デジタル時代に「ノートに書き留めること」:3分LifeHacking(2/2 ページ)
PCやスマートフォンやタブレットが普及しているいま、メモを取る方法はいくらでもあります。ここでは筆者が気に入っているアイデアをとどめておくための方法を紹介します。
紙を使う理由
デジタル時代に満足している人なら、たくさんあるメモ用アプリを使うことで、アイデアを簡単に残しておくことができるでしょう。私の場合は、仕事用にEvernoteを使い、ほとんどのアイデアをGoogle Docsに保存していますが、それを除けば、アイデアを記すための一番のメディアは、今でもペンと紙です。
使いやすい5×3インチのメモ帳をいつも持ち歩いて、約1カ月で使い切ります。紙を使う理由の1つは、即座に使える機能性があるため(アプリを開いてファイルを探す必要がないですよね)。もう1つは、スマートフォンのタイピングがとても苦手で、文字入力に余計な時間がかかるためです。
でも、それだけではありません。私のひどい筆跡は「5歳児」か「平均的な医療従事者」かと思うほどで、自分で書いた文字を解読できないことさえあります。しかし手書きすることは好きなのです。私はタイピングをしているとあまり集中できないし、考えに指が追い付いていかないので、必要な語句が抜けてしまうことがよくあります。手で書く時は、どうしてもゆっくりになるので、思慮深くなることができます。
私のメモ帳から、いくつかのメモをランダムに取り出して見てみましょう。
- ニュートン市で起こった乱射事件に関するニュースの見出し:「この事件がどうして起こったか分からない、と子どもたちに説明しても問題ないと専門家は話している」
- 抗鬱薬を投与された魚は群れから離れる
- 双子のElementalとEphemeralの短編小説
- ソロモンより:「最大のストレスは屈辱。それに次ぐストレスは損失。生物学的脆弱性を持つ人々にとっての最善の防御は、外部からの屈辱を和らげ最小限にしてくれる『満ち足りた』結婚だ」
どれも何かのアイデアです。想像力をかきたてる何かだったり、関連性がありそうに見えるものや、あるいは共感したり逆に納得できないからこそ引っ掛かったちょっとしたニュースだったり。すべて今取り組んでいる仕事のネタか、トピックについての考えです。
ただ私にとっては、直感的にうまくいかないと思うアイデアも記録することが大事です(ElementalとEphemeral? 確かにこれは、飲んでいた時にメモしたものです)。こうしたメモには、たまにですが何か良いアイデアの兆しが含まれているのです。これらのメモは「試すだけの価値がある良いアイデアがある」と私に思い出させるために存在しています。
私が参考にしているのは、18世紀に活躍したドイツの物理学者、ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルクの『Waste Books』です。リヒテンベルクには科学的な功績もいくつかあったのですが、彼が書き記し、のちに息子たちが出版した『Waste Books』が有名になったことで、科学的業績がその影に隠れてしまいました。
「Waste Books」とは、イギリスでは「取引日記帳」という簿記用語ですが、彼の『Waste Books』はより幅広いトピックをカバーし、ウィットに富んだ短い個人的意見や引用などが書き溜められています。リヒテンベルクは警句の達人です(「われわれはしばしば、深い考えなしに古い法律や古い使用法、そして古い宗教に従うような行動をとり、世界におけるすべての邪悪をあがめることにつながってしまう」など)。
一方で、風変わりな観察眼でそのメモを興味深いものにもしています(「その者たちはくしゃみをし、ゼーゼー息を切らし、咳払いをし、おまけにドイツ語にはない2種類の音のようなものを発した」など)。『Waste Books』にはアイデアに富むメモがあふれていますが、すべてが良いアイデアだったわけでもありません。この『Waste Books』はきっと、長い目で見た時の、彼の職業人としての人生に役立ったのだろうと思います。
これはまさに、ジョーン・ディディオン氏を思い出させます。同氏は、古典として残るような傑作エッセイ『ノートに書き留めること(On Keeping a Notebook)』で有名です(エッセイ集『ベツレヘムに向け、身を屈めて』に収録されています)。
ディディオン氏は、出来事を記録するためでなく、感じたことの詳細を記録するためにメモをとり続けています(彼女はいわゆる日記を付けることにはまったく興味がありません)。
「ここでは、一連の優美な思索を構造的に結び付けるような出版に備えたノートの類について話しているのではありません」と彼女は書いています。「もっと私的で、使うには短すぎる心の糸くず、つくり手にしか意味のない、乱雑で風変わりな寄せ集めについてお話しているのです」
私のひらめき帳を見返してみると、メモの1つ1つが、その時に思っていた何かを思い出させてくれます。個々の断片はバラバラで、意味をなしません。ディディオン氏によれば、それは「私だけに意味のあるテキスト」なのです。
関連記事
- 新人諸君に告ぐ――まずはノートを買おう
アイデアが出ない――。そんな悩みを抱えているビジネスパーソンは少なくありません。1984年からアイデアをノートに付け始めて以来、現在26万件以上のアイデアノートに綴っているアイデアマラソン研究所の樋口健夫所長がビジネスに役立つアイデア発想法をお届けします。 - “書き味重視”で、どこまで割り切って作るか――シャープ「電子ノート」開発秘話
手書きメモに特化した異色のデジタルツールとして登場したシャープの電子ノート「WG-N10」には、賛否両論がある。開発陣に製品のコンセプトやターゲット、今後の進化の方向性について聞いた。 - ピカソ、ゴッホも愛した少し高貴なノート「モレスキン」の魅力
19世紀以来の歴史を誇る文具「モレスキン」。人によっては敷居の高さを感じるらしい。なぜ“何を書けばいいのか分からない”のか。文具好きのそんな悩みを解消する方法を一冊の書籍を参考に考えたい。
関連リンク
copyright (c) mediagene Inc. All rights reserved.