今、すぐ必要なのは“独居老人を救うこと”――クラウドが支えた、こころみのスピード起業“週2の電話”で生きがいを(2/2 ページ)

» 2014年05月29日 11時00分 公開
[柴田克己,Business Media 誠]
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 cybozu.comが提供するkintoneは、企業が業務を進めるために必要な各種のシステムを、WordやExcelを扱うのと同じような要領でWeb上で開発し、即座に使い始められるクラウドサービスである。独自のフォームを開発、運用できるPaaSであることに加え、汎用的に使われる「顧客リスト」「クレーム管理」「議事録管理」のような機能は「アプリ」として配布されており、これらをSaaSのように利用できる側面も持つ。システムに関する専門的な知識を必要とせずに、業務アプリを開発し、運用できる点が特長の1つとなっている。

Photo kintoneには、日報や顧客リスト、日報、クレーム管理など、すぐにつかえる業務アプリが多数用意されている

 つながりプラスを運営するためのシステムを用意するにあたり、神山氏はネットなどで情報を収集しながら、複数のPaaS、SaaSを比較検討した。結果的に「運用に手間がかからないこと」「ランニングコストが安いこと」「日本の企業として長らく業務のためのシステムを手がけてきたサイボウズに対する信頼感」といったポイントからkintoneの導入を決めたという。

 「検討を進める中で、Facebook上で知人に“こんなことをしたいのだけれど、どのクラウドを使ったらいい?”と質問を投げたりもしたのですが、kintoneはすぐに名前が挙がっていました。実際に機能を見てみて、事業のスタートに必要な機能がすぐ使えるのと同時に、将来的に必要になる機能を柔軟に追加していけるところも魅力的だと感じました」(神山氏)

 神山氏はSAP関連のコンサルティングを手がけた経歴を持ち、ビジネスプロセスの理解に加えて、必要なデータベースの構成など、業務システムの成り立ちに関する知識もあった。そこで、kintone上でのアプリ構築を自ら手がけることにした。

 「開発にあたっては、既存の問い合わせ対応のための部品をカスタマイズしながら、ほぼゼロの状態から作りました。それでも、最初に必要なシステムについては、半日程度で作ることができました」(神山氏)

 基本となる顧客管理、コミュニケーター管理のデータベースに合わせ、サービスを展開する中で必要な機能を随時付け加えていった。例えば、顧客に関する情報を、サービス利用履歴の情報と合わせて管理できる機能や、顧客データベースの中に利用者本人とコミュニケーターが初回の顔合わせ時に撮影した写真を掲載できる機能などだ。これらについても、神山氏が自ら追加した。専任のシステム担当者や業者に依頼せずに、即座に必要な機能を実装できる手軽さもkintoneのメリットのひとつだ。

Photo コミュニケーター(電話をかける側)と利用者(電話を受ける側)の情報管理画面。つながりプラス独自の項目を追加できるので、サービスに最適化したシステムを構築できる

Photo コミュニケーターと利用者の通話記録もkintoneで管理

 「今後は、緊急時の駆けつけサービスや家事代行サービスを提供している業者と、つながりプラスとの連携なども検討しています。そうしたときに必要になるフォームの追加なども容易です。また、外部の事業者と緊密に連携しながらサービスを拡張していくにあたっては、どこからでもアクセスできるクラウドサービスであるkintoneのメリットが、より活きてくると思います」(神山氏)

「少人数で高品質」な事業の運営と拡大を支えるクラウドサービス

 品質を担保しながらサービスを拡大展開するにあたり、こころみではkintone以外にもさまざまなクラウドサービスを活用している。例えば、コミュニケーターが利用者にかける電話回線については、やはりクラウドで提供されているIP電話の仕組みを利用しているという。

 「電話料金を会社でとりまとめて負担できるようにするのと同時に、コミュニケーターが家族に送るレポートメールの内容が適切かどうかを判断するために、会話の内容を記録しておく仕組みが必要でした。少人数のスタッフで品質を担保しながらつながりプラスのようなサービスを展開するのは、kintoneを含むこれらのクラウドサービスがなくては成立しなかったことだろうと思います」(こころみ、取締役の早川次郎氏)

 今後は、kintone上に蓄積された利用者のプロフィール、会話内容の履歴データ、保存された音声データなどから、より効果的な高齢者とのコミュニケーション手法を開発したり、生活履歴から、健康管理や認知症の早期発見などに役立つ知見を導き出したりすることなども視野に入れているという。

 事業を拡大していくにあたって、今後増えていく顧客や関係者、従業員を管理するために必要な新たな業務システムについても、kintoneを使って随時追加していきたいと神山氏は話す。

 社長1人からスタートし、今や多くの従業員を抱えるまでに成長した「こころみ」。超高齢化社会、一人暮らしの高齢者が抱える問題の解決が叫ばれるようになって久しいが、本人と遠くに暮らす家族の双方にとって本当に価値があり、不安を軽減できる「見守り」サービスのスタイルとはどのようなものか。それを模索する「つながりプラス」の運営と発展を、kintoneをはじめとするクラウドサービスが支えている。

スマONEグランプリの準グランプリを獲得――「kintone」

 サイボウズのKintoneは、BBソフトサービスが開催したモバイルクラウドソリューション決定戦「スマONEグランプリ」で準グランプリを獲得したソリューションだ。

 スマONEグランプリは、ソリューションの機能を紹介する動画を公開し、「クリック投票ポイント」と「合計視聴時間ポイント」を乗じたポイント数でソリューションへの興味関心度を測定するWebイベント。Kintoneは50万7680ポイントを獲得し、準グランプリに輝いた。

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kintoneのサービス紹介動画

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