日本のものづくりには、「黙っていいモノさえつくっていれば、いつか目の肥えた人間がやってきて評価をしてくれる」という「受け身」の考えが根強い。実際、ピッティウォモやミペルには、日本からも多くのものづくり企業が出展しているが、「だいたい1回か2回出て終わってしまう」(大峽専務)という。苦労のわりに思っていた成果がないということなのだが、これはメディアやバイヤーからいい話をもちかけてくれるのを待っている「受け身」の姿勢によるところが大きい。
そんな「コミュニケーション下手」なところも、日本のものづくりを衰退させている元凶だと大峽専務は考えている。
「昔の職人は余計なことはしゃべらないという文化がありましたが、今はそれでは通用しません。私は常々社員たちに、製造力と販売促進力は車の両輪でバランスがとれないとまっすぐ走らないと言っています。ルイヴィトンやエルメスが日本でも利益をあげている中で、彼らにも負けないほど高い技術をもつ日本の鞄メーカーが淘汰されていく1つの要因はブランディングができていないからと考えます。今、日本のものづくりに必要なのは、『ブランドマネージャー』の育成だと思いますね」
ブランドマネージャーとは、そのブランドの価値をあげていくための目標を設定し、戦略を策定していく責任者で、その他にもさまざまな分野に目配せをしなければいけない。大峽専務がイタリアで見てきた名だたるラグジュアリーブランドでは、だいたい社長や副社長などが担っているという。ブランドビジネスでは必要不可欠な人材だが、日本ではほとんど普及していない。
「役所のパックアップでも、だいたい補助金を出して、販売所をつくったり、職人の育成所をつくったりというハード面が多いのですが、重要なのはソフト面。デザインや商品政策、プレス対策なども含めた総合的なブランディングのバックアップをやってもらったほうが効果的だと思う」
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