「仕事の目的や手段をていねいに説明したほうがいい」。それは分かっているつもりだけど、“メンドクサイ妖怪”のせいで行動できない……。そんな人は多いと思います。今回は怠惰な自分を乗り越え、新たな行動を起こすためのコツをお教えします。
職場で感じるストレスの原因は、うまくコミュニケーションがとれないことによるものが多いようです。本連載では、伝え方や接し方、聴き方に至るまで職場でよくあるエピソードをもとに、仕事や物事がより円滑に進むようなコミュニケーションや考え方のヒントをご紹介します。言葉を受ける側の立場や気持ちを理解し、自分が発する言葉について見直してみてはいかがでしょう。
※本連載は「誠Biz.ID」と「ITmedia エンタープライズ」の統合に伴い、今後はITmedia エンタープライズで掲載いたします(編集部)。
よいチーム、よいマネージャーへの“第一歩”は、部下にしっかりと仕事を頼めるようになるところから。前回の連載では、チームメンバーが同じ方向を向き、指示に従って結果を出す仕事の振り方について、上司が「何のために」「何を(どの程度)するか」をていねいに伝え、チーム内で共有することが必要だと書きました。
これはチーム運営の基本ではありますが、完璧にできているリーダーは少ないのが現実でしょう。この手の話をすると、リーダーからは「仕事の目的と手段なんて、分かっていて当たり前」と、自分の常識を相手に期待したり、「そんなことも分からなかったのか」と驚く反応がみられます。
しかしよく話を聞いてみると、実は「言った方がよいことは分かっていた」、つまり、頭では分かっているけどできない/やってない、と面倒に思っているリーダーが多いことが分かります。分かっていてもできない――そんな経験は皆さんにもありますよね。
なぜ頭で分かっていてもできないのか、そして、どうすればそれができるようになるのか。今回はこの「何だか面倒くさい」を乗り越えるコツをご紹介します。
そもそも、頭で分かっていても、実際に行動することを“面倒”だと思うのはなぜでしょうか。
この理由は一言で言ってしまうと“惰性”です。例えば、仕事の目的や手段を説明すれば、面と向かって反対する部下もいるかもしれません。そういった予想外の反応に対応するのは、大きな労力を使います。それよりも、いつものやり方で想定内の反応や結果が出る方が、楽で心が落ち着くのです。これを「能動的惰性」と呼びます。
環境が変わったにもかかわらず、過去に成功した方法に頼って、仕事に取り組んでいる人は周りにいませんか? 彼らは自分の行動を変えることで、起こりうる変化を“面倒”だと感じているのです。
仕事の目的や手段を説明した場合、部下が今までと異なる反応を示すのはごく当たり前の話です。特にそれが相手にとってショックなことだったり、ネガティブなものだった場合、相手の反応は以下のようなものになるでしょう。
こうした心の動きは死を迎える末期患者の心の過程と似ています(参照:エリザベス・キューブラー=ロス著『死ぬ瞬間』)。上司が直面するのは、部下の感情が表面化する“怒り”や“取引”といった部分でしょう。こうした否定的な感情を抱かれることを恐れ、それが面倒くささとなって表れるのです。
では、どうすればこの“面倒くささ”を乗り越えられるのでしょうか。
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