その支払いに“主従関係”は入っていない:アラフォー起業家の“継続拡大”人脈術
どうしても、お金を払う側が強くなって、払われる側の立場が弱くなってしまうことがある。だが下手にこれをやってしまうと、その発注先と良好な関係が築けなくなってしまうのだ。
わたしの会社は、広報やマーケティングのコンサルティングを行っているので、クライアント先にお邪魔することがある。作業の代行もしているが、「ブレーン」的な役割もさせていただいており、アドバイスを差し上げたり、一緒にプランニングをさせていただくことも多い。
弊社も社外の人間が社内にお邪魔して、フィーをいただいているので、いわゆる「出入り業者」(発注先)の位置づけかもしれない。
この「業者」という言葉が曲者である。どうしても、お金を払う側が強くなって、払われる側の立場が弱くなってしまうことがある。幸いにも当社の場合は、「上から目線」で命令されたりしたことはほとんどない。
だがわたしがTumblrでReblogした、とあるエントリはつらい目にあった体験談だった。
これほどではないにしても、自分がお金を払う側だということで、高飛車な態度に出てしまう人がいる。だが下手にこれをやってしまうと、その発注先と良好な関係が築けなくなってしまうのだ。そしてそれがその後の人脈にも影響してくる。
ビジネス経験の長い知人(Aさん)がいる。Aさんは、不運にも急なリストラに遭ったのだが、お付き合いのあった広告代理店から「うちで働きませんか?」と言われ、よいポジションで迎えてもらったという。Aさんは、その広告代理店の担当者と協力し合い、よい広告を作り上げるという目標のもと、ビジネスパートナーとして対等な立場で長年広告を作ってきた人である。もし、その広告代理店を「出入り業者」としてあごで使っていたなら、いまだにAさんは就職活動を続けていた可能性がある。
わたしの場合も、以前の職場などで発注をしていたライターさん、Web製作会社さんなどとも引き続き交流をさせていただいている場合もある。また、情報交換をさせてもらっており、有益な情報をいただくことも多い。お互い妙な主従関係がなかったために、良好な関係が築けていると思っている。
「発注先の業者より、お金を払う自分が偉い。こっち金を払ってやってるんだ。いくつもある業者から選んでやったんだ」と思ってしまうと、もしかしたらその時点で大事な将来の人脈候補を自ら切ってしまっているかもしれない。お金は確かに払うが、ちゃんとした対価をいただいているのである。
逆に言うとお金を払うから自分が上だという論理は成り立たない。よって妙な主従関係を持ち込まないほうが最終的には得だ。下手をすると権力をふりかざしたせいで、成果物の出来不出来にも影響する恐れすらある。
相手の人柄や能力を尊重し、コミュニケーションしていくことは、人脈作りの基本。そういう意味では、何も有名人と名刺交換をしなくても人脈は作れると思う。
著者紹介:加藤恭子(かとう・きょうこ)
IT誌の記者・編集者を経て、米国ナスダック上場IT企業の日本法人にてマーケティング・広報の責任者を歴任。外資系企業ならではの本社へのリポートの方法や、離れた地域にいる国籍の違う同僚とのコミュニケーションを通じて、効率よく実施する仕事のノウハウを高める。現在は、その経験を生かし、IT企業・組込み系システム企業のマーケティング・PR(広報)のコンサルティングを行うビーコミの代表取締役として活動。日本PR協会認定PRプランナー。
日経BP社、翔泳社、アイティメディア、ダイヤモンド社、アスキーなどで連載や記事も寄稿。インターネットを活用したコミュニケーションも研究しており、複数の学会などでブログコミュニケーションやネットPRに関する発表をしているほか、「CGMマーケティング」(伊地知晋一著、ソフトバンククリエイティブ刊)の編集協力も務めた。青山学院大学国際政治経済学研究科修士課程修了。現在は某大学院の博士課程に在籍し、引き続きコミュニケーションを勉強中。
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