マッキンゼーは、目先の問題解決ばかりを追わないマッキンゼー流仕事術(1/2 ページ)

何か壁にぶち当たったら、「そもそもどうしたいのか」というイシュー(仮説)から考え直すといいでしょう。「問題解決」スキルの基本に立ち返るのです。

» 2013年10月29日 08時00分 公開
[大嶋祥誉,Business Media 誠]

『マッキンゼー流仕事術』について

なぜ、マッキンゼー出身者は各業界で活躍できるのか? その秘密はマッキンゼーの新入社員研修にありました。本連載ではマッキンゼーの厳しい新人研修を著者のエピソードと共に紹介しながら、そこで叩き込まれるマッキンゼー流問題解決の基本を解説しています。

 この記事は2013年4月27日に発売されたソフトバンククリエイティブの『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』(大嶋祥誉著)から抜粋、再編集したものです。


 こんな話があります。

 あるとき森林の中で目の見えない旅人たちが、これまで見たこともない巨大な「何か」に出会いました。この「何か」が道をふさいでいるので通ることができません。問題はこの「何か」を明確にして、それを取り除き、道を通ることです。

 ある旅人は、こんなに太いのだから大木に違いないと言います。ある旅人はザラザラとした触り心地から大蛇だと主張し、ある旅人は太い綱だと言い張ったのです。

 大木だと言った旅人は、それを取り除くために、木こりを呼ぼうとするかもしれません。一方、大蛇といった旅人は、蛇使いを呼ぼうとするでしょう。綱といった旅人はもっと大勢の仲間を呼ぼうとするかもしれません。しかし、その「何か」は、本当は「象」であったという寓話です。

 実はこの話の中にもプロフェッショナルとして常に意識しておかなくてはいけない

ことが隠されています。旅人がそれぞれ、巨大な「何か」の一部分だけを見たり触ったりして、「これは、○○に違いない」と主張していては、道を通ることはできないし、本来の姿を見誤り、象に踏まれるという危険にも遭遇しかねないということ。

 これは、私たちの仕事や人生、あらゆる場面で遭遇する「問題」との向き合い方にも重要な示唆に富んでいます。

 何か問題に遭遇したとき、私たちはつい、どうしても「目の前の問題」を早く解決しようとして現象そのものに意識を向けがちです。けれども、そこからちょっと視点を上のほうに引き上げて「現象という枠」から離れてみることで、その場では見えなかった「真の問題」が見えてくることがあるのです。

 これは私がマッキンゼーを卒業してから、コンサルティングの現場で遭遇したケース。あるメーカーの製造現場で、作業動線上にいつも「従業員が転びやすい階段」があるのがネックになっていたのです。部品を持って移動する途中で転んでしまうと、せっかくの部品に傷がついて使えなくなりますし、何より従業員のケガという問題も発生してしまいます。

 現場の責任者は、階段に「転倒注意!」という表示をしたり、滑り止めのテープを貼ったりして対策をしたのですが、それでも一向に転倒事故が減りません。どうやら、作業動線の中でも、その階段部分で時間を短縮したいという意識が働くために、つい小走りで階段を使ってしまっていたようなのです。

 これも「転びやすい階段」という問題にばかり意識を向けて、そこだけで問題解決しようとしているために「真の問題」が見えていないのかもしれない。そう考えた私は「そもそも、何がしたかったのか」というところから考えましょうという投げかけをしました。

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