土肥: 手元にコロのパンフレットがあるのですが、A3サイズの用紙1枚しかありません。そこには「コロはアコーディオンのような蛇腹(じゃばら)のアームが伸縮して、肘がない」といったことが書かれているだけ。
ロボットの知識がない人からすれば、「えっ、たったそれだけ!?」と思うのではないでしょうか。ロボットというのは「最先端の技術が詰め込まれていて、ものすごく複雑なモノ」と思っている人が多いと思うのですが、コロは違う。実際に見せてもらいましたが、動きはものすごくシンプルで……。
尹: 「なにがスゴいの?」と思われたのではないでしょうか?
土肥: あ、いや、その……失礼ながらそう思いました。
尹: 産業用ロボットの現場で何が起きているのか。ほとんどのロボットが柵の中に設置されているんですよね。なぜか。以前は人の近くでロボットは動いていたのですが、ロボットの動きを把握できずに、ケガをしたり、死んだりする人が出てきたんですよね。不幸な出来事が何度も起きてしまったので「ロボットは危険だ」となって、柵の中に入れられるようになりました。ロボットの何が危ないかというと、「肘」なんですよね。
土肥: 肘?
尹: ここ数年、人型ロボットがたくさん登場しているので、店頭などで一度は触れたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、そうしたロボットも「肘は危ない」ということで、人間と同じような動きはしていなんですよね。動いても人がケガしないスピードですし、できるのはちょっと手を動かすことくらい。「何も持てないようにしている=何もできない」設計になっているんですよね。
土肥: そー言われてみると、確かに。
尹: 肘にはいくつかの危険があるのですが、そのひとつが形。尖がっているので、危ない。先日、歩きながらスマートフォンで通話をしている人とぶつかったんですよね。その人の肘が私の胸に当たって「痛いなあ。まあ、でも時間が経てば治るだろう」と思っていました。しかし、1週間経っても痛い。「これはおかしいなあ」と思って、病院で診察してもらったところ、肋骨が折れていることが分かりました。それほど肘というのは危ないんですよ。
土肥: プロレスにも「エルボーほにゃらら」という名前の技がたくさんありますからね。
尹: あと、肘って狭いスペースに向いていないんですよね。例えば、満員電車の中でスマートフォンを使おうとすると、肘が他人に当たりますよね。つまり、人の腕って一定のスペースがなければいけないんです。
ロボットの肘も先が尖っていて、狭いスペースでは使えない。それなのに人間の近くでびゅんびゅん動くので、本当に危険なんですよ。ライオンのように危険なモノなので、柵の中に入れられたんですよね。
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