そしてもう1つの役割だ。筆者はこれに最も感動した。この鋳造材はそのままサスペンションマウントになっており、フロントのダブルウィッシュボーンアームは上下とも、フレームの一部であるこの鋳造材に直接マウントされる。これはもうコロンブスの卵と言って良い。この構造を考え出したエンジニアに会ってみたい。
つまり、短いノーズでの衝撃吸収とサスペンションの高剛性で正確な位置決めを一発で解決した素晴らしいアイデアだ。リヤはキャビンから伸びるフレームが左右1本ずつの計2本だが、アッパー側については同様の構造が採られている。ロワー側は巨大なアルミ製中空サブフレームが車両の下面に取り付けられる。またリヤのダンパーマウントはルーフから下りてくる押し出し成形アルミ材で組まれたトラス構造によって支えられる。
見事としか言いようのないシャシー設計だ。高価な素材と工法をふんだんに使った贅沢なシャシーでもある。他のメーカーのエンジニアにしてみたら羨ましい限りだろう。そして恐らく日本のホンダのエンジニアにとっても……。NSXは開発も生産も米国拠点で行われている。いたずらにナショナリズムを振りかざすつもりはないが、それでも日本人としては一抹の寂しさを覚える。
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