採用時には有利ともされがちな「高学歴者」ですが、多くの現場マネジャーは高学歴の人を敬遠している実態があります。それなりに仕事はできるはずなのに、なぜでしょう?
学歴と仕事のできる/できないの相関関係については、いつの時代も熱い議論になっていますね。人事担当者は高学歴な人間を取りたがるが、学歴が高いヤツに限って仕事ができない。もしくは、そうはいっても学歴が高い方が1言えば10分かってくれるような優秀な人間が多い、など。
この辺について、常々思っていることがあるのでお話します。
高学歴者は、基本的に難しい受験戦争を突破してきているので「理解力」「読解力」「記憶力」「計画力」「実行力」といったおよそ「何かをやろうという時に必要とされる力」は人並み外れて高いです。
もちろん学歴のない人の中にもこういった能力の高い人はいるのですが、学歴が高い人がこの手の能力があるというのは、「受験で成功した」事実によって客観的に証明されているので、労働市場では1ランク高いところで評価対象になるわけです。
これはまあ差別とかではなく、買い手の立場に立てば仕方がないことです。というか、それがないのなら何のために親は子どもたちに小学校のころから高い月謝を払って塾に通わせてきたのか、という感じですね。
ただ、私も一応高学歴と称される大学を出て、かつサラリーマンを3年ほど、フリーランスを2年ほど、会社経営を15年ほどやってきていろいろ分かったことがあります。
大学受験で試される能力と、ビジネスで求められる能力は微妙に違っています。
言ってみれば、軟式テニスと硬式テニスくらいの違いがあり、片方を極めていけば行くほど、変な癖が付いてしまい、もう片方が下手になってしまいます。
そして完全に違うものではないところが厄介です。かなり似ているところがあるがために、高学歴を持つ多くの人が、その違いに気が付かないのです。
受験勉強はもちろん大変で、高学歴者は18〜19歳までの間にその道のエキスパートになっているわけです。ですので、「何だ、おれ、予備校の講師になっちゃおうかな」なんて思って、実際やればそこそこできる人も多いと思います。学生バイトでも、受験教育産業ではそれなりに即戦力だったりします。
ただ、一般的なビジネス界では受験で試された能力というのは大した価値がないのです。
例えば3000文字の難解な文章の要旨を100文字で要約するような能力は、多くのビジネスの世界では不要です。長文メールを送ってくる取引先には、電話をかけて確認する能力のほうが1万倍重要だからです。
軟式テニスでインターハイ行ったとしても、硬式テニスでもすぐに活躍できることはありませんよね。むしろ微妙にかする変な癖が付いていているにもかかわらずそれに気が付かずにゴリゴリと不格好にやり続ける人よりも、「何も分からないので教えてください」という素直な心の持ち主をイチから育てたほうが教える側からするとやりやすいというのはよくあることです。
人事部と現場のマネジャーの意識の違は、この辺にある気がします。
私は人事と現場マネジャーの両方やっているのですが、高学歴の人、特に20代の若い人を見ていて「あー、この人、まだ受験生時代の変な癖が抜けてないなー」と思うことがあり、それがこんな言動から見え隠れします。
「うちの会社って、上司に好かれる人だけ出世するんだよね。明確な昇給基準みたいのがないんだよ」
「先輩、こういう場合ってどうするのが正解なんでしょうね?」
「うちって、やることやると結構暇なんだよな」
「いろんな仕事やらせてもらって、どんどんステップアップしたいよ」
「この仕事、前にやったのとほとんど同じ。モチベーション上がらないわ」
「仕事はPDCAが大事で、その中でも特にPLANが重要。そこを適当にして動き始めるから失敗するんだ」
「今期、自分の提案が通り部署の業績も伸びたのに昇給は微々たるもの。これはどういうことなのか?」
こんなところでしょうか。これら全部、悪い癖です(それぞれどこがどう悪いのか、書き出そうとしたら、この記事の10倍くらいのボリュームになりそうだったので止めました)。
つまり高学歴の人というのは、取りあえず10代後半で受験問題を解くスーパーエキスパートになっている。ただ、それは大変立派なことなのですが、逆にその成功体験により、既存の行動規範から離れなくなっていることがあります。
それは企業活動で言うところの「生産性のジレンマ」状態で、早くそのことに気が付いて変な癖は直していかないと、そういうことが「できない」人よりも成長が遅れてしまいます。
多くの現場マネジャーが高学歴の人を敬遠したがるのは、経験的にこれをよく知ってるからです。
※この記事は、誠ブログのそろそろ脳内ビジネスの話をしようか:高学歴の人が持つ悪い癖より転載、編集しています。
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