源泉徴収票の見方、教えます:個人事業主もサラリーマンも読める「税金の話」(3/3 ページ)
個人事業主もサラリーマンも、知っておいて損はない「税」の話。今回は一般になじみ深い「所得税」の計算ロジックを考えてみよう。
配偶者控除は奥さんがいると受けられる控除だ。「103万円の壁」という言葉を聞いたことがないだろうか。配偶者控除と配偶者特別控除の分かれ目が「103万円の壁」だ。配偶者控除の対象となるのは、所得が38万円以下の奥さんだ。ここで言う所得とは給与所得のことで、
- 給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得
給与所得控除は最低でも65万円なので、年収が103万円の奥さんの給与所得は38万円となる。年収で103万円、月額85,800円以下なら全く働いていない専業主婦と同じ、満額の38万円が配偶者控除として受けられる。これを越えると配偶者特別控除の対象となる。所得が38万円を越え76万円未満(年収103〜141万円)の場合、段階的に控除額が減り76万円以上になると0円となる。
扶養控除は対象となる子供や老人の年齢によって控除額が異なってくる。一般の扶養親族の場合の控除額は38万円だが、12月31日現在の年齢が16歳以上23歳未満(ざっくり言うと高校生、大学生)の特定扶養親族の場合は、控除額が25万円増えて63万円、70歳以上の老人扶養親族の場合は、同居老親等(自分又は妻の直系尊属で、常に同居している人)なら控除額が20万円増額されて58万円、同居老親等以外(ようするに別居)は10万円増額されて48万円となる。年齢に関係なく同居特別障害者である場合は、控除額がさらに35万円増額される。
− | 控除額 | 同居特別障害者の場合 |
---|---|---|
一般の扶養親族 | 38万円 | 73万円 |
特定扶養親族(16歳以上23歳未満) | 63万円 | 98万円 |
老人扶養親族(同居老親等以外の人) | 48万円 | 83万円 |
70歳以上の老人扶養親族(同居老親等) | 58万円 | 93万円 |
扶養親族も所得が38万円を越えると対象とならないので、アルバイトでガッツリ稼いでる女子大生は扶養控除の対象外だ。年金生活をしている親も158万円を越えると対象外となる。ただし遺族年金はここで言う年金には入れないので、母親1人の場合は年金額を1度確認してみるといいだろう。
もう1度、源泉徴収票の細かな部分を見てみよう。先ほどの金額が書かれた行の一段下を見ると、配偶者(有)に*印、扶養親族(その他)に1人、社会保険料等の金額に71万円、生命保険料の控除額に5万円と書かれている。これらを金額にすると、配偶者控除が38万円、扶養控除が38万円、社会保険料控除が71万円、生命保険料控除が5万円、何も書かれていないが一律受けられる基礎控除が38万円。これらを合計すると控除額は
- 38万円+38万円+71万円+5万円+38万円=190万円
となる。これが「所得控除の額の合計額」の覧に書かれた金額の内訳だ。「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いた410万円が課税対象額となる。はたして鳩山一郎さんの所得税はいったいいくらになるのか。
所得税は課税所得によって税率が異なってくる。課税所得と税率は以下の通りだ。
課税所得 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円〜330万円 | 10% | 9万7500円 |
330万円〜695万円 | 20% | 42万7500円 |
695万円〜900万円 | 23% | 63万6000円 |
900万円〜1800万円 | 33% | 153万6000円 |
1800万円〜 | 40% | 279万6000円 |
表を見ると勘違いしやすいが、195万円の人は5%で200万円の人は10%になるわけではない。200万円の人は195万円の5%=9万7500円と、超えた5万円の10%=5000円を足した10万2500円が所得税となる。
計算の方法は、式にすると
- 課税所得×税率−控除額
となり、課税所得が200万円の場合
- 200万円×0.1−9万7500円=10万2500円
鳩山一郎さんの場合は課税所得が410万円なので
- 410万円×0.2−42万7500円=39万2500円
となる。源泉徴収票の源泉徴収税額にはこの金額が記入されている。サラリーマンの場合は毎月の給料から所得税が引かれ(源泉徴収され)、年末の給料で最終確定した税額が年末調整されているので、すでに税金は納付済みとなる。景気後退で冬のボーナスが激減したりすると、年間の税金も減るので、年末調整で思った以上の金額が12月の給与明細に記されていたりするものだ。
個人事業主の場合は、確定申告後に決まった所得税を納付する。原稿料の様に振り込まれる段階ですでに10%の源泉徴収されている場合は、その分を差し引いた額を納税する。納めすぎている場合は1カ月ほどで還付される。
所得税の計算ロジックはなんとなくご理解いただけただろうか。次回は住民税について考えてみたい。
関連記事
- 第1回 まずは税金ってナニ?
【短期集中連載】税金というナゾ。会社勤めの人でも覚えておくと損はない基礎的な知識を、筆者が独立するにあたり実際にいろいろやってみて知った中からお伝えしていこう。 - 第2回 儲けたら節税
前回は税金の仕組みの概略を説明した。でも税金で一番知りたいのは、どうやったら減らすことができるかだろう。フリーランスの人が“領収書”を気にする理由、教えます。 - 第3回 青色申告ソフトを実際に使ってみた
前回、前々回と税金とは何か、そして税金を節約するにはどうすればいいかを紹介した。ここからは、個人事業主の青色申告に欠かせない「青色申告ソフト」を実際に使ってみる。 - 第4回 最も重要な伝票入力を比較してみた
筆者のようなフリーランスでも、年間の伝票枚数は1000枚近い。青色申告ソフトを使う上で“伝票入力”が簡単かどうかは非常に重要な点だ。その点について、「やよいの青色申告」「みんなの青色申告」「やるぞ!青色申告2008」のそれぞれを見ていこう。 - 最終回 決算処理を比較する
税金のキソから節税、各青色申告ソフトのインストール、さらに各ソフトへの伝票入力と進んできた今回の短期集中連載。最終回は入力したデータを元に、申告のために必要な決算処理の出来を見ていこう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.