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左右の脳をバランスよく鍛えて神経細胞をスパークさせる――3つの方法&そのテスト最強フレームワーカーへの道

イーグルスやレッド・ツェッペリンに憧れて購入したギター。演奏するのには右手と左手のコンビネーションが重要だ。この両手を別々に動かしているのが右と左の脳。左右の脳をバランスよく鍛えて、神経細胞をスパークさせよう。

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 中学生(注1)の時に初めてギター(注2)を買った。イーグルスやレッド・ツェッペリンに憧れて、ギターの練習を始めたのだ。最初は左手で弦を押さえたり、右手に持ったピックを振り下ろしたりするのもままならなかったが、数週間もすれば、簡単なギターソロが弾けるようになった。

実は普段から使っている

 この「ギターを弾く」という行為は、左手と右手の絶妙なコンビネーションで実現する。楽器(注3)だけではない。りんごの皮をむく、針の穴に糸を通す……などなど、生活に関わる多くの行為に左手と右手のコンビネーションが必要だ。この原稿を作成するために、キーボード(注4)をたたくのも同じことである。

 この時、左手は右がコントロールし、そして右手は左脳がコントロールしている。つまり、このたわいもない手作業のために左右の脳半球は活発に交信しなければならない。脳の神経細胞は、無意識下でも微細な電気を発しながら必死に情報処理を行っている。「手が勝手に動く」「体が覚えている」と言うが、意識していないだけで、左右の脳にしっかりと刻み込まれているからに違いない。ちなみに、脳内の活発な動きをイメージするのにちょうどいい学術ビデオがYouTubeに上がっている。

 左右の脳が反対側の運動機能をコントロールしていることは広く知られている。身近なところでは、祖母が脳卒中で倒れた時に、ER(救命室)で「右脳細胞のほとんどが損傷しているので、左半身は動かないでしょう」と言われたが、実際その通りだった。そして運動機能だけでなく、左右の脳で各々異なる機能を持つことが、昔からいろんな実験で明らかになっている。

 古くはてんかん患者に脳梁切断手術を行うと左右の脳が別の機能を持つことも分かった。また現在は、MRIなどがあるので、健常者の脳の動きなども観察できるようになった。私の母校である九州大学の研究室では、左右の脳の個別の働きを分子レベルで研究している。

左右バランスよく――をテストし、鍛える方法

 前置きが長くなった。今回の本題は、脳は片方だけを鍛えてもダメですよ、ということだ。ちまたには右脳を鍛えよ! 普段は左脳ばかり使いすぎ! といったステレオタイプの本が雨後のたけのこ状態で並んでいるが、右脳だけではダメである。日常生活で左脳だけを使うことは考えられず、芸術家だからといって右脳ばかりを使っているわけでもない。また、左右の脳半球で何を処理しているかは個人差が極めて大きい問題でもある。

 ただし、これだけは言える。重要なのは、「左右のバランス」である――ということ。試しに学術的根拠はまったくないが、右脳度と左脳度を測定するというWebサイト「右脳、左脳おもしろ診断」テストしてみた。15の質問に答えるだけなので時間のある人はやってみてはどうだろうか? ちなみに私は60点。バランスはまずまず、と言えるだろう。


やってみたら60点。こんな解説が出た。「素晴らしい! 右脳と左脳がうまくかみ合っています。あなたが考えたことを誰にでも納得させる力があります。なぜなら、あなたは右脳で全体を捉えることができ、しかもこれを誰にでも分かるように理論付けできるからです。まるで、あのアインシュタイン博士のようだ!」

 90%の人は、言語をつかさどる言語野が左脳にあると言われている。そして、反対側の脳では映像や音楽などの非言語をつかさどるという。左右の脳の間には脳梁があり、無数の信号を交信している。脳はその能力の数パーセントしか使われていないとよく言われるが、そのキャパシティは左右脳全体のことである。片方の脳だけに負荷をかけてもバランスが悪ければパフォーマンスは引き出せないのだ。知的生産力を向上させるキーファクターは、左右をバランスよく使うことを心がける事である。

 一番簡単な左右をバランスよく使う方法は、言語を映像や音楽に、映像や音楽を言語に、自分の中で転換してやることだ。最近は、アニメーションや映像作品が身近になっているため、想像を働かせることが少なくなった。昔ながらのやり方ではあるが、日常的に次のようなことを心がけるといいと思う。

  • 小説を読んで場面を詳細にイメージしてみる(主人公の顔、髪の色、服装はどんな感じ? 手帳に簡単な絵を描いてみる)
  • 物語をベースに音楽のフレーズを考えてみる(場面や登場人物の心の動きをフレーズにしてみたらどんな感じ? 口ずさんでみて)
  • 絵を見て、それに似合う詩を作ってみる(できれば絵そのものではなく、感じ取れるテーマを考えてみる)

 このように表現形態の転換を図ることで、左右脳が活発に交信し、神経細胞がスパークし、自分のキャパシティを拡張させられるわけだ。身体においても、左右のゆがみが頭痛や肩こり、ひいては大病につながるように、左右どちらかに偏重する思考方法はよろしくない。ぜひ「書を持ち、旅に出よう」ではないか。そこで感じたこと、触れた空気を言語、非言語にどんどんコンバージョンしてみてほしい。

(注1)学生

(注2)ギター

(注3)楽器

(注4)キーボード

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com


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