『21世紀の歴史』――パクス・アメリカーナ後に押し寄せる“三つの波”:藤沢烈の3秒で読めるブックレビュー
サルコジ政権でフランス変革のための政策提言をしているジャック・アタリ。彼の著書『21世紀の歴史』で予想している“三つの波”とは何か。
ミッテラン政権で大統領補佐官をつとめ、サルコジ政権では「アタリ政策委員会」委員長としてフランス変革のための政策提言をしているジャック・アタリ。現代フランスを代表する知性である彼が、混沌する世界を展望したのが『21世紀の歴史』である。
世界に押し寄せる三つの波とは
アメリカを中心とした世界は2025年に終わり、その後三つの波が世界に達するという。
第一の波は「超帝国」。教育、医療、軍事までもが、国家の衰退にともない私企業の役割になる。政府を市場が、民主主義を資本主義が破壊する。一製品を市場に送り出しては解散する劇団型企業と、彼らを市場に紹介するサーカス型企業が主なプレイヤー。そうした企業を所有するのは、世界を渡り歩く超ノマドという人々だという。
第二の波は「超紛争」。国家弱体化のために地域紛争が続発。そのプレイヤーとして非国家の武装集団「海賊」が生まれる。安い武器の広がりとともに、世界中で紛争とテロが起こり、今のアフリカの状況が先進国にも伝播する。ソマリアに限らず、中東やアフリカでも既に海賊は勢力を伸ばしている。
第三の波は「超民主主義」。アタリの希望でもある。市場を作るメンバーであることを辞め、海賊へも加担しないトランスヒューマンと、世界の課題を解決する調和重視企業が世界にバランスを取り戻す。
あなたの仕事は、世界を破滅させる
会社と顧客に尽くし、新しい市場を創りだすことに疑問を持つ人はいるだろうか?
アタリに言わせれば、そのことが監視社会を生みだし、世界に紛争をもたらす。日本の社会起業家たちも、一歩間違えれば市場の膨張に加担してしまうだろう。数十年単位で世界を展望した上で、自分の仕事を見直す時期なのかもしれない。
著者紹介 藤沢烈(ふじさわ・れつ)
RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在1000冊超。
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「これからの日本に必要なのは、革新的な経営感覚を持った若き経営者だ」――そう考え、有望な人材の発掘・育成のサポートに日々邁進する経営コンサルタントがいる。藤沢烈、33歳。マッキンゼー出身、現在は独立してベンチャー企業のコンサルティングを行う、彼の日常とは? - 1人シリコンバレー創業プロジェクト、そして――藤沢烈さん(後編)
「エゴは罪悪ではない」「200年先を見据えて考える」――思案しながら藤沢さんが選びだす言葉は非常にユニークだ。その彼が企画したのは“起業経験がない若い人に、1億円出資します”という一大プロジェクト。彼の思いは、そこに至るまでの人生とは……?
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