フランツ・カフカは、20世紀でもっともクリエイティブかつ影響力のある作家といわれています。実はそのカフカ、労働時間のほとんどを、チェコの労働者傷害保険協会で弁護士として過ごしていました。いったいカフカは、毎日の仕事をこなしながら、どうやってあれだけクリエイティブな作品を生み出していたのでしょうか。その秘けつは、スケジュールを厳守することにあったようです。
カフカの勤務時間は8時半から午後2時半。それから昼食を食べ、午後7時半までの長い昼寝をします。昼寝から目覚め、エクササイズの後、家族と一緒に夕食。午後11時から数時間の執筆をしたのち、ベッドに入るという毎日を繰り返していました。
カフカのようなスケジュール厳守は、決して珍しいことではありません。メイソン・カリー氏は、著書『Daily Rituals: How Artists Work』において、世界の偉大なるアーティストらが、自分のスケジュールを崩さなかったことを記しています。
このように、トップレベルのクリエイターたちは、モチベーションやひらめきをあてにせず、一貫したパターンとルーチンに従っています。クリエイティブな成功をもたらすのは毎日の習慣の確立であり、天才的なひらめきなんてものは神話に過ぎないのです。
その理由を考えてみましょう。
有名な心理学者、ウィリアム・ジェームズは、習慣とスケジュールが大事である理由を「心を解き放ち、本当に面白い活動の舞台へと導いてくれる」からと言っています。
「The Guardian」の記事でも、「働く時と場所を決めるためにリソースを無駄にすることは、自分の能力を阻害しているようなもの」と書かれていました。これを裏付ける意志やモチベーションに関する研究も、たくさん存在しています。
つまり、人をひきつけるものを本気で創りたければ、モチベーションやひらめきが訪れるのを待つのではなく、習慣的に仕事に取り組むためのスケジュールを組むことが必要なのです。もちろん、言うは易しですが、実践はかなりの困難を伴うでしょう。
次に、そんなスケジュールを組むための1つの方法を紹介します。
クリエイティブな仕事のスケジュールを組むことは、ウェイトリフティングとよく似ています。
今日、自己ベストをたたきだせるかどうかは、ジムに行ってみないと分かりません。実際、平均を下回る日もたくさんあるでしょう。やがて、そのように平均を下回る日々は、プロセスの一環に過ぎなかったことを知ることになります。結局のところ、自己ベストを出すための唯一の手段は、その日その日の実績を問わず、毎週月・水・金と、継続してジムに通うことなのです。
クリエイティブな仕事も、ジムでのトレーニングと同じです。最高の瞬間を意図的に選んだり、最高のアイデアを思いついたときだけ作業をするわけにはいきません。自分の中に眠っている最高のアイデアを引き出すには、とにかく量をこなすこと、繰り返し作業すること、そして、とにかく続けることしかないのです。
当然、平均以下の結果が目標になることはあり得ません。ただ、たまに訪れる平均以下の日々でも作品に取り組むことを、自分の中で許容してほしいのです。そんな作品だって、素晴らしい作品にたどり着くための対価なのですから。
デキの悪い作品なんて作りたくないという人もいるでしょう。自分の作品をあれこれ見返しながら「これはまだ十分良くなっていない」という理由で、それを発表しないことは簡単です。
しかし、それではいけません。納期をはっきりと決めない限り、簡単に諦められるからです。習慣的に作品を作るためには、素晴らしい作品への途中経過として、ジャンク(ゴミのように思えるもの)を許容することが必要なのです。
ライター仲間の、セーラ・ペックと執筆について話していたとき、彼女がこう言いました。「多くの人が執筆する時間を見つけられないのは、次に書く時間を決めてないからだと思う」
この言葉は、筋トレや起業、芸術活動など、習慣の構築が必要なものすべてに当てはまります。スケジュールとは、目標を実現するためのシステムなのです。スケジュールを決めない限り、モチベーションに依存するしかなくなってしまいます。
モチベーションやひらめきが降りてくるのを待つのはやめて、習慣を作るためのスケジュールを組みましょう。それが、プロとアマチュアの違いです。プロとは、スケジュールを定めてそれを厳守する人たち。アマチュアとは、ひらめきやモチベーションを待つ人たちなのです。
copyright (c) mediagene Inc. All rights reserved.