「何がやりたい?」に答えられない若手にはそのひとことを言う前に(1/2 ページ)

秋になり、部署異動になったという人も多いはず。異動してきた新メンバーのモチベーションを探るために上司が「何がやりたい?」と聞くケースもよく見受けられますが、これが両者のすれ違いを起こす引き金になってしまうことも多いのです。

» 2014年11月06日 08時45分 公開
[岩淺こまき,Business Media 誠]

連載「そのひとことを言う前に」

 職場で感じるストレスの原因は、うまくコミュニケーションがとれないことによるものが多いようです。本連載では、伝え方や接し方、聴き方に至るまで職場でよくあるエピソードをもとに、仕事や物事がより円滑に進むようなコミュニケーションや考え方のヒントをご紹介します。言葉を受ける側の立場や気持ちを理解し、自分が発する言葉について見直してみてはいかがでしょう。


 2014年度も下期に入り、部署異動になった人も多いと思います。それに伴って、顔合わせや目標設定など、マネージャーは部下や新メンバーと面談することが増えているのではないでしょうか。現代のマネージャーは実務も行うポジションであることが多く、普段コミュニケーションをしっかりとる時間が少ないケースもあるでしょう。こういった機会を生かして、同僚の気持ちを掴んでおきたいところです。

 しかしながら、面談を行うことで同僚を理解するどころか、誤解を生んでしまい、相手のモチベーションが下がってしまうケースも少なくありません。研修を行っている中で次のようなエピソードを聞きました。

 Aさんは製品をPRする部署のマネージャー。部下は6人おり、そのうち2人は今回の部署移動で新しく入ってきたメンバーです。今後の目標などを設定するために面談したとのことですが、あまり意欲が感じられなかったそうです。

上司: 異動して少し経ったけどどう? 慣れた?

新メンバー: はい。おかげさまで、なんとなく雰囲気は分かってきました。

上司: 今日の面談では今期というか、ウチの部署で今後何をやっていきたいか、聞きたいんだ。君はどんな事に興味ある?

新メンバー: 興味……ですか。そうですね。まだ部署のことをなんとなくしかつかめてないので……。

上司: そうなんだ(少し経ったのに、まだそんな事言ってんの? なんとなく分かってきたって言ってなかったっけ?)。じゃあ、君はウチの部署で何がやりたいの?

新メンバー: ……うーん、まだ漠然としていて。

上司: (やりたいこともないの? やる気ないなあ)やりたいこと、ないの?

新メンバー: いや、そういう訳ではないですけど……。

上司: (はっきりしないなあ。うちの部署でやっていけるのかな?)

 周囲からの評価が高い人だったので、期待して面談に臨んだのにがっかりした……という話だったのですが、この新メンバーは本当にやる気がないのでしょうか。

新メンバーに“ふんわり”質問はNG

photo 「何がやりたいの?」と聞かれて困ってしまった経験はありませんか?

 新メンバーや異動者(特に希望して異動してきていない人は要注意)などに対して、いきなり「何がやりたいの?」「何に興味あるの?」など“ふんわり”した質問をするのは基本的に避けた方がよいでしょう。

 ケースにもあるように新メンバーは異動してきたばかりで、新しい部署の状況をきちんと把握できているわけではありません。考える手がかりが少ない段階で、興味ややりたいことを自信を持って言える人は多くはないはず。仮に自分の思いを口にしたところで、それはこの部署で求められていることなのか、上司の意向に沿わなければ“不勉強”だと思われるのではないか――そんな恐怖心も発言をためらわせる原因となります。

 こうなってしまうと、上司は新メンバーを「やる気がない」と誤解しかねません。そして今後、さまざまなやりとりを“やる気があんまりないヤツ”というバイアスがかかった状態で行うことになります。この状態が危険なのです。

 人間は何かを評価するときに、ある1つの特徴が全体的な判断に影響して、評価全体が歪んでしまう傾向にあります。有名人が「おいしい!」と言っている店のメニューおいしそうにみえた……そんな経験はありませんか? 成功した実業家の人生観などを語ったような本が売れてしまうのも、この代表例と言えます。仕事で成功する能力と人生観は本来、直接的な相関関係はないはずです。これを心理学用語で「ハロー効果」と言います。

 つまり、一度“やる気があんまりないヤツ”というレッテルが貼られた状態で新メンバーを見ると、どんな言動でもやる気が感じられにくくなるのです。これでは仕事の割り振りもコミュニケーションも円滑にできません。新メンバーも、上司から軽んじた目で見られることで、はじめにあったであろうやる気も徐々に失せてしまいます。これでは誰も幸せになりません。

 こうした誤解は、上司が新メンバーへの質問を工夫することで避けられます。その解決策を見ていきましょう。

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