青色申告って何? 個人事業主の賢い節税を考える大増税時代(2/3 ページ)

» 2012年03月05日 16時55分 公開
[奥川浩彦Business Media 誠]

減価償却をうまく利用する

 次は減価償却での青色申告のメリットを説明しよう。そもそも減価償却とは何か。10万円未満の備品などは消耗品費として全額経費にできるが、10万円以上のものは耐用年数に分割して経費とすることを示す。

 例えば300万円の車購入した場合、300万円が買った年の経費になるわけではない。車は耐用年数が6年なので、50万円ずつ6年に分けて経費とする仕組みが減価償却だ。耐用年数はテレビは5年、PCは4年、カメラは5年、鉄筋コンクリートの事務所は50年などと定められている。

 減価償却には特例があり、10万円以上20万円未満の資産は一括償却資産として3年で均等に割って償却できる。さらに青色申告している個人事業主なら10万円以上30万円未満の資産は「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」により、その年に全額経費として処理することが可能だ。

 業種によると思うが、個人事業主はサラリーマンと違って収入の浮き沈みが激しい。筆者のような仕事でも月の売り上げが30万円、翌月は150万円などと変動するし、年間の売り上げが数百万も変化することがある。当然もうかった年は経費や控除を増やして税金を減らしたいと思う。

 25万円の一眼レフカメラ用レンズを買ったとしよう。白色申告であれば5年償却となるので毎年5万円ずつ経費として落とすことになので、翌年以降でもうけが少ない年は15%しか節税できない計算だ。青色申告なら30万円未満の資産をその年に全額経費にできるので、もうかっている年なら30%、この場合なら7万5000円の節税が可能となる。普通に考えて、高額な買い物をするのはそこそこもうかっている時なので、この制度の恩恵は大きい。

 この「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」は2年ごとに延長され、現在は平成24年の3月までとなっている。恐らくそれ以降も継続されると思われるが、政治情勢を見るとやや不安があるので、制度をあてにして30万円未満の資産を購入するときは確認した方がいい。

 サラリーマンの人は「俺には関係ない」と思われているだろうが、商売をしている人はこういった税金のツボを知っているとプラスになることがある。例えば個人事業主の決算月となる12月に、ある製品を32万円+ポイント10%引きで値付けをしたとしよう。

 領収書の金額が32万円なので個人事業主は節税対策として購入できない。他店が29万8000円ポイントなしで販売すると、他店よりポイント換算すれば安いはずだが、30%の節税まで加味すると個人事業主には他店の現金値引きの方が魅力的となる。このようにサラリーマンには見えづらい個人事業主の税金の事情を知っていれば商売の仕方が変わることもあるだろう。

 最後は専従者控除だ。青色申告者は配偶者や親族に仕事を手伝ってもらった場合、支払う給与を経費とすることができる。白色申告者は配偶者なら86万円、親族なら50万円までを経費にできる。青色申告者の場合、もうかっていれば良識の範囲内で高めに給与を支払えばトータルで節税することが可能となる。

青色申告は事前申請が必要

 独立をした翌年に初めての確定申告をする人が「青色申告の方が得だから青色申告にしよう」と思っても時既に遅しだ。というのも、青色申告をするには事前申請が必要となる。開業日から2カ月以内(開業日が1月1日から1月15日の場合はその年の3月15日まで)に「青色申告承認申請書」を提出しなければ青色申告者にはなれないルールだ。

 2012年(2013年の確定申告分)、白色申告から青色申告に切り替えたい場合は3月15日までに申請をしなければならない。現在白色申告で青色申告に変えたいと思っている人は急いだ方がいい。家族を青色申告専従者として給与を払う場合も申請が必要なので、税務署でまとめて申請をすればいいだろう。

インフレ時代の確定申告

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