信頼貯金が減っていくもう1つのパターンとして「信頼の土壌の劣化」というものもあります。次のようなケースでは、周囲から「今」やるべきことをやっていない、と思われ、反感を買ってしまっています。
Eさん: この件に関しては、A商事に依頼したいと思っているのですが……。
Fさん: いや、絶対B株式会社に依頼した方がいいって。あそこの担当者は、私の言うことならいろいろ便宜図ってくれるし。何なら今から電話してお願いしようか?
Eさん: (B株式会社が良かったのは前の話。もう技術も考え方も遅れてるのに……。それが分からないFさん自身、もう勉強不足だよな)
Gさん: この案件の進め方についてなのですが……。
Hさん: 今までいつもこんな感じだったし……、今回もそれでいいんじゃない?
Gさん: (いつも一緒でいいってこと? 改善も検討した方がよくない?)
こうしたケースは、いわゆる「昔のナンバーワン」――過去に実績を上げた人に多く見られる傾向です。注意したいのは、信頼の土壌は一度整ったら終わりではないということ。時間が経つにつれて土壌は劣化し、貯金は減っていきます。いわば“毎月、自動で引き落としされる”ようなイメージです。
なので、過去の栄光に頼らず、今求められる信頼を貯め続けていくことが必要になります。上記の例で言えば、情報収集や決断ですね。
いずれにせよ、信頼を蓄積するのは長い時間がかかるもの。即効性を期待しない方がよいでしょう。仮に信頼貯金はないが、今すぐ影響力を発揮したい――例えば、会議などで通したい意見があるといった状況ならば、自分以外の人を使うのもアリです。貯金が貯まっている人に後押ししてもらったり、その人の意見として出してもらったりするのが賢い方法でしょう。
自分が発言するのが目的か、意見を採用してもらうのが目的なのか……自分が影響力を発揮したい場面では、何がゴールなのかを考えて、人でもツールでも、工夫して使っていくのが得策です。
Q:ビジネスでは「信頼」が大事と言われていますが、信頼を得るために気を付けることはありますか?
A:信頼は“貯金”のようなものだと考えてください。約束を守り続けることによって貯金は貯まっていき、一定額を貯めれば周囲に影響力を発揮できます。しかし、ネガティブワードや約束を破ることで一気に貯金は減ります。貯まりづらく、なくなりやすいものだと知ることが重要です。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.