書類の整理に「三段トレイ」を使わない理由:机を基地化せよ(2/2 ページ)
机周りを整理整頓する行為は、意外に体力を使います。しかし気分転換になったり、あえて決まったスペースを作っておくことで、仕事の効率化につながることがあるのです。
僕が「三段トレイ」を使わない理由
やや本筋から外れますが、僕が三段に分かれているトレイ状のレターラックを使わない理由を述べておきます。質問される機会が多いためです。
正確に言うと、かつては使っていたことがあるのですが、やめました。
使い始めたきっかけは、恐らく同じ質問をされた多くの人と同様に、デビッド・アレン氏の提唱している「GTD(Getting Things Done)」の一環でした。
三段ラックに関係する部分だけかいつまんで述べると、あらゆるタスクを収集して紙に書き出し、まず1つの棚にすべて突っ込んでその中から特に急ぐ必要のないものと今日中にやるべきものを分ける、というものです。
しかし僕の場合は、実際問題何をもって1つのタスクにするかによって処理に深刻なばらつきが生じてしまい、正直なところあまりワークフローが改善されることはありませんでした。それどころか、運用してみると思わぬデメリットがあることを体感したのです。
三段のレターラックを机に置いておく意味は、僕の中ではあくまでGTDの運用のためなのですが、同僚たちは決してそうは思ってくれません。
よく考えれば当たり前です。GTDに関心を持っている人などごく少数で(少なくとも僕が実際にレターラックを使っていたときに、それがGDTの一環であることに気づいた人は皆無でした)、そのほかの人たちには「あ、美崎さんレターラックを新調したんだ」としか思われません。
僕としては下の段にタスクを投げ込み、まず急ぐ必要がないものを中段に今日必ずすべきことを上段に分けて運用していました。しかし席を外しているときに、ダイレクトメールなどの大して重要ではない郵便物や、今すぐ読む必要のない資料、至急決裁を必要とする付せん付きの書類などが、レターラックの上段にどんどん雑多に積まれてしまうのです。
自分は、上段に最も重要なアクティブなタスクを分類しているつもりなのに、旗でも立ててそれを明確に主張しておかない限り、ほかの同僚にとってそんなことは絶対に分かりません。見てくれはあくまでただの三段レターラックなのですから、同僚たちを責めるわけにもいきません。「えっ、だってここに置いてほしかったんじゃないんですか?」と言われるのがオチです。
確かに客観的には、「ここに郵便物や回覧物を入れてください」と僕のほうからパスコースを示しているようにしか見えません。すると、GTDどころではなくなってしまいます。自分の意図しないところで優先順位の異なる書類が紛れ込むのですから、何が何だか分からなくなってしまいます。
最悪のケースでは、誰かの出張のおみやげのお菓子(!)までが置かれていました。特に多忙なときには、仕事に大きな支障をきたす危険性もあります。こうして僕は、三段レターラックを置くのをやめたのです。
パスを出してほしいスペースを空けておく
机を秘密基地化するに当たっては、自分に与えられている机やスペースに関しては、可能な限り他人の干渉、介入を避けることが大切です。机の正面、つまりいすに座った本人とPCキーボードやモニターの間は、常にきれいな「更地」であることが好ましいのです。
しっかり中心部が更地になっていれば、余ほどのことがない限り離席中に届いた回覧物や郵便物、電話のメモなども、そこに置かれるでしょう。相手からのパスのコースをコントロールするわけです。「パスはここに出してね」と。そして席に戻ったら、自分の意志で必要なものと捨てるもの、急ぎのものとそうでないものを仕分けます。
著者紹介:美崎栄一郎(みさき・えいいちろう)
会社員時代から文房具が好きで、文具術や仕事術に関する書籍を複数出版し、勉強会なども主催。2011年にフリーランスとなり執筆や全国で講演活動などを行っている。本連載の基となった書籍『超iPadバカ 2000種類のアプリをためした男のすごい活用術』(アスコム刊)のほか、著作に『結果を出す人はノートに何を書いているのか』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション刊)『iPadバカ』(アスコム刊)、『アイデアは才能では生まれない』(日本経済新聞出版社刊)、『がんばる人ほど見落としている気づかいの極意』(フォレスト出版刊)などがある。
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