「塩熱飴」がケタ違いに売れた秘密あの会社のこの商品(1/4 ページ)

» 2017年05月05日 08時15分 公開
[大澤裕司ITmedia]

あの会社のこの商品:

 企業は時間、コスト、労力をかけて商品を開発するが、ヒットし成功を収めることができるのはごく一部。しかも、ヒットしても注目されるのは、大手企業各社の主力事業・商品ではないだろうか。それ以外のヒット商品――(1)中堅・中小企業、ベンチャー企業が生み出したもの、(2)地域限定のもの、(3)大手企業でも主力事業・商品に隠れて目立たないものは、なかなか注目されにくく、「知る人ぞ知る」といった感が否めない。そこで本連載では、これら3つのヒット商品にスポットを当て、誕生の裏側から見えたヒットの理由と今後の事業展開などを明らかにしていきたい。


ミドリ安全の「塩熱飴」

 春まっただ中の4月18日に群馬県高崎市、4月30日に兵庫県豊岡市、鳥取県鳥取市、同倉吉市で最高気温が30度を突破し真夏日に。このままだと、今年の夏も猛暑になりそうだ。

 猛暑で心配になるのが、熱中症である。熱中症予防で活用したいのが、塩分補給を目的とした飴。最近では各社から塩味の飴が発売されているが、このきっかけをつくったといってもいいのが、ミドリ安全の「塩熱飴(えんねつあめ)」シリーズである。

 塩熱飴シリーズは2008年5月から発売。汗をかくことで失われるナトリウム、カリウム、マグネシウムといった電解質(塩分)を補給する。一粒につきコップ1杯分の水(100ミリリットル)と一緒に摂ることによって、失われた水分と電解質の両方が補える。現在、5種類をラインアップ。これまでにシリーズ累計1000万袋(1袋80グラムとして累計販売総量に換算)を販売してきた。

求められていた、手軽に持ち歩ける熱中症対策品

 ミドリ安全が2015年に行った熱中症の実態調査によると、36.0%が「自分自身が熱中症になったことがある」、57.8%が「自分自身もしくは家族・友人・同僚が熱中症になったことがある」と回答している。熱中症は一人ひとりが気をつけると同時に、企業も就業時間中に社員が倒れないように配慮すべきだといってもいい。

調査の結果、自分自身もしくは友人・家族・同僚が熱中症にかかった経験がある人は、約6割にものぼった

 しかし、ミドリ安全といえば、安全靴、ワーキングウェア、ヘルメット、ゴーグルや手袋などの安全衛生保護具のトップメーカー。そんな同社がなぜ、塩熱飴をつくったのか。実は、同社では長年にわたり、企業の熱中症対策を支援しており、塩熱飴の開発はその末にたどり着いたことであった。

 「私たちのお客さまの中心である製造業の工場では、かつては塩をなめたり梅干しを食べることで塩分を補給し、熱中症予防に努めていましたが、時代が進むにつれて、衛生面や健康管理面からこうした対処法がやや問題視されるようになりました。そこで当社は、2002年ころから大塚製薬のポカリスエットを仕入れ、販売を始めました。ただ、販売を始めると、屋外で働くお客さまにはポカリスエットは持ち歩くのが不便なことが分かりました。屋外で働く人にも使いやすい、手軽に持ち歩ける熱中症対策品のニーズが見えてきたのです」

 このように話すのは、取締役セフティ&ヘルス統括部 統括部長の安田一成氏。ポカリスエットよりも手軽に電解質と水分が補給できるものの提供を模索するようになったミドリ安全は、このとき、防災用品の1つとして取り扱っていた水に注目する。仕入れ先の1つである五洲薬品(富山県富山市)から海洋深層水を仕入れていたが、五洲薬品が塩も扱っていたことと、同社の社員が五洲薬品の工場を見学した際、ここなら手軽に持ち歩ける熱中症対策商品の共同開発が可能だと判断できたことから、同社は五洲薬品に塩熱飴の共同開発を提案した。

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