土肥: 「肘は危ないよね」「ロボットは予測できない動きをするよね」といった課題を解決するために、コロは肘をなくしたわけですか?
尹: はい。従来型ロボットの多くは、大規模な生産ラインに導入されていました。でも、肘をなくして、手先を伸び縮むさせることができることによって、人と人の間で作業ができるようになりました。いわば“同僚”のような感覚で一緒に働くことができるのではないでしょうか。
土肥: ふむ、それにしても地味な同僚。やっ、失礼……。
尹: ご指摘のとおり、初めて見ると「これって何がスゴいの?」と思われるかもしれません。しかし、肘をなくして、手先を伸ばしたり縮めたりすることができるロボットはこれまでなかったんですよね。従来のロボットのようにガチャガチャ動かくなくても同じことができるんです。
土肥: そこに疑問があるんですよ。コロってものすごくシンプルじゃないですか。伸びて、縮む――ただそれだけ。これまでのロボット開発の歴史の中で、なぜコロのような単純なロボットを誰も開発してこなかったのでしょうか? 失礼な話、「オレでもこれくらいのモノ、簡単にできるよ」といった声もあったのではないでしょうか?
尹: 複雑にするって簡単なんですよ。技術を足していけばいいだけなので。「じゃあ、このセンサーを足そうか」「次は、関節を足そうか」といった感じで、ガチャガチャした複雑なロボットができるわけです。
逆に、複雑な動きをするロボットを簡単な動きにするのは難しいんですよね。これまで「より複雑に、より複雑に」つくってきたわけですから。
「なぜコロのようなロボットを誰も開発してこなかったのか」というご質問ですが、「手先を伸ばして縮む」という発想を持っている人はたくさんいました。でも、どうやってそれを実現すればいいのかという問題があったんですよね。私たちは10年ほど前から開発に携わってきましたが、開発時も「どうやったら伸び縮みさせることができるのか」といった点について悩みました。開発メンバーの中からは「消防署のはしご車のようなモノはどうか」といった案もありました。はしごがどんどん伸びるといった発想ですね。
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