いをプロデュースすることに特化した、世界一マジメな恋愛インキュベーション・プロジェクト「スキナヒト製作所(β)」を設立。


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