もし、今、あなたが「自分の周囲からの評価」について悩んでいたりするのなら、思い切って周囲のことよりも、「自分のユニークさを生かしたバリューを出す」ことに意識を向けてみては、と思います。
なぜ、マッキンゼー出身者は各業界で活躍できるのか? その秘密はマッキンゼーの新入社員研修にありました。本連載ではマッキンゼーの厳しい新人研修を著者のエピソードと共に紹介しながら、そこで叩き込まれるマッキンゼー流問題解決の基本を解説しています。
この記事は2013年4月27日に発売されたソフトバンククリエイティブの『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』(大嶋祥誉著)から抜粋、再編集したものです。
今から思い返しても、マッキンゼー入社1年目の仕事にしては、ちょっとハードルが高いものが多かったような気もしますが、仕事のハードルを上げるのも下げるのも、実は自分次第。職人であれば、誰に何を言われなくても自分が納得できる物でなければ人前に出さないのと同じように、自分の仕事のクオリティを決めるのは自分なのだということです。
そんな、ある種の“職人気質”があることも、マッキンゼー卒業生がどこに行っても自分でやっていけることにつながっているかもしれない、と言ったら意外でしょうか。
職人といっても、人を寄せ付けないような気難しい人という意味ではありません。会話をすると、自分が持っていないような視点からたくさん面白い考えを聞くことができる人かもしれません。また写真を撮ることがプロ並みにうまく、その視点から資料をセンスよく、ぐっと惹き付ける内容でまとめる人だったりするのです。
ほかにも、ちょっとした説明をするときに面白い「漫画」を描ける人もいて、とにかくユニークな人がマッキンゼーにはそろっていました。それでいて、仕事となると自分に厳しく、信念を持っていながら、徹底して上質のいい仕事をすることに集中する。ことさら自分を前面に出すようなことはあまり好まず、自分の評価は「仕事の結果」にゆだねる……。そんな職人集団だったのです。
作品(仕事)を見れば誰の物かが分かる、アーティスティックな側面もあったように感じます。いい意味で、他人にはあまり関心がないのもマッキンゼーの人たちの特徴。社内の人間関係や同期との競争を意識するよりも、「どうすればもっと上質で良いバリューが出せるか」ということに意識が向いているのです。
例えばある先輩は「クライアントがある市場に進出すべきか、すべきでないか?」という仮説に対して、進出すべきという仮説に傾きつつあった上司に、分析を基に「進出すべきでない」と、先輩独自の持論を何時間もぶつけていたのを覚えています。
そんな先輩の姿に、徹底した上質の仕事、クライアントにとっての最適な解を提供するという愚直なまでの職人気質を感じました。
もし、今、皆さんが「自分の周囲からの評価」について悩んでいたりするのなら、思い切って周囲のことよりも、「自分のユニークさを生かしたバリューを出す」ことに意識を向けてみては、と思います。
まず、自分は何を期待されているのか? をきちんと理解する。そして、自分のユニークさは何かを知って、そのユニークさを期待される仕事に生かしてみるという発想です。
例えばあなたが人事部に配属され、その中で期待される仕事は会社で実施されている研修の満足度のとりまとめだとします。研修の際にアンケートが実施されていたとしても、それをそのまま報告書に使うのでは、そこに「あなたらしい仕事」は見えてきませんよね。
もしもあなたが人に好かれる、人と接するのが得意というのであれば、積極的に他部署の先輩や上司、同期に声をかけてみて「研修の満足度はどうだった?」と具体的にヒアリングして、報告書にまとめてみるというのもいいかもしれません。そのほうが結局、どこでも通用する仕事力を高めることにつながるのですから。
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