分かっちゃいるけど行動できない――妖怪「でも、メンドクサイ」を倒す方法そのひとことを言う前に(2/2 ページ)

» 2015年04月09日 07時00分 公開
[岩淺こまきITmedia]
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面倒くささを上回る“欲求”を設定する

 部下の“いつもと違う反応”は当然出てくるので、腹をくくって2や3で表面化した思いに、誠実に対応することをお勧めします。

 むしろ部下が感情をあらわにしたときがチャンス。相手の意見を聞き、自らの意図をじっくりと説明するのです。ここが最も大事なコミュニケーションでしょう。部下の理解を得られれば、自主的な行動が見込めるからです。

 「それが面倒なんだよ」と思う人も多いはず。そのときは自らの“欲求のチカラ”を使いましょう。食べたい、寝たい、遊びたい――人は自らの欲求を満たすために行動しています。いつもと違い、仕事の目的や内容をていねいに伝えたくなるよう、自らの欲求をエンジンにします。

 まずは行動の理由付けをしてみましょう。面倒だと思ったときに、「仕事の目的や内容を伝えるのはなぜだったか」と自分に問いかけてみてください。その理由は個々人によって違うと思いますが、例えば「成果を出したいから」と思ったとしましょう。この「成果を出したい」という欲求と「同じやり方でラクをしたい」という欲求を天秤にかけるのです。これで「成果を出したい」という欲求が勝てば、行動を起こせるはずです。

 しかしここで「ラクをしたい」が勝ってしまったら……。それでも諦めるのはまだ早いです。そのときは、「成果を出したい」という欲求をさらに進化させます。成果を出せば何が起こるかを考え、「ラクをしたい」に勝る理由をつけるのです。例えば「成果を出して、査定のときにアピールする」「成果を出して、転職面談の材料にする」など、より高次元の欲求を満たせる形に変えるのです。「ラクをしたい」を上回る欲求にたどり着いたとき、「じゃ、やってみるか」という気持ちが起きるでしょう。

部下に伝えるときは“ラジオDJ”の意識で

 「やってみるか」となれば、後は部下に話すだけ。部下にうまく伝えられるか自信がないという方は「ラジオDJ」を参考にしてみてください。このようなセリフを聞いたことはありませんか?

 「今日のテーマはこれ、ゲストに○○さんをお迎えして、□□について語ってもらってます。実は○○さんは先日□□の分野で、1つ面白い発見をされた、ということで、今日はみなさんに◎◎してもらおうって思ってまーす……」

 よくありがちな言葉に聞こえますが、ここに大事なポイントが含まれています。彼らはリスナーに定期的に状況をアナウンスし、今この瞬間から聞き始めたリスナーでも内容を把握できるように努めています。

 部下に仕事を伝えるときも、この心構えが大切です。上司は部下よりも経験が豊富なぶん、油断していると自分の経験や考えという“前提(コンテクスト)”を基に言葉を考え、それが相手に伝わるだろうと期待して話してしまいます。どのような状況で仕事の目的や手段を聞かれても、相手が今そのプロジェクトを始めたばかり、初めて聞くものだと思って説明してみてください。

 これをビジネスにおきかえると前回記事の最後で紹介したセリフになります。こうしたことを心がければ、妖怪「でも、メンドクサイ」を倒すことができるはず。部下が思った行動をせず、成果が出なくて四苦八苦するより、最初に少し時間がかかっても納得感をもってコミットさせたほうが、その後のチームの運営は必ず楽になるはずです。

今回のまとめ

Q:仕事の目的を部下に説明したほうがいいのは分かってます。でも頭で分かっていても、何か面倒に感じてしまって行動に移せません。

A:いつもと違うことをするのは、普通は面倒に思うもの。まずは「面倒」だと感じたことを自覚して受け入れ、面倒に感じる心を上回る欲求を設定しましょう。部下に仕事の目的を伝えるときには“ラジオDJ”を参考にするのがオススメです。


著者プロフィール:岩淺こまき

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 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師

 大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。


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