ひょうたんからコマでデブリ対策委員会:樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」
計画マンの筆者は海外だけでなく日本国内でも未来の計画を立てていた。発表の場は懸賞論文。とある論文を応募したところ、なんとデブリ(宇宙ゴミ)の対策委員会設立につながってしまったのだった。
ここ数回、未来を計画する「計画マン」シリーズを続けているが、今回はひょうたんからコマの話である。
掃除は掃除でも……
日本でもいくつか未来予測を立てていた。国内団体や機関が発表している論文に応じるという形でだ。特に21世紀直前には、「21世紀の〜」という未来予測の論文募集がたくさんあった。こうした論文には、自分自身の未来予測能力を訓練するためにも、できるだけ応募することを決めていた。
その内の1つは、読売新聞社、郵政省(1990年当時)などの主催による「21世紀フォーラム 宇宙へのカウントダウン 宇宙産業への試走」という論文応募である。筆者の論文テーマは「宇宙の産業開発のためには、まず軌道上の掃除」。実は、筆者が頭を捻っている時に、ヨメサンが「宇宙の産業開発よりも、うちの掃除よ」と皮肉ったことで思いついたのだった。
なお軌道上の掃除とは、いわゆる「デブリ(宇宙ゴミ)」の問題だ。デブリは、衛星軌道上に浮かぶ廃棄物やゴミや人工衛星などの破損ゴミなどのこと。それぞれが超高速で漂っていて、危険でしかたがない。わずか数ミリの破片ですら超高速で衝突すると、衛星の太陽電池を破損させたり、船外活動をしている人命に損傷を与える可能性がある。
大きなデブリは軌道上で回収してリサイクルや、微小な破片に耐える宇宙産業規格の設備が必要だと主張したのが、論文の主旨。ヒントを与えてくれたヨメサンと共著で出した論文「宇宙物体掃空システムの提案」は、最優秀賞になった。郵政省はこの論文の翌年、デブリ対策の委員会を設立した。計画マンはすごくうれしかった。
ベトナムではどうだった?
ちなみに前回触れられなかったベトナムでの話もしておこう。1997年、筆者が2年間のベトナム駐在を終えて帰国する前日にベトナムの郵政公社に行った。日ごろお世話になった局長に帰国のあいさつをするためだ。その時、筆者はベトナムの通信行政についての未来計画を局長にぶつけたのだった。
ベトナムは北(ハノイ)と南(ホーチミン)で発展している。いわば発展の2極化だ。一方、フエやダナンなどの中部地方の発展が遅れている。中部地方の発展のために局長には、通信の近代化を進めることを説いた。帰国後、ベトナム政府が地方向けの通信行政マスタープランを作成したと聞いた。計画マンの一言が役に立ったのかもしれない。
今回の教訓
それで家の掃除はどうなったんですか?
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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)
1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら。アイデアマラソン研究所はこちら。
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