実際にこの出展を機に、OHBAのランドセルや鞄は、イタリアの高級百貨店やセレクトショップにも置かれ始めたほか、バーニズニューヨークなどの一流バイヤーが商談をもちかけてくるようになった。ファッション写真では、ジョルジオ・アルマーニとコーディネートもされた。
つまり、この2011年のピッティウォモ出展は、欧米のファッション関係者へ「日本のランドセル=おしゃれで高品質」という強烈な爪痕を残したのである。
そのイメージをさらに決定づけたのが翌年だ。実は大峽製鞄はピッティウォモだけではなく、ミラノで開催される国際バッグ・雑貨の見本市「ミペル・ザ・バッグショー」にも出展を開始しており、その2回目となる2012年3月、「スタイル・アンド・イノベーション」部門で入賞という快挙を果たしたのだ。
そこで特に注目を集めたのが、「大人ランドセル」だった。
東京都産学協働事業として、東京藝術大学の学生とともに「リューク」というランドセル型カジュアルバッグを共同開発。大峽製鞄の職人技にiPadを入れる機能などを持たせるという学生の自由な発想が合わさったこのユニークな製品は、一流ブランドのデザイナー、バイヤーたちの心を虜にした。
「エルメスのデザイナーや、セリーヌのマネージャーなどは自分で使うためにと買ってくれました。彼らはほとんど自転車通勤なので背負うこともできるし、肩にかけてもおしゃれなランドセルが相当気に入ったようです」
ハリウッドセレブが肩にかけた姿がパパラッチされる2年前、すでに欧州のファッションリーダーたちが、大人ランドセルを愛用していたという事実は、非常に興味深い。
リュークは日本ではおよそ12万円だが、欧州では為替の関係もあり、20万円ほどで販売されており、一般人においそれと手が出るものではない。そんな高級鞄の代わりに子供用ランドセルを、大人ランドセルとして楽しむスタイルが一般人の間に広まった可能性もあるのだ。
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